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『神殺し』の異世界転生    作者: ヤっちゃん
学園編 遠征研修
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第55話  帰省

フィウルスとエルシィ回になります。





「ちょ、ちょっと待って!し、師匠〜!!」


「だめー。」


「きゃああああっ!!」


深夜の山の中で、悲鳴が上がる。


「う、ううっ。今日も、めちゃくちゃにされたあ。」


「なんか違う意味に聞こえるからやめて!?」


今日もフィウルスの鍛錬でボロボロになったエルシィ。


「こんなか弱い乙女を傷物にしてぇ。責任取って下さいよねっ!」


「だから誤解招く言い方やめて!?」


ボロボロになりながらも、エルシィは意外と元気なようであった。


「あ〜疲れたぁ。」


地べたにも関わらず、エルシィは大の字になって寝転がる。


「そういえば、師匠はこの長期休暇は実家に帰られるんですか?」


「ん?ああ、長期休暇ね。そうだよ。」


今の季節は冬。

もう一週間ほどで長期休暇に入り、春になるまで学園の授業はない。

そのため、この時期は実家に帰省する生徒も多い。

フィウルスとサファも、毎年帰省している。


「そうですか。んじゃ、その間は修行出来ないですね。」


「ああ、ほんとだ。んー、エルシィは実家に帰るの?」


「私ですか?私は別に帰らないですけど‥‥。」


その返答にフィウルスは少し考えてから、こう言った。


「良かったらエルシィ、ウチに来ない?」


「へ!?」








(う、うう〜。緊張する〜。)


深呼吸をしてエルシィは落ち着こうとする。


「あ、エルシィ!待った?」


「あ、ししょ‥先輩。いえ、それほどは‥‥。」


待ち合わせ場所にフィウルスも到着した。


「多分もうすぐでサファおねーちゃんも来ると思うからね。」


(サファ()()()()()()‥‥?)


「あ、あの‥先輩。本当に私もご一緒していいんで‥‥。」


「フィル〜〜〜〜!!!」


その時、エルシィの言葉は遮られた。

ものすごいスピードで駆け寄って来たサファは、フィウルスに抱きつく。


「あ、ああ〜!!くんかくんか。久しぶりのフィル成分注入!!すー、はー。すー、はー。」


「あはは‥‥。」




エルシィは今、目の前で見せられている光景が信じられなかった。


サファ・ハワード


「結界剣術」のサファ。その名は有名過ぎるぐらいに知れ渡っている存在だ。

強く凛々しく、弱き者には優しい。そして、あのアルス王子からの誘いも憮然と断るその姿は、多くの女生徒達から「お姉様」と慕われる程だ。


そして、フィウルスの姉でもある。

そのこと自体も知っている。だが、問題はその親密さだった。

庶民‥‥貴族からは下民と蔑まされている者との間に生まれた「混じり血」であるフィウルスとサファの関係は、周囲の目から見ても冷たいものであった。

エルシィもそう思っていた。


先ほどまでは、だが。


(え、え?なに、この溺愛っぷり。ていうか匂い嗅いで恍惚としてるんだけど。アブナイ表情してるんですけどー!?)


どん引きであった。よく見たら、二人してお揃いの腕輪をしているし。


「あ〜。足りない足りない足りない!もっと‥‥あら?」


「‥‥。」


これでもかとフィウルスを強く抱きしめて、堪能していたサファは、そこで初めてエルシィの存在に気がつく。


「「‥‥。」」


お互いに気まずい沈黙が出来る。


「こほんっ。フィウルス、この方は?」


先ほどの一連の行動を()()()()()()()()()サファは、フィウルスに改めて問いかける。


「この人は4年1組の、エルシィ・ガーデンさん。僕の()()で、()()も知っている。今回、家に招こうと思って。父様達には手紙で知らせているよ。」


「そう。ガーデン家の‥‥。ハーエン山脈でフィウルスを舟に連れ戻した時の子ね。ふうん、弟子で、事情も知っているのね。」


「うん。」


「あ、あの。今回は突然招いていただくこととなり、あ、ありがとうございます。」


「決めたのはフィル‥‥フィウルスだし、気にしなくてもいいわよ。」


ガチガチになっているエルシィに、サファは優しく笑いかける。


「この子と‥親しくしてくれてありがとうね、エルシィ。周りには仕方なく冷たい姉弟を演じていたの。この事も秘密でお願いね。」


「は、はい!」


(あれほどの溺愛っぷり‥‥言えるわけないし、信じてもらえるわけない。)


