12話 骸姫
ゲリラ投稿
「デブーダ様、そう言えば今しがた確認させいただきたい事が…………よろしいですか?」
俺がクレアラの犬っぽさはどこからだろうとくだらない方向へ思考が流れていっていると、クレアラが問うてくる。
「ふむ、申してみよ」
表情から見るに緊急性は高そうではないが、なんだろうか。
「昨日のリリス様の御来訪、今までと違い此方側に一切のご連絡を頂いておりませんが、何か御事情でも御座いましたでしょうか?」
「ああ、それに関してはただの伝え忘れだ、すまんな。それにお前も少しは察しているかもしれぬが、一昨日付けでリリスは此方側についた。ただしトリスタンス派閥とは全く別、あくまでリリス個人との協力関係だ。だがリリス自体も完全に味方ではない故に、お前とリリス陣営を接触させるのは見合わせる」
「リリス様がですか…………?」
思案顔のクレアラ。リリス自体にどうこうというより心当たりがないっといった感じの顔に俺は眉を寄せる。
「何か変化は感じたりしなかったか?我の前では当てつけの為かだいぶ性悪女のような真似をしているが…………」
俺がゆっくりと確信を込めた声で問うが、クレアラは困惑混じりにキョトンとしていた。
正直なところ、リリスは何処を突いても地雷臭い。だが自決されるのは寝覚めが悪過ぎるので救いたいと思うが、一方で醜い俺は自己保身が最重要に位置し続けている。行動と思考に些か矛盾を抱え続けている。
どうしてデブーダなんぞの尻拭いを全力でしなきゃならんのだと訴えたい。原因不明の非日常から逃避してしまいたい。出来るだけポジティブにいようと魔法や錬金術、筋トレで誤魔化していようと一寸先は闇であるこの日常など捨ててしまいたい。
憤りと混乱によるハイテンションもいつかは限界がくる。ハイテンションじゃなきゃこんなデブーダロールなんざできやしないだろう。
デブーダの肉体だからこそ緩和されているが、この世界は衣服、食事、娯楽、トイレやベッドなどの生活環境に至るまで現代日本に全て劣る。慣れない異世界の慣習……まだしも貴族の慣習にあるカルチャーショック。
未だ自室の中を靴で歩き回るのも、誰かに着替えさせてもらうのも、何かを取るときに自分で動かずメイドに取らせる(それが仕事なのでなんでもかんでも要らないと言えば問題になる)とか、それに対し気軽に礼も言えないとか、どうしても違和感がある。
銃刀法万歳な現代日本で、誰もが銃火器レベルの“魔法” や“スキル”といった技能が使えてしまうこの世界、誰を信じ誰を疑えばいいのか。
異世界転生とか転移ってチートもらって頭空っぽにしてヒャッハー!するもんじゃないの?なんでこんなストレスで禿げそうになるまで悩むことが多いんだよ。
すごくくだらないと思われるだろうが、例えばシェフの料理にふと「これは醤油をかければもっと美味しいだろうな」と思った時に醤油に始まりソースやマヨネーズ、ケチャップなどの調味料がない。わさびがない、七味がない。
何を飯ごときで、と思われるだろうが俺も三大欲求の一角であることを舐めていた気がするのだ。1週間ほどアメリカに行った時、母の味付けランダム卵焼きや父の具は適当味噌汁が死ぬほど飲みたくなったりしたが、旅行には終わりがあるために割り切れた。
だが今はどうだ、終わりがわからない。
もしかしたら、調味料などは再現できるかもしれない。だがただでさえシェフの拘束時間の長い俺が、食うことにしか関心がなく旨いのが正義なデブーダが、口頭の指示だけで未知の調味料を作らせ始めたらいよいよ迷惑な上に珍妙だ。
御都合主義的に米や大豆があれば、なんて思ったところで実際には品種改良とかが必要だし、そもそも作り方なんざ知らん。異世界転生転移主人公のような引き出しの多い頭はしてないのだ。
こういった細かいストレスの積み重ねが腹立たしい。
貴族の勝ち組スタートなのに\(^o^)/オワタ赤ランプ点灯スタートとか、悪役令嬢転生みたく没落回避ルート全力疾走したら世界滅亡ルート側という大海原で『裸一貫・筏でGO』なんてアホかと言いたい。
言うなれば、炭鉱送り回避ルートも世界滅亡ルートも太平洋側で出航しアメリカ方面に向かう感じであり、妥協逃避ルートは日本海側から台湾経由でアフリカ大陸を目指すようなもの。元から出航場所が真反対である。
太平洋側はあらゆる手を講じてもよしな大海原。走り出したら邪魔もないので一直線である。
対して日本海側ルートはリリス救済などを考え始めると韓国、中国、インドネシア、インドとまあ色々経由しなければならない上に経由する度に経由国から干渉されまくる、おまけに搭乗してくる人達はちゃんと味方なのかわからん、と不安すぎる航海の様なものだ。
