第63話 異常なまでの敵視
この世界に来てから違和感を感じていた。
おかしいのは自分の感性なのだろう。
地球で見ていたアニメや漫画で培われた価値観が、周りとの相違を浮き彫りにしているのだ。
そう、決めつけていた。
だからここに来てからも、出来るだけ周りと同じように感じているフリをしてきた。
自分だけが異常。
それを自覚しているのなら、普通を装えば良い。
だけど、今回ばかりはその「普通」の仮面が剥がれ落ちた。
「え?‥‥ライラが魔族?」
いつもの昼食の時間、いつもの場所でフィウルスは、衝撃の事実をシャルル姫達から聞かされた。
「ええ。彼女は小人族でしたわ。少女として学園に潜り込み、得た情報を魔族側へと流していましたの。」
顔色一つ変えずにシャルル姫は説明する。
「それで‥‥ライラは?」
「それについては心配ない。シャルル姫とサファ先輩のおかげで捕縛済みだ。」
「ええ。今は学園の地下室に幽閉しております。今夜にでも拷問して、逆に魔族側の情報を吐かせる予定ですわ。」
「ご、拷問って‥‥。」
穏やかでない言葉が出てきて絶句するフィウルス。
しかし、周囲にいる者達はそれが当たり前のような顔をしており、意に介してない様子である。
「そ、それって‥‥」
「とーにーかーくー!」
フィウルスが言葉を発しようとするが、エルシィが遮った。
「フィウルス先輩は〜、もう悪い女に引っかかっちゃダメですよ〜?お人好しなんですから、誰にでも優しくして〜!」
ぷりぷりと怒るエルシィ。
「でも、拷問までする必要はあるのか?」
そこで、ティリアがシャルル姫に問いかける。
フィウルスはエルシィのお叱りを無視して、それに乗っかる。
「そ、そうだよ!何もそこまで‥‥」
「さっさと始末した方がいいと私は考えるんだが‥‥」
「っ!!?」
ティリアとフィウルスはまったく逆方向の意見だった。
「そうですわね。ただ、今回は7年にも及んだ間諜活動。いったいどれだけの情報が流出してしまったのか、気になりまして。」
「ふむ。確かにそうだな。」
異常だ。
フィウルスは率直に思った。
いつも感じていた違和感が、頭の中に駆け巡る。
教材や書物でも、恐ろしいほどの憎悪と嫌悪感が記されている。
「魔族」と言葉を聞いた時に、全ての者が揃って目の色を変える。
異常なまでの敵視。
人族と魔族は確かに争った歴史がある。
しかし、それは千年以上も前の話。
魔族達は地の果てへ逃避し、争いは起きていない。
なのに、彼女達はまるで親の仇のような目をしている。
(これは‥‥明らかにおかしい。)
触れてはいけないような気がする。
だが、このまま放置していると、あの少女は‥‥拷問の果てに殺されてしまうだろう。
(‥‥確かめないと。)
フィウルスは内心で覚悟を決めた。




