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『神殺し』の異世界転生    作者: ヤっちゃん
学園編 遠征研修
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第52話  夕方の書庫室

メイリィ回になります。






夕日の柔らかな日差しが窓から入り込み、静寂に包まれた室内には本のページを捲る音だけが鳴る。

ここは、王立アスタルシア学園内の書庫室。

メイリィは開いた本のページに書かれている文字を目で追っていく。


図書委員となってもう6年。

人が殆ど訪れてこない、形だけの受付役を買ってでるのは、6年間彼女だけだった。

他の生徒達は魔力や闘気を練って、模擬戦に打ち込むことに傾倒しており、一方でその必要が無く、本を読むことが好きな彼女にとっては好都合なことだった。


何よりも、


チラ、と。


メイリィは視線を上げた。


そこには、メイリィを除いて唯一、書庫室を利用している白い少年の姿があった。

雪のように真っ白な髪。真剣な眼差しを送る瞳は金色。超俗的な美形を持つその容姿は、一見すれば少女にも見えるような中性的な顔であった。


(‥‥題名「天使の読書」)


芸術絵画の一面を切り取ったかのようなその光景に、メイリィは心の中で題名をつけた。


今、この書庫室にはメイリィとフィウルスだけ。

そう、二人だけである。


(この時間。この時間だけは、彼を独り占め出来る。)


昼食の時は全員集まるし、模擬戦は観戦するしかない。奥手なメイリィにとっては、この書庫室にいる時間だけは、誰にも邪魔されずにフィウルスと二人きりになれるかけがえの無いものだった。


読み終えたのか、分厚い本をパタン、と閉じてため息を吐くフィウルス。


(よ、よし。落ち着いて‥‥。)


早鐘を打つ心臓を落ち着かせるように深呼吸をして、メイリィはフィウルスに近づいていく。


「読み終わったの?」


「うん。またいい情報は載っていなかったよ。」


「そう‥‥。これ、良かったら息抜きにどう?」


そう言ってメイリィは、一冊の本を差し出す。


「うん。そうだね。メイリィのお勧めを見ておこうかな。」


フィウルスは差し出された本を受け取る。

その本の題名は、


「『魔王レアについて』?」


「うん。千年前‥‥古の魔王レアについての書物はほとんどないの。この書庫でも多分この一冊だけ。」


「そうなんだ‥‥。読んでみよっか。」


「うんっ!!」


フィウルスとメイリィは書物を机に置いて、隣同士に座る。

この時間、二人は一冊の本を一緒に読むのだ。


「次、捲るよ?」


「うん。」


メイリィにとって最も幸せな時間。

肩が触れ合うまで接近して、同じページの文字を一緒に追いかける。


ーーー古の魔王レアは、全ての魔族を率いて魔王国(レアスト)を建国、人族の国へ侵略した。彼の魔王の元に集まった魔族達は、異常な進化を遂げており、その中でも力ある者は幹部となり猛威を奮っていた。魔王レア自身の持つ能力は一切不明。さらにはその容姿、出自についても判明している情報は少なく‥‥‥


ピト、と。

フィウルスとメイリィの手が触れ合い、メイリィはドキッとした。


肩が触れ合う距離だ。手も触れてしまってもおかしくはないのだが、突然触れ合ってしまった手の感触にメイリィは身悶える。


(ヤ、ヤバイ。顔が‥‥熱い。)


赤てくる頬。今の自分の表情は、かなり緩んでいるに違いない。強く速く脈打つ心臓の音は、彼に聞こえていないだろうか。


(あ〜〜〜っ!!こんな姿見られたら一巻の終わりよ!頑張れ、私!平常心よ、平常心!)


「‥‥」


「?」


フィウルスから何の反応もないことに不思議がったメイリィは恐る恐るその顔を覗き込む。


すると、


少し疲れが溜まっていたのだろうか。

気付いたらフィウルスは穏やかな顔をして居眠りをしていた。


(〜〜〜っ!!)


一人であたふたしていたことに気づいたメイリィは、恥ずかしくて死にたい気持ちになった。

いや、もし起きてて先程の様子を見られた方が恥ずかしさは増すのだが。


(‥‥起きないのかな?)


だったら、もう一度、と。


そう思って彼女は再びフィウルスの手に触れる。


再びかあ、と赤くなる顔。

だが、それでもフィウルスに起きる気配はなかった。


(‥‥もうちょっと。もうちょっとだけ。)


こんなチャンスは滅多にない。

ならば、このままフィウルスの手の感触を堪能させてもらおうと、メイリィはフィウルスの手を触っては引っ込んで、触ってを繰り返した。


(‥‥わたしも寝ようかな。)


幸せそうに寝るフィウルスの顔を見て、自分も眠気がうつったのだろう。

せっかくなので、少し大胆にさせてもらおう。

メイリィは自分の頭をフィウルスの肩にもたれさせて、目を閉じた。



柔らかな夕日が差し込む静寂な書庫室で。

少年と少女は互いに寄り添って、それぞれの夢を見ていた。

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