きっと、本気で自己保身だけ考えるなら他の国々なんて迂回せずユーラシア大陸近海を運航しインドを目指すような感じでいけばいい。だが俺は、国々を迂回しなければ得られないだろう興奮や歓喜、しなかった時の後悔や寂寥感など抱え続けていくなんて真っ平ごめんだ、と何処かで思っている。
この状況を引き起こした野郎の意表をついてやりたい、これ見よがしにひかれたレールの上を誰が走ってやると言うのだ。
いつかこの矛盾の積み重ねが大きな破綻を生むのだろうが、やけっぱちのような第二の人生を俺が難しく考えすぎてるのだろうか。
千々になる整合性の取れない思考に自らが酔いそうになっていると、顔を恐る恐る覗き込むクレアラを見て俺は意識を取り戻す。
「……ーダ様、デブーダ様、どうかなさいましたか?」
「っん、すまん、少し考え事をな」
「いえ、その、お涙が……」
クレアラに指摘されて頬を触ると、しっとりと濡れていた。
嗚呼、情け無い。いつの間にやら俺は泣いていたらしい。あー、だっさいな…………やはり俺はこの程度の人間か。無意識に泣くって初めてだよほんと。
クレアラだって困り果ててるじゃねえか。ま、こいつだって全てを信用していいかもわからん人物だし、そんな人物の前で泣いた事は正直消えない汚点だ。貴族ってプライドが大事な生き物だからな、泣くのは頂けない。
当たり前のように信用できる家族がいることの有り難みを今更知るとはね、人生色々ってレベルじゃないけど変なこともある。
「なに、気にするな。少し目が潤みすぎたまでだ」
ここで下手にごみが入ったとか誤魔化すのもかえって不自然で良くないし、こういう時は誤魔化してるのかよくわからない返しをしておけばいい。
俺の返答に対して、クレアラは怪訝そうな表情ではあるが、俺の言葉にコクリと頷いた。クレアラの瞳に微かに映るのは疑念だろうか。だが俺もなんで泣いたか正確にはよくわかってないのでクレアラにもわからんだろう。
「リリスはお前以上に演技派なのだろうな。大した女だ」
「…………私としましては、リリス様がデブーダ様の味方に付くということ自体に違和感があるのですが…………大変失礼極まりないのですが、リリス様は一部ではマスクと呼ばれるほど表情の動かぬ御方ですし……」
少し言い淀むクレアラの目を見ると、促す様に頷く。
「……その、原因であるデブーダ様の味方に……と言うのはリリス様が笑顔に御成りになるよりも信じがたく思ってしまうのです……いえ、その、デブーダ様の御言葉を疑う様な真似は不敬と承知しているのですが……その…………」
「よいよい、我も奴が笑ったりするところを見るのは信じられぬ気持ちであった」
「わ、笑ったのですか、あのリリス様が!?あの骸姫とあだ名されるリリス様が!?」
「おい」
「っ!?し、失言でした!」
今の反応……俺がうっかり御礼を言った時以来だな。クレアラってうっかりさんな感じするけど本来超有能だし、その有能ちゃんが失言するほどリリスの笑顔ってびっくりなんだろうな…………。
なにせデブーダの記憶でも引き合わされた5歳の時から既に目が死んでるし無表情……そこから10年以上あの状態だとすれば、リリスが笑ったと聞けばびっくりするか。たぶん犬が二足歩行し始めたくらいのビックリニュースなのだろう。
LDOでも無表情しか用意されてないキャラの凄まじさたるや、だな。
そういえばリリスの骸姫の呼称は俺もLDOで聞いたことある気がする。
「我も遠因どころでは無く原因である故に叱りはせぬが、その内状を説明してくれぬか?」
「か、かしこまりました。リリス様は先程、仮面とあだ名されていると私は申し上げましたが、その第四位公爵家のディケイ公爵派閥からは骸姫と渾名されているのです」
ペンドラゴン帝国における四大公爵家は第1位ランスロットル家、第2位アガヴェイン家、第3位トリスタント家、第4位ディケイ家で構成されている。
ランスロットル家は代々財政に関わる実権を握っており、アガヴェイン家は官僚や魔道具管理など外政に通づる。そしてこの二家はかなり仲がいい。
問題はトリスタンス家とディケイ家。この二家は武芸に秀でた祖先から始まった家のため武闘派が多い。そしてトリスタンス家は魔法、ディケイ家は騎士に強い影響力がある。
だからだろうか、とても仲が悪い……と言うよりかはディケイ家が目の上のタンコブであるトリスタンス家を目の敵にしている。
だがわからなくもない…………第1位と第2位は担っている役割も違う上に結束も固い。だがトリスタンス家とディケイ家は広いカテゴリーで言えば共に“武芸”を担う訳で、順位もたった一つ上。
ディケイ家からするとトリスタンス家は途轍もなく気に入らない。
決定的だったのは俺の許嫁がリリスに決定したことか。だが蓋を開けてみればKO☆NO☆ZA☆MA!なのでディケイ家からすると愉快で仕方ないだろう。それにディケイ家の長女は第四皇太子の正妻、次女はローランの側室におさまってるから最終的にはディケイ家の方がいいのかな?
