17話 農民7132.5人
梃入れゲリラ投稿再び
一日で1000PV超えたのでUPですよー
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時間にして10分にも満たなかっただろう。耳をよくすませばどたばたと忙しい音が聞こえてきていたが、扉を開けて戻ってきた会長はいたって平静そうだった。見習いたいレベルのアルカイックなスマイルのポーカーフェイスだな。ただ額の汗はぬぐってきたのだろうが再び滲みでているところをみると相当頑張ってくれたのだろう。
一応いっておくと、先ほどから彼の頭ばかり見てしまうのは決して【禿げ】という実績を達成するギリギリで踏みとどまっている生え際が気になってるからではなく、彼の温和そうな瞳に騙されないようにするためだぞ。デブーダうそつかない。
「大変長らくお待たせ致して誠に申し訳ございません。只今ご用意致しましたので、ご覧いただきたく存じます」
「数は?」
「誠に勝手ながら殿下の御意思を拝察申し上げ、21にまで絞り込ませて頂きました」
ふーん、21ねぇ。思ったよりは多いかな。いや、この短時間でそれだけ絞り込んだのか。さて彼がどう俺の意思を汲み取ったのか拝見させてもらおうじゃないか。
「では7人ずつ呼び寄せて、その商品について述べよ」
「畏まりました」
俺の言葉を受けて、会長はちゃんと俺の願い通りに一芸や特筆すべき物を持った”商品”を、深夜のテレビショッピングばりの様相で紹介してくれた。
アザゼル、リリス、クレアラに並ぶような美女は僅か数名。他はクラスに三番目~五番目くらいに可愛くてなんだかんだ言いつつも実はクラスで一番人気が高そうな女性達だった。それでも能力重視なんだからこの店の品ぞろえは素直に凄いと思う。
さて、まるで殉教者のような表情で並べられた商品は、なるほど、会長が厳選しただけある。分野に関してかぶりがなく、一芸や特筆すべき点を兼ね備えた美女、美少女 (ここ重要。たぶん愛玩用であることも理解しているのだろう)が用意されていた。
その中で俺が選んだのは6人。リリスの言っていたように7人を想定していたが、色々と絞り込んだ結果6人に落ち着いた。
イカれたメンバー紹介するぜ!
まず一人目が、獣人種・黒猫人族の美少女バステア!猫耳に尻尾のある如何にもファンタジー種族だが、この男好きのする健康的な身体つきの少女の特徴は二つ。
一つ目が、尻尾が二又であること。これはかなり珍しいことで、非常に“レア”なのだとか。“コレクター”にはとても人気で、バステアの身体つきと相まってオークションに出せば相当の値段がつく商品らしい。
確かに、既に完成された美しさを誇る彼女は二又の尻尾と相まってミステリアスな魅力にあふれていた。ただしこの少女、捕まえられるときに相当な抵抗をしたらしく胸元の少し上から顎にかけて大きな切り傷と火傷痕があった。そのせいで本来は少しランク落ちの訳あり商品扱いで俺に見せるつもりの商品ではなかったらしい。
ただ、俺はそんなこと欠片も気にしないし、逆に二又というだけでは流石に選ばない。決め手となったのは二つ目の特徴である、彼女の“固有スキル”ともいえるスキル《衝撃操作》だ。
聞けば武術にも相当優れており、彼女は用心棒みたいなことをしていたらしい。特に合気道のような武芸を極めており、実演してもらったら2mある明らかに気質じゃない商会の用心棒を軽々とぶん投げていた。そしてそこに彼女の固有スキル《衝撃操作》が組み合わさることで、受けた衝撃を無効化するどころか自分の力を加算してカウンターできる、という面白い能力を持っていた。
おまけに上級魔法である雷魔法まで使えるので遠距離も問題ないとの事。攻守遠近隙が無い。
“固有スキル”の時点でがっつり心掴まれたし、用心棒を軽々ぶん投げた瞬間に購入が決定した実力派だ。これにて近接用の俺の完全な手駒としての護衛を手に入れることができた。今の俺についてる護衛は第二皇后の息のかかった者ばかりだったが、自意識過剰なことはわかっているが前々から監視されてるようで気にくわなかった。護衛を手に入れたことで今後は張り付き具合をさげることができるので、これで一息つけるというわけだ。
遠距離最大攻撃力を持つ雷魔法を所持しているのも俺の中では非常に評価点が高い。錬金術で現在研究中の電気との互換性があるのか非常に気になるのだ。LDOでも雷や光、闇などの特殊な魔法は条件を満たさないと習得できなかったから雷魔法の使い手は非常に貴重なのだ。
お次は普通の人種の美女、ジエラ。見た目は有能美人秘書。スーツとか着せたら抜群に似合う感じだ。俺の感じたその印象と違わず、元は国境付近の大きな商会の娘の一人で筆頭跡取り“候補”。しかし取引先に向かう途中、盗賊に“運悪く”捕まり奴隷落ちしたとのこと。その真相は、おそらく他の跡取り候補とやらに依頼され盗賊に拉致された、といったところだろう。