「じゃ、行こうか!」








「こ、ここが‥‥ハワード公爵家の屋敷。」


広大な敷地に立っている門を見上げて、エルシィは呟く。


「みんな元気にしてるかなあ。」


「ふふっ。手紙では、相変わらずのようだったけどね。」


言い合って、フィウルスとサファが門を開くと、


「「「おかえりなさいませ。サファお嬢様。フィウルス坊ちゃん。」」」


綺麗に整列していた使用人たちが一斉に声を揃えて歓迎していた。


「わ、わー!!坊ちゃんはやめてよう!」


「坊ちゃん」と呼ばれることに恥ずかしさを覚えていたフィウルスが抗議の声を上げる。

数年前から屋敷内では、フィウルスに「坊ちゃん」とつけて呼ぶことが浸透していたのだ。


そして、


「「「ようこそ、サファ・ガーデン様。ごゆっくりしていって下さい。」」」


サファにも同様に歓迎の意を示した。


「お、お邪魔します。」


エルシィは二人の後を追いかけて歩く。


「お帰りなさいませ、サファお嬢様にフィウルス坊ちゃん。お元気そうでなによりです。」


「あ!アラナンさん!」


「ありがとう、アラナンさん!」


執事長のアラナンが声を掛けてきた。フィウルスとサファも久しぶりに会えたアラナンに、顔を綻ばせる。


「そして、エルシィ様。この度ははるばるご足労いただき、ありがとうございます。私、このハワード公爵家に仕えており、執事長をさせていただいているアラナンと申します。」