デブーダはなぁ…………妙にプライド高いしリリスをダ◯チワイフとして気に入ったもんだから側室がいないんだよな。良家だといくら出世が絡んでもデブーダの元に娘をやるのは恐ろしいというか娘が自害しかねないのでできないし、下衆野郎が差し出した女は肥大し過ぎたプライドでつっぱねるというか下手なのを送り込んで癇癪起こされると自分の身が危ういのでそれも無し、と。
そして本人もそれに関しては特に思う所はなかったのもある。それはデブーダの記憶をもつ俺だからわかることだからな。
そう考えるとヒロインは主人公の冒険についてくぐらい令嬢としては気がしっかりしてるしグズグズ泣いたりしない。それがデブーダにとってはとても新鮮なものに見えたんだろう。
あれだ、光源氏みたく、宮廷の女の長ーーーーーーい髪の毛は見飽きるほど見てるけど、尼さんみたく髪をショートにしてるのをみて「え!あれ可愛くない!?まじ可愛いですけど!?あっ、あのロリッ娘めっちゃ可愛い!嫁決定だわ〜、俺の時代キタコレ!」って感じで盛り上がって………はないか。
とにかく“お嬢様でござい”なんて畏まってる娘どもより生き生きとした可憐なヒロインにムラっときた訳だ。
ま、デブーダの体に引っ張られてその気持ちは分からなくはないが、生憎二次創作物の寝取られ系は好きじゃない……オリジナルなら許容できるけどカップリング済みのキャラを云々は嫌いなんだよな…………多分ここに関してはちゃんと精神バランスは俺>デブーダになってると思う。
と言うよりかは、精神と肉体は徐々に融和し始めている節がある。
これは骨格の違いも関係しているだろうが、俺は中学生の時の足のけがの影響でふとした時に内股で座る癖があった。だがデブーダになってからは股を広げて座っている。
イライラした時に舌を噛む癖がもともとがあったが、それは無くなった。代わりに爪の先同士を引っ掛けパチパチ音を鳴らす癖に変わった。
食の好みもだんだん変容している。特に大きい変化は甘みに対する意識だ。デブーダは本来甘いものが大好物だったが、俺はもともとケーキの生クリームでも気持ち悪くなるほど甘いものが得意ではないので(おかげで誕生日ケーキはいつもチーズケーキ。菓子類もスルメとか干し梅とか煎餅とかが好きだった)デブーダの肉体も積極的に甘味を求めようとしない。
ただ困ってるのが…………茶だ。
この世界の御貴族様はハーブティーがメインの飲み物だ。紅茶は存在しているのかよくわからないが、恐らくハーブティーの一種とごっちゃになってると思う。てか地球の物と生態とか違うんだよね…………そこで味に途轍もない差異を感じていないのはデブーダの肉体だからなんだろうけど、生命体って似通った生命体だと味とかの好みも世界を跨いで共通なのだろうか。それともゲームの世界がモデルなこの世界でそんなこと真面目に考える方が馬鹿なのだろうか。
兎角そんなことは隠居した後にでもゆっくり調べてればいい話だが、何が言いたいかって絶賛緑茶党・烏龍茶党の俺にとってはハーブティーがどうしても性に合わない。
この世界のどっかに緑茶は無いだろうか…………紅茶と本質は同じなので紅茶さえ見つかれば解決なのだが、紅茶がないということはそういうことなのだろう。正直なところ俺にとっては米が食えないより辛い。一人暮らしを始めてからは楽チンなので基本的に朝食はフルグラと牛乳と適当サラダと魚肉ソーセージ、昼は学食のラーメンで夜はバイトのランダム賄いだったから米に対し強いこだわりはない。ただ緑茶だけは欠かさず飲んでいたので飲めないのは辛いのだ。
閑話休題。
「リリス様の異名である骸姫の由来は、無表情で反応に乏しく滅多にお声すらお出しにならないことを揶揄する蔑称でございます。加えて公爵令嬢でありながら茶会などを今まで一度たりとも催したり参加なさったりすることもありませんでしたので、そういったことも少なからず影響しているかと…………」
