第61話 疑惑、確信
「それで‥‥話というのは何なんだ?」
ここアスタルシア学園、その女子寮内にある談話室。
個室となっている室内には複数の机や椅子があり、ティリア、スース、メイリィ、そしてエルシィの姿があった。
「ん〜、まだシャルル姫先輩が来てないんですけどね〜。」
「‥‥シャルルは別件で少し遅れる。」
今にも帰りたそうな目をしながらスースが答える。
「じゃあ、先に始めておきますかっ!」
無邪気な笑顔をしながら手を叩くエルシィ。
「実はですね‥‥あのライラという子、ちょっとキナ臭いんですよね。」
笑顔から一転して真面目な顔でエルシィは告げた。
「‥‥私から見れば、お前の方がよっぽどキナ臭いんだが。‥‥何かフィウルスとコソコソしてそうな雰囲気が‥‥」
「‥‥それ、もっと詳しく。」
だが、二人の関心は別にあるようだった。
ギクリ、としたエルシィは慌てて誤魔化す。
「わ、わたしは別に何もないですよっ!」
「‥‥どうだか。」
「そ、それよりもですっ!最近のフィウルス先輩がお尻を追いかけている、あのライラという子のことです!」
師弟関係やフィウルスの力に関しては絶対の秘密である。
鼓動が早く脈打ちながらも、エルシィは話を本筋に戻す。
「わ、私は別にそうは思わないですけど。‥‥ちょっと他人と壁を作っているような、て感じるぐらいにしか。」
メイリィは出会ってからの率直な意見を出す。
「そこ、なんです。」
ビシッと指をさすエルシィ。
「調べたところライラ・ミーチェは商家の娘。学園に通える実力が判明したため、ここに通っているらしいんです。」
「‥‥お前はそれをどこで調べたんだ?」
話の内容よりも、その情報を掴んだ経緯が気になるティリアは若干呆れたような顔をする。
「え?ひみつです♪」
「‥‥それで、それが何?」
このままでは話が進まない。
早く部屋に引き篭もりたいスースが先を急かす。
「不思議に思いませんか?商家の娘が、有名貴族だらけの学園に通って、貴族の一人とも近づこうとしない。」
「‥‥確かに。」
貴族間でさえ、将来の人脈のために動いている。
そこに、将来のお得意様が出来るかもしれない状況で、商家の者が動かないのは不自然なのであった。
「‥‥昼食の時も彼女は戦闘分野に関することばかり聞いてましたね。」
「ああ。私も聞かれた。」
「‥‥ここからは私の推測です。まず、そもそも彼女は商家の娘ではない。学園において気心しれた友人を作るつもりは毛頭ない。しかし、学園トップの者達の戦闘分野に関する情報は欲しい。」
ここまで言えば感づくだろうと、エルシィはみんなに視線を送る。
「‥‥つまりお前は、ライラ・ミーチェが間諜の類だと?」
やや間を置いて、ティリアが核心に迫る。
「‥‥彼女がただの人見知りである可能性ももちろんあります。しかし、その場合、私達にあれだけ質問出来るでしょうか?」
「そ、それは‥‥」
「はっきり言いますと、ライラ・ミーチェはフィウルス先輩のお人好しにつけ込んで、学園トップの手の内を調べに来たと、私は睨んでます。」
状況的にも辻褄はあってしまう。
「‥‥意外だな。お前ってそんなに疑り深い性格だったんだな。」
「え?だってフィウルス先輩に悪い虫がつくかもしれないんですよ?それに、これ以上ライバルが増えても困りますし♪」
悪戯な笑みを向けながら、エルシィはそう告げた。
「そうですわね。そして、その話‥‥あながち間違いではないようですわよ。」
突然会話に入り込んできた声。
全員が視線を向けると、
「あ、シャルル姫先輩!」
遅れてやっきたシャルル姫であった。
「‥‥間違いではない?」
「ええ。先ほど、ある生徒から報告を受けてきましたのですわ。今から教員や警備の者に話すよりも、王族である私に話した方が早いと。」
「‥‥それでその報告っていうのは?」
「そのライラ・ミーチェの寮部屋にある机から、こんなものが‥‥」
そう言ってシャルル姫はある用紙をみんなに見せた。
その後、そこに集う者達の、目の色が変わった。




