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15話 現実は非常である

詫び更新は一話だけとは言ってません



 全防御魔法を解除するないなやヒュオォン、と凡そ日常生活では聞かない風を切る音、首にゴムパッチンされたかのような鋭すぎる風圧。


 だが、死んではいない。身体の感覚がちゃんとある。


 俺が恐る恐る目を開けると、俺の首筋にククリナイフを添えたアザゼルの顔がドアップで視界に映り込んだ。近い、近いです。


 わあ、人形みたい…………あ、いい匂いする。香水由来じゃない匂いがちゃんとする。てか早く離れて。別種のドキドキがダブルで来てるからはよ離れろ。

 俺は念じるようにアザゼルの顔を見返すと、アザゼルはその意を汲んだのかスッと離れてリリスのところまで後退した。そのリリスは無表情でもなんでもなく、女性が浮かべちゃダメな感じの、ニタァとオノマトペをつけたくなる不気味な笑みを浮かべていた。



「リリス…………お前、試したな?」


 後退したアザゼルの横で佇むリリスを見て俺が溜息を吐くと、リリスはフッと笑う。


「言葉がいかに信用ならないものかよく知っていますので、デブーダ様の言葉を鵜呑みにするほどおめでたい頭では無いんです」


 その理論だともしかするとクレアラもおめでたい頭の人物になるが…………人生悲観度じゃなかなかの数値を叩き出しそうなリリスが言うと凄く説得力ある言葉だな。


「ふむ、それで?」


「言い訳してもよろしいですか?」


「怒るかどうかはその言い訳次第だ」


 俺が疲れた感じで言うと、リリスはクスッと笑った。実際MPもかなり削られたし精神的な疲労が激しく冷や汗びっちょりですがね!もう湯あみも終わってるのに!チクショウめ!


「ではお言葉に甘えて。まず前提として、私はずっと今のデブーダ様は魔族が化けた物だと考えていました」


「…………続けて」


 まあこれは想定内だ。これが怖くて俺はこの力を大々的に使用するのを恐れていたんだからな。


「はい。まず不自然だったのが、演技をしていたと言うより本当に別人のようなデブーダ様の状態です。いくら演技が上手いとはいえ、私が貴方と婚約者として正式に引き合わされた5才の時から貴方の評判は既に酷いものでした。もしデブーダ様の言葉を信じるならば、5歳以前からデブーダ様は演技をしていたと言うことになります。ですが、いくら天才でもそんな幼少期より全てを自制し演技し切ることなどできるのでしょうか?」


「成る程…………」


 ま、そこら辺はどうしようもないよね。途中で改心したことにすれば良いとか軽く考えてたけど、そりゃそうだよな。ちょっと見切り発車すぎたっぽい。


「次に気になったのは隔絶した魔法技術です。師がいるいないと言う問題では片付けられない高度な魔法を使う貴方は非常に不自然でした。

ですが、この段階ではまだ違和感程度でした。それが疑念に変化したのは、貴方が幻影魔法について問うた時です」


「ん?何か変なことでも言ったか?」


 心当たりがなさすぎてほぼ素で返したが、リリスは特に不自然さは感じなかったようでリリスは首を横に振るだけだった。


「幻影魔法はほぼ固有魔法に等しい非常に遣い手の少ない魔法です。加えて精神に影響を及ぼす禁忌に近い魔法故に体系的に解析されたことすらない魔法です。ですがデブーダ様はまるで幻影魔法がどのようなものか凡そ認識しているような感じで質問をしました。鑑定や分析で幻影魔法が使用されたことは見抜くことはできますが、使用者が何をイメージして使っているか不明に近い魔法において貴方はやけに具体的な質問をした。この時点で私の違和感は疑念に変化しました。

デブーダ様がなさった質問は、本来幻影魔法の使い手でもない限り具体的に問うことやイメージすることも困難なはずです。ここで私はデブーダ様が幻影魔法によって誰かが化けた姿ではないかと考え始めました。その1番の候補が魔族でした。