「なかなか皮肉の効いた蔑称だな」
一応その悪名の原因ではあるので簡潔にコメントすると、クレアラはコクリと頷いた。
きっと聡いリリスのことだ。その蔑称を誰が広めたのかすら把握しているかもしれない。もっと鈍ければ彼女も救われたのかもしれない。だが彼女はあまり鋭く、聡く、察しがよく、理性的過ぎた。俺なんてただの知識チートのズルをしてるだけで、実際の地力なんてリリスにもクレアラにも、ローランにも敵いっこない。
会話の端々や仕草からも、本来の彼女が発揮しすべきだった天賦の才を感じることがある。自分の私利私欲の為に利用していることに罪悪感を感じるくらいには、惜しい才能がある。
本気で彼女を救済するんだったらもっと手っ取り早い簡潔な手段はいくつもある。だがそれは俺が完全に没落することの裏返しであり、また魔王云々に関して俺が関与できなくなることになってしまう。
いっそのこと完全に没落して、逃亡して、ひっそりと主人公の旅路に加わる…………なんてことも考えたことがないといえば嘘になる。大地属性に超絶的な才能があると知った時、ゲームの中で創った魔法が使用できた時、俺は自らが魔王討伐に加わればいいのではないかと考えたりもした。
道中の攻略法とかも助言できるし、とても建設的ではないかと思った。
だが直ぐにその考えは捨てた。クリアするには困難な問題がいくつも脳裏をよぎったからだ。
第一に主人公とヒロインの間をどう取り持つか、という問題。
主人公とヒロインをくっつけることはストーリー的にかなり重要であるのはストーリーを知っている俺はよくわかっている。上級三属性を使い、貴族などとのやり取りも担い、また辺境でふらついていたお陰か博識で重要なアドバイスをしてくれる。心折れそうな時には優しく支え、時には主人公が意思を貫く為のキーマンとして、彼女は主人公の傍に在り続ける。
そんな2人には是が非でもくっついてもらいたいのだが、問題はヒロインと俺の間の確執だ。悪気はなかったと説き伏せたところで実際にヒロインがどう捉えるかはわからないし、俺に気を割き過ぎて主人公をおろそかにしてもらっちゃ困る。仮に許されても、カップル+男1人では気を使われてしまうかもしれない。そんなことせずイチャイチャしてもらって全然構わないがそう単純な話ではないと言うのが色恋沙汰だ。
第二に、まず合流できるか怪しいと言うところである。貴族の世界から完全に離れる、なんてことはそう簡単にはいかない。良からぬことを企む者達が、辺境伯の愛娘に加えて元第三皇太子とはいえ立派に皇家の血を引く男が共に行動していたら、陰謀の一つや二つ思いつくだろう。
第三に………いや、これが結局は一番問題なのだが、俺に生き物が殺せるだろうか、そう考えると背筋が寒くなるのだ。考えただけで、背筋が寒くなる。
異世界転生転移の主人公様はチタン合金級のメンタルをお持ちなのかサクサク殺しをしているが、もし俺が大地属性の大規模魔法を人に向けてしまった時、俺はその力に酔ってしまうのではないかと思うと心底恐ろしい。
強すぎる力は必ず人を狂わせる。
人は拳銃を持つと気が大きくなる、というのは聞いたことのある話だろう。そして拳銃よりも即座に思いの儘に扱える魔法は少しでも気を抜くと助長の原因になる。
現にリリスとかに魔法を見せ過ぎてる自覚はあるし、使い始めるとどうしても慎重さを失いがちになる。
この世界の人々は魔法という概念を当たり前のように受け入れており、使い方も心得ている。だが俺はもともとただの日本人で、ここはやり込んだゲームの世界。ふとした時、やり込んだゲームがSFの完全没入型VRになったかのような現実離れした感覚が余計にそれを後押ししている。
だがゲームの中では人の大きさの猪でも問題なく挑めるが、実際は大型犬相手でも大きく吠えられれば一瞬でも体が竦むし、熊に会えば尻尾巻いて逃げるしかない。魔法があるから、なんてのは甘い考えだろう。
