第6話 出会い
5歳になったフィウルスは、年相応に成長しており、今は狼の毛皮を服代わりに着ているが、そろそろ新しいサイズも用意しないといけなさそうである。
小柄であるが体もやせ細ることなく、美しい白髪‥今世での母親譲りの‥を短めに切り揃えており、くりっとした瞳は淡い金色を帯びている。
女の子とも間違えられそうな、中性的な容姿だが、超俗的な美少年へと成長していた。
「あむっ。んぐんぐ‥‥ごくん!」
そんな美少年が、山奥で熊の肉を丸焼きにして食事をしている。
ちなみにこの熊は、ブラッディーベアーというこの世界でDランクとして怖れられる魔物なのだが‥。
「あーっ!美味かったー。やっぱ肉はいいよな。」
(んー、とりあえず5年ここで過ごしたが、これからどうするか‥‥。このままここで鍛練しても、「能力抑圧」は解除出来そうにないし。降りてどこかの町に行くか?でも‥‥生まれてから1人でずっと山で暮らしてましたって言う5歳児‥怪しすぎるよな。)
自分の現状を振り返り、フィウルスはため息をつく。
(でも魔法も闘気術も、独学では限界があるしな‥。)
(あれ?人と、魔物の反応?)
物思いに耽っていた彼だが、自分以外と魔物の気配に反応する。
(これは‥魔物から逃げているみたいだな。少し様子を見に行くか。)
そう決断し、全身に気を巡らせて強化し、気配に向かって走り出した。
(見つけたっ!)
そこは木々が生茂る山の中では、開けた空間のある場所だった。
そして、戦闘中のブラッディーベアーと5人の男女、崖の手前では、華美な服飾が施された馬車が1台止まっている。その馬車の窓からは、まだ幼い少女が怯えながら顔を覗かせていた。
(この人達‥強いな。俺が手助けするまでもなさそうだ。)
5人の男女は、ブラッディーベアーを圧倒していた。
特に、一目で見ても豪華だとわかる服を着ている、30代半ばぐらいの男の剣術は群を抜いている。
(貴族かな?それにしても、あの剣捌きは見事だな。あと、後ろに控えている女の人もすごい魔力だ。)
男と同じように、豪華な服を着ている20代後半の女性も、無視できない強さが感じられる。
(なるほど。貴族の家族と、その護衛っていったところか。)
フィウルスがそう判断した頃、男の剣がブラッディーベアーを貫いた。
「ウォルスの旦那!流石だ!‥にしてもすまねえです!俺たちが護衛のはずなのに‥。」
「あなた。怪我はないとは思うけど、大丈夫かしら?」
「ああ、大丈夫だ。問題ない。それと、ジード。今回は敵が悪かった。気にしなくてもいい。」
ブラッディーベアーが倒れたことにより、戦闘に参加してた者達が集まっていた時‥‥
(ダメだ!まだあの熊は死んでねえ!)
フィウルスがそのことに気づくと同時、ブラッディーベアーは最期の力を振り絞り、猛突進をする。そして、その先は‥‥
「っ!いかん!サファー!!」
崖の手前で止まっている馬車であった。
巨大な熊の突進を受けた馬車と、ブラッディーベアーはそのまま崖を落ちていく‥‥。
(破っ!!)
フィウルスは全身へ気を送り込み、走り出した。
驚愕のあまり固まっている男女達を抜き去り、馬車を追って自らも崖の下へ飛び降りる。
「風門・飛翔術!」
そして、開門の力を解き放ち、自分の周囲の風を操って空を舞う。
追いついた馬車の窓では、恐怖故か少女は目を瞑っている。
フィウルスは馬車の窓から少女を引っ張り出した。その数秒後、数メートル下で馬車とブラッディーベアーの落下音が聞こえる。
(あ、危なかった。間に合ってよかった。)
今も震えている少女を抱き抱えながら、少女に傷一つないことに安堵する。
「あ‥あれ?‥‥え?」
いつまでも来ない衝撃に、不思議に思って目を開けた少女は、現在の状況に理解が追いついていないのかキョトンとした顔をする。
「え、えっとー。ケガ‥‥はありま‥せんか?」
(やべー!人と話すの何年ぶりだ!?サラッと言葉が出てこねえ!)
ずっと一人で山奥に生きていた影響か‥どもりながらも怪我の有無を聞く。
「は、はい。大丈夫でございます‥。」
(でも、この子すっごい可愛いな。いや、ロリコンとかじゃないけどね。)
長く美しい金髪に碧い瞳。年はフィウルスよりも一つか二つ上ぐらいだろうか。少女は困惑しながらも答える。
(とりあえず上に戻るか。)
そう思い、崖上へ戻ろうと上に飛ぶと‥‥
ビクッ!ひしっ!
驚いた少女は、フィウルスに力強く抱きつく。
(あ、そっか。そりゃいきなり上に浮かんでいったら怖いよな。)
「だ‥大丈夫!さっきの‥とこに戻るだけ‥だから!」
コクッ
安心させようとそう言うが、少女は頷きつつも力を緩めない。
そうして、元の場所まで飛翔して戻ったフィウルスと少女の先には‥‥
さっきとは別の意味で驚愕している男女達の姿があった。