しかしそう考えると様々なことが辻褄が合います。ここ最近メイドすら部屋に入れずに籠っているのは、幻影魔法を解いて魔力回復に専念する為。卓越した魔法技術、奇妙な博識度合い、急激な性格の改変、その全てが貴方を魔族だと思うことで説明できたのです」


「…………つ、続けて」


うわあああああああああああ、俺のせいかーーーーー!好奇心で変なこと聞いた俺がバカだった!そうだよね、俺も今静かに聞いてたけど怪しすぎるわ。てか自分で納得しちゃった。俺って魔族かな、とほんの一瞬でも真面目に考えた俺がバカすぎてツラい。リリスの言葉には整合性がきちんととれてるだけに責められないぞ。


「私は貴方をほぼほぼ魔族と推定しました。しかしそう考えた時、何故デブーダに化けたのか私にはわかりませんでした。何を企むにせよデブーダに化けるメリットを見出せなかったのです。もし私が化けるなら、吹けば飛ぶような豚ではなく、もっと影響力の高い人物に化けます。そこで本当に貴方はデブーダである可能性も無くはないと思いました」


ちょっとまて、いまサラッと凄い罵詈雑言をはかなかったかい君?


「もし貴方が魔族だったら、アザゼルには魔族と推定できた時点で攻撃を許可してありました。もし貴方がデブーダに化けた魔族ならば、既に元のデブーダは死んでいるはず。その時は、私は復讐を遂げられないことが確定します。故に生きる意味も以前同様消えるのみ。ならば死んでもいいと思い、先の作戦を立てました。

 もし貴方が魔族であり、それを看破されたと気づいたなら、アザゼルの猛攻を受けた時点で無防備になっていた私に攻撃魔法を放つか、あるいは人質にすると考えていました。 それは貴方の会話から凡そ貴方の思考回路を予測した上での予想です。効率主義な貴方ならば、護衛を止めるにはきっと護衛対象を人質に取るはず、そう考えました」


 そうだな、俺がもし魔人ならきっとそうする。その考えも間違っちゃあいない。


「しかし、貴方は一度として私に攻撃を仕掛けることはなかった。ここでプラン2に移り、アザゼルは攻撃にほぼ全力を尽くし、極限まで追い詰めてもらいました。ええ、切羽詰まった時に本性は出るものです。私は貴方が本物のデブーダでも魔族の化けたデブーダでも信用する気は微塵もありませんでした。だからこそ、私は同時に2つのことを試しました」


「続けて」


 やはり大胆不敵だな。危うく掌の上で転がされるところだった。17の小娘相手だとはやはり思えない。取引先でもかなり頭の切れる役員を相手に話してる気分だ。


「私はプラン2に移った時、もし貴方が攻撃をした瞬間、私を連れて空間魔法で逃走。そこで全てをバラす気でした。貴方が魔族ならばアザゼルの猛攻を止めるためにいつかは攻撃に転じると思っていましたし、貴方が私を救う振りして“また”使い潰すおつもりなら、アザゼルを止めるために殺さないようにとはいえ私に攻撃をしたでしょう。ええ、私を道具として使うと思ったのです。

しかし貴方が宣言通りのことをしきる頭脳を持ち、私を見下さず、私に敵対意思が一切無いならば、このプラン2の不自然さに気付き、私のメッセージを理解すると考えました。

お気づきだと思いますが、私がアザゼルに命じたプラン2では貴方が一切の防御を時無防備になる…………私のメッセージを正しく受け取る、つまり私を信じた時に、攻撃の停止をするようになっていました。一歩間違えば貴方が死ぬ事態であっても、冷静に私を信じることができるか、試させていただきました」