メガネの似合うクールビューティーで身長も高いのでモデルとしても十分通用しそうだ。国境付近の大商会の跡取り候補に若くして選出されるだけあってそのスペックも折り紙付き。四則演算は当たり前、数か国語の読み書き会話を可能とし、物流などに関する知識にも非常に明るい。
そして俺が彼女に目を付けた最大のポイントが、彼女の固有スキルである《完全記憶》だ。その名の通り認識した事象を完全に記憶するスキルで、そのおかげで彼女の知識は相当なものだとか。
いろいろと使い道が多そうなので彼女も買うことにした。
お次はその存在自体が珍しい獣人種・狐人族の美女フォクセル。聞けば彼女、第一級の犯罪者らしい。厳密には、“義賊”だったらしいが手を出してはいけないタイプの大貴族に手を出し年単位で粘着されて遂に捕らえられたとのこと。
彼女のもつ固有スキル:変幻模倣はまさに盗賊ご用達のスキル。彼女の認識した人物に自在に変身できるチートスキルだ。そのうえ、相手の使用する技まで彼女の身体能力が許す限り模倣できてしまう。
魔法に関しても、火、水、土、風の四属性に加えて上位属性である光・闇も使える超級スペック。
ただし非常にずる賢く、ルールの穴を突くことがとても得意なので扱いはかなり注意が必要なのだとか。実は3度買い取られたもののどの買い手からも直ぐに返品された経緯がある札付きらしい。
こんなの考えるまでもなく買いである。間違っても彼女の童顔な顔立ちと非常に男好きのする滅茶苦茶グラマラスなボディに釣られたとかそんなことは決っしてないぞ。デブーダうそつかない。
お次はエルフの美少女バイアルフ。周りが美人系の中でこの子だけは背が小さくかわいらしい顔立ちで、小動物染みた可愛さがある。そんな彼女だが、実は植物学・薬学に於けるプロフェッショナルらしい。既に高額な値段がついているのにも関わらず買い手がついているのだとか。買い手がいるのに商品にしていいのか?と聞いてみたが、第三皇子である俺相手ならばなんら問題ないらしい。
詳しく聞けば、この手の商売は後ろ暗いことが多いが故に逆に信用が大切で、一括即金以外の支払いを原則認めていないらしい。それでもキープしたい場合は、事前に契約を行い契約日数分キープ料金を支払う。キープ中は商品として陳列はされない。しかし契約者より上位の者のオーダーがあれば、キープ制度は無効化されるらしい。
そしてこの時のキープ料金は店によって扱いがことなるみたいだが、ウィルエント商会ではキープ制度が無効化されることがあればキープ料金は全て返金するらしい。ブラックな商品を取り扱ってるのに妙にクリーンで各種保証がしっかりしている所がウィルエント商会の人気の秘密なのだろう。
ただ会長曰く、キープ制度が無効化される事態がそもそもかなり稀なのだとか。彼自身長く商会に努めているにも関わらずキープ制度の無効化が適応されたのも見るのはたったの2度。俺で3度目らしい。
お次は獣人種・蛇人族の東南アジア風の褐色美女ヒュギエアス。異国の出身で考古学に関して深い知見がある。蛇人族自体もかなりレアな種族で商品になるのは相当珍しいとのこと。異国出身でも難解な物言いでなければ理解できるし、片言ながら話すこともできるそうだ。
そんな彼女なのだが、固有スキルとまではいかないがレアな種族的スキルである”熱源感知”と”猛毒生成”を所有している。
ただ、これだけでは俺の琴線に響かなかった。彼女が俺の目に留まったのは彼女が奴隷落ちした経緯がかなりユニークだったからだ。
どうも、病に苦しむ者達に対し“腹を切り開いたり”だの“毒を用いて治療しようとする”など常軌を逸した行動をとったらしい。それが元で宗教関係者(この世界では宗教が病院の役割を担っている)と激しいトラブルになり奴隷落ちしたのだとか。トラブル起こすのはまだしもその結果が奴隷落ちというあたり宗教も腐敗していることを暗示している話でもあるのだが、「知っている人」からすれば彼女の行動が何を意図した者か理解できる。できてしまう。
おそらく彼女には相当の医療技術や医療関係の先進的知識があるのだろう。ただし進みすぎた技術が奇術に見えるように、彼女の振る舞いは恐ろしき悪行と誤解されたのだ。
脂肪の物理的切除計画を実はあきらめてない俺としては、ぜひとも有識者として知恵を借りたいし色々と聞いてみたいこともあった。物臭な俺にはやはりダイエット生活は面倒極まりないのだ。薬学のプロフェッショナルであるバイアルフもいることだし毒方面の技術革新が起こせるかもしれない。
色々な分野で切り札はあって悪いことはないので彼女も買いだ。
さてさて、最後の一人は俺にとって今までの5人が霞むほどの超特大インパクトを与えてくれた人物だ。
ドワーフとハーフエルフのハーフ、の時点でかなり特殊だが(見た目は普通の人族)、その名をダヴィンティアというとのこと。
どこかで聞いたことある?
