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『神殺し』の異世界転生    作者: ヤっちゃん
学園編 最弱の英雄
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第65話  洗脳



「何やってるんですか、師匠?」


フィウルスの影から現れたエルシィは、ライラとフィウルスを睨みつけながら言った。


「こ、『孤狼』‥‥。」 


「エルシィ、僕は彼女を‥‥ライラを助けたいと思ってるんだ。」


明らかな敵意を向けてくるエルシィに、フィウルスは顔色を一切変えずに言った。


「そんなの、許されるわけありません。」


エルシィの目が一段と鋭くなる。


「どうして?」


「そんなのっ!!」


怒りの形相で、エルシィはライラを指差して叫ぶ。


「魔族だからに決まっているでしょっ!?」


「魔族、だからなのか?彼等は千年前の争いが終わってから、人類に何もしていないじゃないか。」


「関係ありません!魔族は殺す!それだけですっ!!」


「‥‥そんなことのために、君を弟子にした覚えはないんだが。」


「たとえ、師匠であろうとも引きません。あなたを倒して、その魔族を殺します。」


二人の間に不穏な空気が流れる。


(やはり、「魔族」に対しての執念が深すぎる。これはいったい何なんだ?どうすれば‥‥)


普段の様子と明らかに違うエルシィ。

だが、今は時間が惜しい。エルシィには、少しの間眠ってもらうとしよう。


フィウルスの意識も戦闘へと向かう。


一瞬の静寂の後、


「‥‥俺と()りあおうっていうのか。」


「っ!!」


開放されるフィウルスの「気」。その場の空気が重く感じられるような圧迫感。

最弱の男に似つかわしくない威圧感が、エルシィを襲う。


(こ、この感じ‥‥。確かにあの黒衣の仮面と同じ‥‥。)


フィウルスの本気を目の当たりにしたライラは、目を丸くさせる。


そしてエルシィは、


「くどいです。私の全力であなたを倒させてもらいます。」


噴出される大きな魔力、闘気。

6年生の頂点に立つ者の力もまた、出鱈目であった。


さらにエルシィは拳を強く握りしめて、


「はあっ!!」


上乗せされる力。

フィウルスとの修行で培ってきた「気」も同時に開放する。


(ま、まさか!?フィウルスのことを師匠って呼んでたけど、「孤狼」までこの力を扱えるの!?)


「気」に関して言えば、確かにフィウルスよりもかなり少なく感じる。

だが、彼女は魔力と闘気では、フィウルスのそれを大いに上回っているのである。


「師匠。‥‥覚悟してくださいよ。」


構えをとるフィウルスに対して、エルシィは駆け出す。


「はあああぁぁっっ‥‥って、無理無理無理!?」


駆け出した瞬間、エルシィは絶望に染まった顔に変わって反転した。


「え?」


「‥‥え?」


困惑するフィウルスとライラ。


「ちょっと!?なに考えてるのよわたしー!?師匠と真剣(ガチ)()りあうなんて、正気の沙汰じゃないようっ!!?」


仕舞いには頭を抱えて怯えていた。


「えーと、エルシィ?」


「ひっ!?すいませんでしたっ、師匠ー!!どうか‥どうかお許しを!!」


「‥‥ライラを救うのに異論は?」


「ありません!滅相もごさいません!何なら、わたしも可哀想だと感じ始めてます!わたしも手伝いますから〜〜!!」


強烈な手のひら返しであった。


「これは‥‥。」


あまりの急変ぶりにフィウルスは考え込む。

今のエルシィからは先程までの、鋭い敵意も憎悪も感じられない。


「エルシィ‥‥何でさっきは対立しようとしてたの?」


「うっ!?えーと、なんか頭に靄がかかっていたような‥‥?勝手にカーッて血が昇っていたような‥‥いや、違う!」


先ほどまでの自分の様子を思い出していたエルシィは、突然顔を強張らせる。


「‥‥誰かが、頭の中で『魔族を殺せ』って、言ってた‥‥?」


サーッと、エルシィは血の気が引いていく。


(‥‥正気に戻ったってことか。)


エルシィのあの様子は嘘を言ってない。


フィウルスはその様子から、ある仮定を導いた。


「‥‥全ての人族に仕掛けられた、集団洗脳。」


「っ!!」


「うそっ!?そんなの‥‥」


「それ以外に説明はつかない。エルシィ、さっきまでの自分は、明らかに異常だったと認識しているな?」


「は、はい。もう「魔族」と聞いても、その、憎しみとか怒りは湧いてこないです。」


「そ、そんなことが‥‥。」


(しかし、なぜ急にエルシィは洗脳が解けた?)


そこが疑問だった。

この世界の人族にかけられている洗脳だとして、違う世界からの魂をもって生まれたフィウルスに効果がないのは、まだ分かる。


ならば、エルシィは何故?


(あの時‥‥確かエルシィは‥‥。)


魔力と闘気を全開放させて、さらに‥‥


「‥‥『気』だ。」


「「え?」」


そう。エルシィは『気』を開放したのである。

「気」もまた、この世界とは違う世界からの力である。

エルシィも最初は扱えなかったが、フィウルスが自身の「気」を流し込んでコツを掴ませ、練ってきたのである。


「『気』を開放した時に、かけられていた洗脳を弾いたんだ。」


「そ、そんなことが‥‥」


「まあ、検証している余裕はない。とりあえず、ここは逃げることとしよう。」


「う、うん。」


「それで、エルシィ?」


「は、はひっ!」


優しげな声と笑顔を向けるフィウルス。

だが、エルシィにはそれが、ただただ恐ろしかった。


「手伝ってくれるんだよね?」


有無を言わせない笑顔が、そこにはあった。




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