 はぁぁぁぁ、この子もなかなか人間不信が極まってるな。ま、こうでもしなければリリスは自分を納得させることができないのだろう。

 ここは怒るべきところなのかどうかはわからないが、リリスの理屈に納得した時点で俺に怒りなんて感情はなかった。俺にも過失は100%無いとは言いがたいしな。


「もしこれで貴方が魔族で、完璧なまでの演技をしているなら私は完敗です。その時はどの道、私は「其、否」」


 俺がなんとも言えずリリスを眺めていると、自嘲するような口調で言葉を続けるリリス。それを途中でアザゼルが食い気味で否定した。その行動はリリスにとっても意外だったのか、リリスは少し驚いたような顔でアザゼルを見つめる。


「個、魔族、戦闘、経験。魔族、攻撃的、危険、種族。然し、此、個、攻撃、否」


「そうですか?ベッドの下から出た鎖は明らかに攻撃的でしたが」


 流石リリス、アザゼルの言いたいことがちゃんとわかったのか。まあ大方「私は魔族との戦闘経験がある。魔族は攻撃的で危険な種族です。しかし、この人は私に攻撃してこなかった」といったところだろう。それ逆に喋りずらそうなんだが、どんな思考回路なんだ?


「否、魔法、攻撃。攻撃、意思、皆無。…………あれだけの魔法使える。攻撃魔法使えない、ありえない。然し、防衛のみ。此、防御魔法、解。瞬間、恐怖、体、硬直。其、素人。戦闘慣れしている魔族、城、潜入可能な魔族、恐怖、体が硬直、目、瞑る、有り得ない」


 いや、ある程度は喋れるのかよ。地味にびっくりしたわ。


「アザゼル、貴方、十数年一緒に居てそんな喋ってるところ初めて見たわ」


「返答、十数年共にし正式に其が個に命令を下すの、初めてだった」


 …………これで喋ったことになるのかよ。

 なんつー歪んだ主従だろうかとは思うが、そういえば俺もゲームの時のアザゼルを思い出してみてもこんなに喋るところは初めて見た。ヤバいな、公式でも背景が明かされてないキャラは半端に知ってる分扱いづらい。


「とにかく、我は魔族ではないと信用された、ということで良いのか?」


「どうでしょう、今の限りではほぼ状況証拠でしか立証していません。まだ可能性が0と言い切るのは不可能です」


「だったら、どうする?我を吊るし上げるか?」


 俺が恐れていたこと、それは別人として誤認されることだった。いや実際のところ中の人は別人だ。だが万が一その誤認がおかしな方向に転がったら、魔法を加減もせずに見せつけ始めたら大きな誤解をされるのでは無いか。特に俺は嫌われ者のクソ豚公爵だ。そして俺が好き勝手出来ているのはそのバッグに大国と強固に繋がっている第二皇后がいるから。万が一誤解されて彼女が敵に回れば俺はあっさり詰む。俺が主人公の旅についていくことを断念するには十分すぎる理由だった。


「いえ、そのような無益なことはしません。それでは賭け自体が成立しませんし!ですが、デブーダ様にはいい加減話していただきたいのです。貴方は一体何を隠していらっしゃるのですか?」


「隠す…………?」


 待て待て、何故そんな的確な言葉が出てくるんだ?俺そんなに大きなミスしているか?


「はい、貴方のここ最近の行動と情動は奇妙なのです。貴方は私に謝罪しましたが、そこに悪気や罪の意識は感じられませんでした。ですが、私を救おうとする気は本気で持ち合わせている、ように思える。何処か他人事の様に振舞ったり接するのに、ところどころで妙に同情的。貴方がデブーダに成り代わった何かなら、私を救う必要はない。なのに私を救おうと手札を切っている。ずっとチグハグなんですよ、デブーダ様は」


「待て、悪気や罪の意識を感じられない、というのは些か言い掛かりではないのか?」


 リリスは感情論だけで語る女性ではない、むしろ遠い存在だと思っていたのだが、これはどういうことだ?


