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『神殺し』の異世界転生    作者: ヤっちゃん
学園編 最弱の英雄
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第67話  対決



ティリアは弓をしならせる。


(ふざけた態度だが、事実相手の方が上だ。)


スースの詠唱は少し時間がかかる。

シャルル姫も隙を伺って睨み合っている。


ならば、ここは自分が先手を打つべきだろう。


「魔弓術 流星」




ティリアの弓から放たれた大量の矢。

それらは上空へ飛んだ後、アーチを描くように狙った場所へと降り注ぐ。


「わ、わわわわっ!?」


迫りくる大量の矢を見て、ライラは体を竦ませる。


黒衣の仮面は右手を掲げて、


「水門・大氷盾」


巨大な氷の盾を、上空に向けて作り出す。

降り注ぐ矢を、氷の盾が弾いていく。


「私の矢を、簡単に!?」


矢といっても普通の矢ではない。ティリアの魔力が練られて作られた魔力矢は、鉄製の鎧すら貫通する。

さらに今回は、最初から強力な魔力で練っていたのである。それが、いとも簡単に防がれて唖然とする。


だが、これは一対一の闘いではない。


「隆起し、割断せよ。敵の足元を崩せ。(クラーク)


その時、スースの詠唱魔法が放たれる。

対象は仮面の足元。

突如盛り上がり、地面が割ける。そのまま割れた地面の底へ落ちるかと思われたが、


「風門・飛翔術」


風をその身に纏った仮面は、見事そこからの離脱を果たした。


だが、その先に


「はあっ!!」


シャルル姫が槍を突き出す。

逃げた先を狙った、回避不能の一撃。


(回避した瞬間、空中で態勢は不十分。捉えましたわ。)


迫りくる槍の鋭い突きに対して、黒衣の仮面は空いてる方の片手をそっと添えた。


その瞬間。


(っ!ずらされた!?)


黒衣の仮面の胴へと向かっていた槍の穂先。その軌道が僅かに、だが確かに変わったのだ。

そのままシャルル姫の槍は仮面の脇を通り抜ける。


「ぐっ!?」


腹部に走る鈍痛。気づけば仮面の蹴りが放たれていた。その衝撃でシャルル姫は大きく後退させられた。


「魔弓術 穿ち」


このまま追撃されては不味いと判断したティリアが放ったのは、貫通性の高い一矢。


「これならどうだ!?」


吠えるティリアの目に、信じられない光景が映った。


「廻円 写鏡」


仮面は、飛来してきた矢の勢いを殺さないまま掴み取り、体を回転させて円を描く。

そして、振り向きざまに掴んでいた矢を放す。


「か、返しただとっ!?」


180度の方向を変えた矢が、ティリアに向かってくる。


防御(ガード)!!」


立ち竦むティリアの前に現れたのは、スースが展開している盾。

その数10枚。

重ねるように盾を並べて、矢を防ごうとする。


返された矢は、盾を一枚、二枚と貫いていき、やがて最後の盾でようやくその勢いを失った。


「はああああっ!!」


態勢を立て直したシャルル姫が、槍の連続突きを放つ。高速で繰り出される槍。仮面はまたもや空いてる片手のみで、躱して、捌いていく。数十にも及んだ槍の連撃はどれも標的を貫けないままに終わった。


「どいてっ!」


一向に優勢にならない接近戦に、スースが叫びを上げる。


「走り抜けよ (レグザ)。切り刻め (シーフ)。豪炎に包めよ (ヴォルグ)。ここに炎雷鳥の息吹となりたまえ。」


三属性の詠唱による重複、連結。

雷が走り、風が巻き起こり、爆炎の豪球が中央に佇む。

やがて、それらの魔法は融合し、一匹の猛禽を形取って、仮面へと襲いかかる。

高難度・長文詠唱がもたらす魔法による殲滅。


「土門・大土神(オオツチノカミ)ノ鎧(ノヨロイ)