「い、いえ!こちらこそです。よろしくお願いします。」




「サファ〜〜!フィル〜〜!」


遠くから女性の声が聞こえてきた3人は、声の方を向く。

そこには、母親であるマリー夫人が駆け寄って来ていた。

そしてその後ろには父親のウォルス公爵の姿も。


「「母様!父様!ただいま!」」


「おかえり〜〜〜!ああ、愛しの我が子達!」


ひしっ、と。

マリー夫人は二人を抱きしめる。


「おかえりなさい。サファにフィウルス。元気そうで良かった。それと‥‥」


「あなたがエルシィちゃんねっ!?」


ウォルス公爵がエルシィへと視線を移した時、サファとフィウルスを抱きしめていたマリー夫人が顔を上げて言った。


「は、はい!エルシィ・ガーデンと申します!」


「ふふ。そんなに硬くならなくて良い。ここにいる間は我が家と思って寛いで良いからね。」


そう言って、3人を部屋へと案内する。


「ねえ、エルシィちゃん!学園でのフィルの話を聞かせてっ!」


部屋に入った途端、マリー夫人がエルシィに詰め寄る。


「ええっ!?えーと‥‥」


エルシィは学園でのフィウルスを思い起こす。

ティリア、スース、メイリィ‥‥そしてシャルル姫に囲まれている姿を。

フィウルスに構ってほしそうにしているティリア。

フィウルスの傍にくっついて離れないスース。

赤面しているメイリィと、視線に熱が篭っている気がするシャルル姫。


「‥‥。」


どれもが絶世の美少女達。

そして時々、彼女達の反応を面白がり揶揄って(遊んで)いるフィウルスの姿。


「はっきり言って‥‥女の敵です。」


エルシィは率直な感想を言った。言い切った。

それに周囲は、


「ええっ!?」


予想外の言葉に驚くフィウルス。


「ほう‥‥。」


意外な言葉に興味を持つウォルス公爵。


「まあ‥‥。」


面白そうな展開に目を輝かせるマリー夫人。


「やっぱり‥‥。」


納得のいく顔をするサファ。


「ほっほ。若いですなあ。」


「フィウルス坊ちゃんが‥‥やんちゃに。‥‥じゅるり。」


朗らかに笑うアラナンと、危ない反応をするメイドのメル。


「お、女の敵って‥‥そんなことしてないよっ!」


すんなり信じ込む周りの反応に、フィウルスは焦って抗議する。

だが、


「あれだけの美少女達に囲まれて何言ってるんですか!しかも、油断してたら誑し込むしっ!たまに反応を面白がって揶揄うしっ!」


エルシィが語気を強めて言い放つ。


「ふふっ。フィウルスも男だな。」


「エルちゃん、エルちゃん!その話、もっと詳しく!」


「私も‥上辺での情報から知らないから‥‥。」


「ほっほ。若いですなあ。」


「フィウルス坊ちゃん‥‥。可愛い顔してイケナイ子‥‥じゅるり。」


もはやエルシィの優勢であった。


その後もエルシィは、如何にフィウルスが女生徒達を誑し込んでいるかを、包み隠さず全て話した。


そして、フィウルスは恥ずかしさのあまり、部屋を飛び出して行った。







それからもハワード公爵家での楽しい時間は過ぎた。

メイドのメルとマリー夫人にサファとエルシィで、フィウルスの着せ替え大会も実施した。

可愛らしい服に身を包んだフィウルスの姿は、どこからどう見ても美少女だった。下手したら自分よりも可愛いかもしれない。


夕食もみんなで食べることになった。

マリー夫人が再びフィウルスの誑しについて、話をし始めたため、フィウルスはまたノックダウン状態となっていた。


風呂場では大いにショックを受けた。

大人であるマリー夫人はまだいい。そう、まだ。

驚いたのはサファの胸の大きさだった。

柔らかそうな、豊満な胸だった、と。

サファは当時のことを思い返す。

やはり遺伝なのだろうか。いや、自分だって‥‥まだ、成長中なのだ。悲観することは‥‥ない。

二人から肩に手を置かれて、「女の価値はそこじゃないのよ。」と慰められた時は、ひどく惨めな気持ちになった。


(楽しかったな‥‥。)


学園では見られないフィウルスの表情や扱いを思い出して、知らずに笑みが溢れる。


そんな時、コンコンと扉叩く音が聞こえた。


「エルシィ様。メイドのメルでございます。ウォルス公爵様がお呼びですが、お時間よろしいですか?」


「あ、はい!大丈夫です!」


(いったい何だろう?)


「失礼します。」


案内された部屋に入るとそこにいたのは、ウォルス公爵とマリー夫人。そしてサファにアラナンだった。


「こんな時間にすまないね。」


「いえ、大丈夫ですが‥‥。」


「エルシィさん。君には、改めて礼を言わせて欲しくてね。」


「礼‥‥ですか?」


何に対する礼なのか。見当がつかないエルシィは、首を傾げる。


「あの子‥‥フィウルスと仲良くしてくれて本当にありがとう。」


「そ、それは‥‥」


「‥‥君はある程度の事情も知っていると聞いたから、話そうと思ったんだ。フィウルスは‥‥表向きには私と庶民の子で養子として預かっている。」


「そして『神呪』を持っている。」


ウォルス公爵の言葉にマリー夫人が付け加える。


「そう。『呪い』と『混じり血』。それが周りからのフィウルスへの印象だ。だけど、君はそんな上辺の評価を気にせず、あの子自身を見て仲良くしてくれている。私達は、それがとても嬉しかったんだ。」


「い、いや。そんな大したことは‥‥。」


突然の感謝の言葉に、エルシィは照れてしまう。

だから、話題の転換として気になった事を聞いた。


「あの‥‥フィウルス先輩が表向きには『混じり血』っていうのは‥‥本当の事は聞いてもいいんでしょうか?」


「ああ。君なら構わない。あの子は‥‥」


ウォルス公爵はフィウルスと出会った時のことを話した。


(そう‥‥だったの。じゃあ、あのいつもしている首飾りは‥‥。)


いつの日か見た首飾りを思い出す。そして、少年が実の母親のために肌身離さず身に着けていることを思うと、切ない気持ちになった。


「どうか‥‥これからもあの子と仲良くして欲しい。」


最後にエルシィはそうお願いされた。

そして、その答えは決まっている。


「はい!もちろんです!これからも()()()仲良くしていくつもりです!」


「ほう。」


「まあ。」


「むっ。」


「それでは、失礼いたします!」


それぞれ反応は違うが、エルシィはそう切り上げて部屋へと戻った。

そして、ベッドにダイブして、枕を抱きしめて、


(うわあ〜〜!言っちゃった!言っちゃったよ〜!)


一人で悶えていた。


「エルシィ!」


「え?」


名前を呼ばれた方を見ると、いつの間にかフィウルスが部屋の中にいた。


「え!?せ、先輩?な、何ですか?まさかっ!ダメですよ!?そ、そんな‥‥いきなり大人の階段を登るなんて‥‥」


これからの展開に、まさかとエルシィは慌てる。

悪い気はしていなかったのだが。


しかし、予想外の言葉が告げられる。


「修行!」


「‥‥へ?」


「だから、今から修行だよっ!」


「‥‥あ。」


そうであった。完全に忘れていた。


「さて、今日はたくさん恥ずかしい思いをさせられたからね。いっーぱいお返ししてあげなきゃ。」


意地の悪い笑みを浮かべるフィウルスを見て、エルシィは、つう、と冷たい汗が流れるのを感じた。


「お、お手柔らかに〜」


「ヤ、ダ。」


「イ、イヤアアアアアア!!」


しばらくの間、ハワード公爵家の敷地内で、少女の悲鳴が度々聞こえるようになった。





手料理を食べてもらったティリア。

デートに行ったスース。

添い寝したメイリィ。

性教育(?)を受けたシャルル。

ご両親に挨拶をしたエルシィ。


みんなそれぞれの歩幅で親密度を上げていってますね。(笑)


次回からは新章になる予定です。お楽しみにして下さい。

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