「デブーダ様…………私は“貴方のお陰”で相手の仕草や声音からある程度裏の感情に敏感になってしまっているのです。余程秀でていない限り、私は相手の情動を看破するのはスキルや魔法に頼らずとも自信があります。…………ほら、今もです。“貴方のお陰”という嫌味に対して他人事のような気持ちと同時に同情を感じるのです。まるでデブーダの罪が“自分”とは別の物として傍観しているような感情が伝わってきます」


 え、怖い。何この子、怖い。サイコメトラーなの?サトラレなの?

 この展開って普通、もっと段階を踏んで問い詰められることじゃ無いの?転生や転移もので疑問を抱かれるタイミング早すぎじゃない?リリスが有能すぎて怖いんだけど!

 一体これはどう切り返すのが正解なんだ?


❶未来のハンサムボーイであるデブーダは突如うまい言い訳を思いつく


❷仲間がきて助けてくれる


❸どうしようもない。正直にすべて白状して頭のおかしい人と思われる 現実は非常である


TU☆NN☆DA!


 てかリリスの指摘があまりに的確すぎてビックリしたのはまだしも、そこで黙ったのが痛手だった。こういう時は直ぐに切り返していけば、言葉で思考を飽和させて論点をすり替えてイーブンに持ち込めた。


 俺は他人に対して凄く誇れるものはほとんどない。毎日緩やかな坂を約9kmチャリで通学していたおかげで妙にジャンプ力はあったが、それ以外は並みの身体能力。勉強だってそこそこの大学をでたが当然上には上がいる。ゲームだってどのジャンルも並みの腕前だ。おそらく人生で最もやりこんだLDOでも、No1ということはないだろう。


 そんな中で、自他共に認められるのは口論と詐術、コミュニケーション能力の三点だった。特に口喧嘩だけは運が良かったのか物心ついてから負けた記憶がない。言いくるめ(98)は伊達ではないのだ。


 そんな俺でも、ここまで綺麗に看破されると言葉も出ない。たかが17才の少女に微かな身振り手振りでマインドリーディングされる経験なんて初めてだった。いや、同様のことはこちらも意識的にせよ無意識にせよしている。ただリリスの場合

幻想魔法あたりを活用してる可能性はあるな。

 リリスが俺の話を鵜呑みにしないのは予測の範囲内。粗の多いでっち上げ話に対する指摘も予測の範囲内だ。むしろそこに意識を集中させたくて自分でも無理があるとわかる説明をしたのだ。

 これはちょっとした話術やスピーチのテクだが、物事を説明する時に完璧を目指す必要はない。あえてわかりやすい穴を開けておくのだ。そうなると相手の関心の動きも予測しやすく、こちらも解答を準備しておける。


 ただ、今回の問題点は予想以上の指摘の速さとリリスのポテンシャルを見誤っていたことだ。俺としてはもっと色々品定めした上で指摘されることだと思っていたが、リリスは自分のマインドリーディング技術を信じ的確な指摘をしてきた。


 本当だったらでっち上げ話を細くするためのフリを少しずつしてホラ話の信憑性を上げようとしていたのにやってくれる。




 だが、ここで黙ってやられるようなら自信を持って詐術とコミュニケーション能力を得意な物としてのあげたりしない。俺個人に限って言えば更に高度なマインドリーディングしてくる両親相手にこれ以上の修羅場は何度も経験している。むしろ詐術の本番は予定外が発生した時。不測の事態が起きた時どれほど完璧に修正できるか、欺く能力の高さはここで決まる。



 俺はリリス個人だけでなくそれ以外の情報も握っている情報チート持ち。相手の手札は9割読めている。だが9割読めている先入観から残り1割が鬼門になる。

 リリスは“俺”に対し様々な評価が混在している中、持ち前のポテンシャルで俺の手札の1割に満たない物のかなり重要なカードを的確に看破している。

 この時点で地の力はリリスが圧倒的に上だ。元々の精神力、知能、知識においてリリスに勝るところがない。コイツは紛う事なき天才だ。


 だがそれだけ上手に心理学ロールが振れるなら、高度なマインドリーディングが可能なら、逆にやりようがある。彼女の高いマインドリーディング技術を逆手にとって仕舞えばいい。