そう、俺が前から会ってみたいと思っていた錬金術の天才だ。てっきり名前からして男だと思い込んでいたが女性だったらしい。しかも幸薄そうな感じだがかなりの洋風美人なうえに大変立派な胸部装甲を装備していた。
見た目は20才手前ぐらいだが、長命種であるエルフとドワーフの両方の血を引いているのでダヴィンティアも見た目通りの年齢ではないとはいえこれにはとても驚いた。
奴隷落ちした経緯をはっきりしなかったが、どうやら同門に嵌められたらしい。
商会の跡取り候補だったジエラといいダヴィンティアといい、どうも有能すぎて身内に裏切られるケースが珍しくないな。
奴隷たちは仮契約により勝手に行動したり話したりできないようだが、ダヴィンティアに対して彼女が執筆したと思われる論文のタイトルをいくつか挙げてみたら大きく目を見開いていたので確実にビンゴだ。
棚からぼた餅だな。これは大変な儲けものだった。
以上、イかれたメンバーの紹介が終わったところで気になるお値段だが…………
バステア:2382000マジェム
ジエラ:1318000マジェム
フォクセル:4732000マジェム
バイアルフ:1859000マジェム
ヒュギエアス:2715000マジェム
ダヴィンティア:1259000マジェム
合計:1426万5000マジェム
(マジェムは魔石を基本とした共通通貨。LDOでも使われていた。最近学んだが、農民の平均年収が約1800~2200マジェムとされているようだ)
農民が汗水流して一生懸命働き得られた年収を2000マジェムと設定すると、1426万5000マジェム。実に農民7132.5人分の年間分の働きになる。7000人、と聞いてもピンとくる人は少ないだろう。7000人とは大体、小学校20校~25校分の全生徒数、日本武道館収容数の50%の人数だ。大学の授業の統計云々でその手の事を調べた記憶がある。
LDOでは最も安価な拠点でも建築するとなると確か50万マジェム位は軽く吹き飛んだ記憶があるが、それを考慮しても1426万5000マジェムはデカい。
気になる値段の内訳だが…………評価項目は、美醜、技能、知識、種族。女性の場合は処女であるかも重要とのこと。今回の場合、彼女らは全員処女で更には珍しい種族、固有スキル、あるいは特殊な知識を持っている。要するにレアリティが重要なのだが、そこは6人の内1番安いダヴィンティアと最も高いフォクセルの値段を比較するとよくわかる。
種族的には珍しい混血ではあるが見た目はただの人族のダヴィンティアは125万9000マジェム。十分これでも高いのだが、ナイスバディでレアな狐人族、4種の基本魔法を使い其のうえ上級の光と闇の両方を使用可能。更に更に応用範囲が極めて広く影武者としては最強な超絶強力な固有スキル持ち。他にも個人的な盗賊としての技能や知識を持っているフォクセルとなると473万2000マジェムなどという法外な値段が付くわけだ。
ダヴィンティアは個人的にはもっと値段が高くてもいい気がするが、特筆するべき魔法やスキルを所持しないこと、そして“公的に”その知恵が認識されていないのでこの値段らしい。どうやら反応を見るに会長も彼女が錬金術などの分野に関する天才であることを認識していなかった。
では逆に高すぎでは?と思うが、血筋だけなく実は彼女の“画家”としてのブランドが相当の物らしい。ダヴィンティアが公的に発表した作品は僅か二点。ただその両方共が宗教関係者にとんでもない値段で売れたとのこと。其方のほうに注目がいき作者であるダヴィンティアの名前こそまだ大きく売れていないが、会長から見てもその評価は相当の物。
この様な取引では「公的にその能力が保障されているか」が非常に重要なのだが、まだ十分に保障されていなくともそれを見込んでの100万ジェム越えで、正直会長もその真価を図りかねているらしい。むしろ138万8000マジェムは相当に希望的観測の元につけられた値段なのだろう。
閑話休題。
しかし、いくら甘やかされたクソ豚ぼっちゃんも即金で1426万マジェムも用意できる訳もない。7人目を削らざるを得なかったのはこれのせいだ。加えて“帝国最高”のブランドを少し舐めていたというのもある。
ただ、こんな上物を万が一にでも逃す気はない。
相手は犯罪組織の首領。いくら資金を削ってやっても俺には正義という大義名分があるのだから心は1μたりとも痛まない!つまり一切の手加減をする必要もない!自重は全てゴミ箱に捨てる!
さあ久しぶりの言いくるめ(98)の出番だぞ!いざ嗤えダイスの女神!!!
深夜のテレビショッピングの胡散臭いまでの値引きを鼻で笑う値引きを今ここに実現してみせよう!
実績:イカれたメンバーを紹介するぜ!
イカれてたのは値段のほうだったぜ!ガチャは当たるまでまわせば100%なんだぜ!(廃課金)
裏実績:覚えてる?忘れてる?
ダヴィンティアさん、5話と9話に一文だけ登場してます。