いついかなる時、どんなミスをするかわからないのが現実というもので、どんなに気を引き締めてもやはり大きな力を持っていると無意識に油断する。
そんな状態で生き物を殺して、俺は平静であり続けられるのか。
車に轢かれて潰れたカエル、猫に弄ばれ首の千切れたネズミ、父がバットでタコ殴りにしたがエグい状態の蝙蝠、轢かれた腹ものが出てしまってる狸…………俺はこのようなものを見てきたが、強い嫌悪感は感じたことはなかった。「あ、死んでる」っとこんな風にしか感じなかった。
しかしこれが自分によってなされた光景だとすれば、俺はどう感じるのだろう。何も感じないのだろうか。本音としてはあまり感じない……と思う。無闇やたらに殺すのではなく、正当防衛だったり食の為の殺しなら、俺は折り合いをつけていけると思う。
だがこれが人だったら、どうなるのだろう。倒してポリゴン片になるわけではない。死体はそのまま残るのだ。怖いもの見たさでそのような画像を知り合い達と見たことはある…………あるが、少し実感性に乏しく特に思うことはなかった。
もし俺がこの世界でもそうだったら…………いや、俺が本当に恐れているのは戦えるかどうかではない。人でもなんでも殺しても動揺がなく、こんなもんか……と思い命を軽々しく考え始めた時、俺は何か重大なミスをしそうな気がしてならない。
盗賊だから殺してもいい、敵だから殺してもいい、相手は命令されて仕方なくだけで正当防衛だから殺してもいい…………やがて線引きがあやふやになって些細なことで力をふるい始めた時、俺は“俺”でなくなってしかう。
力も持った“デブーダ”に成り下がってしまう。それはとても恐ろしい。
きっとラノベ主人公ならば、正義のためだぜヒャッハー!ってスパスパ殺しをするんだろうけど、実際の純日本製社会人である俺はこんなもんだ。力を使うのではなく支配されてしまうのではないかと怯える情けない奴だ。
そのくせ魔法や錬金術の研究はやめられないのだから我ながら阿呆らしい。
デブーダは大地属性なんて嫌だと思っただろうが、もし俺が大地属性以外の魔法を実戦に用いれるほど才能があれば、きっと俺は冗長しただろう。
創ること、護ることに特化した大地属性だからこそ、俺は力にとらわれずに済んでいる。周りが優秀過ぎて劣等感でデブーダは歪んだが、俺は周りが優秀だからこそ、知識チートとか魔法チートしようとか、そんな気を起こさずに済んでいる。自分が凡人であることを思い出させてくれる。
自分が特別な存在ではないと言い聞かせて、ガキのような英雄願望を押さえつけ、慎重さを維持し続けさせてくれる得難き人々だ。俺は全てを知っているなんて思う気はさらさらない。今だってバタフライエフェクトで本来のシナリオがねじ曲がり始めているかもしれない。既に制御などできないのかもしれない。だからこそ真摯に向き合わないといけない、思い込みをしてはいけないと自分に言い聞かせるかせることができる。
そうだな、願わくばリリスの選ぶ男は頭のいい奴がいいな。夫婦共々俺に冷静さを取り戻させてくれる優秀な男がいい。
さて、この3つの問題をクリアできない時点で主人公とともに冒険などという絵空事はポイしたわけだが、もう一つ危惧していることがある。それが…………。
「個は誰何する」
「デブーダにきまっておる……が、しかし、随分と大胆な入室だな、アザゼル」
翌晩、俺の危惧に関わる理由でいきなり斬りかかられたので、心配のし過ぎではなかったことが図らずも証明されてしまった。南無。
実績:悲しみの…………(´・ω・`)らんらんは豚だからシリアスとか難しいことはわからないよ
豚さんにも涙はあるんだぞ。らん豚にはないけどね
(´・ω・`)そんなー
ところで海外とかいくと私は米以上に緑茶ゾンビ、七味ゾンビとなります。誰か共感してくれる人いませんか?
それでは連日更新ラストの5/10に向けて(´・ω・`)出荷よー