 天才に凡人が勝る、そんなのは御伽噺の話だ。彼らはその悉くを超えているからこそ天才なのだ。

 天才だって努力はしてる、そんなチープな話ではない。彼女は逆境の中、宮廷で生き残る為に自分の才能を誰とも言われず覚醒させたのだ。


 俺のような凡人が挑んでもしょうがない。だから俺は、勝負自体を変えてしまう。将棋のプロには駒崩しを挑み、サッカーのプロにはハンドボールで挑む。まず勝負のジャンル自体を変えればいい。

 天の才があるなら、その才を生かす場ごと破壊する。


 今の状況は、俺が何を隠しているか、がテーマ。

 この質問に対し何を答えても現状悪手だ。ならばテーマ自体のすり替えをする。


僅かな手足の動きからも読まれるなら、前のめりで手を組めばいい。


「フッ、流石はリリス。やはり潰えるには惜しい才媛よな。リリス、主の指摘は、俺が魔族でない、という点を除き躍起になって否定はしない」


「…………認めるのですか?」


「認めるのではない。少なくと否定はしないだけだ。そして今の謎については、全てが終わった時に僻地に引っ込んだらゆっくり語らせてもらうつもりだった。ほれ、今の我は嘘をついているかわかるのなら本意であるとわかるであろう?」


 因みにこれは本当だ。もし指摘がなく僻地に引っ込んだらリリスとかには取り敢えず整合性のとれる説明する気だった。詐術は真実7割、嘘2割、関係ない話1割で形作る物だ。ことリリスに限ってはある程度の看破能力があるから、今の言葉が真実であることがわかってしまうはず。


「それは卑怯と言うものではありませんか?賭けの終点はクーデター終結の直近です。僻地に引っ込んだらと言う前提では私は真相を聞けず仕舞いです。なのに協力はしろ、というのは些か不義に当たるのではありませんか?」


「では、クーデター決行前夜に語っても構わないぞ」


 俺がそういうと、リリスは更に追及してくる。


「なぜ、今は教えていただけないのですか?」


「単純な話、信じがたく、そしてお前を混乱させるだけだからな。ああ、私の目的がクーデターによる追放ということは本当だぞ」


 真実でも、嘘でもない。ただ事実を俺は述べているだけだ。これではお得意のマインドリーディングも役に立つまい。

 リリスは俺が完全に立て直したことに気づき、ほんの微かに悔しそうな表情、になった気がした。

 そこにどういうわけかアザゼルがいきなり口をはさむ。


「二度、同様、命令、拒否。此、想定以上、強者。汝、危険、事実。推測、此、個と汝、殺害可能だった」


「あなたが、負ける?」


 すべてが信じられなく無価値に思っていたように見えたリリスもアザゼルの実力に関しては相当な信頼を置いていたらしい。俺でもわかるくらいにリリスははっきりと驚いていた。

 俺も相当ギリギリだったので買いかぶりだと叫びたいのだが、アザゼルは本当に何を考えている?


「偽り、述べる、否。事実。個、少々、本気、戦闘。此、余力、在り」


 いや、結構ギリギリだったぞ。買いかぶるな。第一に息の一つも切らしてねえだろおめぇ。アザゼルのキャラが読めん!