そう唱えた仮面の体を、光り輝く砂、土、石が巻き上がり包み込む。

やがて出来上がったのは、巨大で堅牢な、輝く鎧だった。

その鎧を纏った仮面は、一直線に向かってくる炎雷鳥を仁王立ちで迎え撃つ。


直後、


「「きゃあっ!?」」


閃光と突風、爆炎が立ち上がる。


「やった‥のか?」


砂煙が巻き上がる中、3人は固唾を飲んで注視する。


「‥‥うそ。」


スースは信じられないもの見た顔をする。


砂煙が晴れていき、そこにあったのは、


まったく傷一つない、光り輝く鎧を纏った仮面だった。


「わ‥わたしの‥‥最大火力よ?」


今の一撃には、少女にとって絶大な自信があった。

それが傷一つ与えられなかったという現実に、彼女は呆然とする。


「接近戦も‥‥次元が違いますわ。」


シャルル姫も悔しさに唇を噛む。

彼女達の技術は、かなりの高水準にある。

それはひとえに彼女達の才能もあり、努力もしてきた結果だ。

だが、仮面の戦闘技術はそれを遥かに凌駕していた。


極みに至る戦闘技術。

圧倒的な火力。

切り札さえ防いでしまう防御術。


(‥‥まるで隙がないですわ。)


これに勝てる者などいるのであろうか。

シャルルの頬を冷たい滴が伝う。







「闘神」に弱点はない。


フィウルスの前世、地球での評価はこれに尽きた。


「鬼神」九重 楓によって伝授される技術。

濃密な気によって繰り出される開門術。


それらを会得した竹中雄は、万能・無敵の闘いを演じていた。


故に「闘神」。


シャルル姫達が敵わないのは、無理もないことなのである。

何故ならその相手は、闘いにおいて「神」と呼ばれていた男なのだから。




(シャルル達に隙が出来た。今だな。)


呆然とするシャルル姫達の様子を、仮面は見逃さなかった。


「風門・旋風(つむじかぜ)


「っ!!」


「くっ!?」


「きゃあっ!?」


突如、駆け抜ける風に、巻き上がる砂煙。三者三様の悲鳴が上がる。


「っ!しまった!逃げられましたわ!」


先ほどの風の目的は、目眩し。


急いで追いかけないと。


そう思って一歩を踏み出したシャルル姫だが、


ガクン、と。


膝から崩れ落ちた。


「え?」


見ると、自分の足は生まれたての小鹿のように震えていた。


「‥‥すまない、姫さま。どうやら、わたしも追うのは無理みたいだ。」


そう声をかけてきたティリアを見ると、その足も同様に震えていた。


「‥‥完全に、私たちの負けですわね。」


悔しそうな表情で、シャルル姫はそう零した。







「うまくいった!」


フィウルスとライラは既に結界を破壊して、学園の外へと駆け出していた。


「あ、そこです!そこの路地裏に入って下さい!」


ライラが指差す方向へ向かうと、人通りの少ない、薄暗い場所へと出てきた。


「‥‥ここに、転移用の魔水晶(ラクリマ)が‥‥あった!」


「それで、仲間の元へ帰れるんだね?」


「は、はい!良かった、生きて帰れるんだ。」


ライラは感極まって涙が溢れる。


それからライラは目元を拭った後、フィウルスへと向き直る。


「あなたのおかげです。本当に、ありがとうございます。」


「お礼なんていいのに。」


正面からの感謝の言葉に、フィウルスは苦笑して答える。


「いつか‥‥また、会えますか?」


「うん。会えるよ。だから‥‥元気でね?」


再び少女の目元から零れる滴。


「はい。あなたに出会えて‥‥良かったです。」


泣きながら、少女は笑った。


「僕もライラに出会えて良かったよ。」


「ふふっ。嬉しいです。では‥‥またね、フィウルス。」


「ああ。またね、ライラ。」


別れの挨拶をして、ライラは魔水晶(ラクリマ)を起動した。


光の粒子が、少女を包み込んだ後、眩い輝きとともに少女の姿は消えた。




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