「アザゼル、貴方のそれ、喋れないのではなく、単純に面倒くさがってるだけでしょう。普通に話して。これは命令よ」


「御意。個、汝を護衛しながらでは絶対に此れには勝てない。戦闘は素人。ちぐはぐ。とても不思議。…………魔王はうすらトンカチ禿げの腐れ外道の頭くるくるパー」


普通に喋りだしたかと思ったら、急なアザゼルの謎の言葉にポカーンとしてしまい思わずリリスと顔を見合わせてしまう。なんかバグったキャラみたいだぞ。


「…………?やはり此れ、魔族、違う」


なんだこのマイペースさ。普通に喋らせたら余計に意味が分からなくなった。


「待ちなさい。一人で納得せず説明をして」


「命令?」


「命令よ」


アザゼル、やばいレベルの不思議ちゃんだな。冷徹な殺し屋かと思いきや、なんか意外だ。二次元をリアルにするとこんなにも…………まあ嫌いじゃないよ。


「魔王、魔族を強化する力、もってる。魔王を強く信奉、魔族強くなる。強い魔族、狂信的魔王崇拝。魔王への侮辱、厳禁」


「なるほど、故にあの言葉というわけか」


 俺が思わずそう呟くと、アザゼルは微かに頷く。


「魔族、少ない。けど滅びてない。其、魔王を崇拝するだけで魔族が簡単に強くなるから。此、戦闘経験皆無。然し、強者。魔王崇拝の強い疑い。故、試した」


 うん、そうそう。そんな設定があったな。魔族は強い奴ほど魔王を強く崇拝しているんだ。それは戒律ともいえる。故に、その侮辱には絶対に反抗しなければならない。それができなくば大きく力を損なうからな。この誓約のおかげで魔族に社会を支配されずに済んでいるので、アザゼルの試し方は極めてシンプルながら有効だ。

 フレーバーテキストの話だったから完全に忘れてた。言われて初めて思い出したわ。


「うむ、罵詈雑言を吐けというならかまないぞ。魔王のクソボケアホンダラドチクショウ。ほれ、どうだ?」


そうだ、これでいいんだ。うっかりしてたわ。


「いえ、魔族の疑いがなくなるかもしれないからと言って、貴方が“デブーダ”であるかは別問題です」


やけに食い下がるなぁオイ。




 俺たちはそこから三時間、知らぬ間に途中でアザゼルが立ったまま仮眠を取り始めたのもそっちのけで舌戦を繰り広げ、なんとか、なんとか、リリスを丸め込むことに成功したのだった。


 言いくるめ(98)がこうも苦戦するとは。リリスの人物データには「しつこい」というワードを追加しておかなければ。

実績:最大のガバ発覚

余計な事言わなきゃここまで疑われることもなかったぞ!まさしく好奇心は猫をも殺すを地でいったね!どんまい!


実績:リリス&アザゼル撃退

この二人が本気でタッグを組むとかなり強力だぞ。死亡フラグ折っておいてよかったね。実際にこの二人とLDOで戦闘しようとすると (´・ω・`)くそげ  って液晶の前でらん豚化しかねないよ




























裏実績:1zeptoの信頼fromリリス

リリスから本当の意味での信頼を十垓(10の二十一乗)分の一程度勝ち取った、かもしれない。彼女はもう二度と傷つきたくないが故にその心を深く閉ざしていた。彼女は誰も信じない。なぜなら信頼することは傷つくことの裏返しだから。故に自分が憎たらしい存在に1zeptoレベルの信頼を抱いても、簡単に気づくことはない。それに気づいた時、彼女の心を固く閉ざす扉に微かな亀裂が走るだろう



裏実績:興味fromアザゼル

個、豚、多大、興味 byアザゼル





裏実績:にかいめ(白目)

詫び投稿はこれにて本当におしまい。ストックが(´・ω・`)くそげ になってるけど今は書き貯めしてる時間があるからきっと大丈夫。だから明日も元気に(´・ω・`)出荷よー



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[一言] GM「幸運クリティカルならいいよー(無理だろうな)」 PL「お、3でた!」 GM「マジで?あー、ありはするけど、見つけられるかは幸運ではなく目星で(流石に無理やろ)」 PL「やった!1だ!」…
[良い点] リリスが重い女で無限にニコニコ出来る。 第三の女不思議アザゼル [一言] 更新が多いのは幸せです。 でも大丈夫? エタらない?と考えてしまいます…… 体調に気をつけてなるべく無理をしないで…
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