第29話 ぞっこん
「将来有望な先輩方はぁ、まだそんな男と一緒にいるんですかぁ〜?」
その瞬間、空気が凍りつく。そして、
「「オイ」」
真っ先に敵意剥き出しで食いついたのは、ティリアとカイルであった。
「てめえ、オレのダチを馬鹿にしてんじゃねえぞ!?」
「エルシィ‥‥。その体に穴を開けられたいのか?」
不穏な空気を醸し出す2人。相手を射殺さんばかりの気迫を出して睨み付ける。
「カイル、ティリア。落ち着いて下さいまし。相手は年下の女の子ですわよ。」
そんな2人に対して、シャルル姫が待ったをかける。
「‥‥チッ。」
「えへへぇ。つい本音が出ちゃいました〜。すいませーん、気を悪くなさらないでくださーい。」
だが、2人の気迫に怯まず、反省の色がまったくない素振りを見せる少女は只者ではないのだろう。
「‥‥エルシィさんも、それ以上煽らないでくださいます?」
「え〜?でも、ここにいる人達って〜、すっごーいネームバリューが勢揃いですよぉ〜?一国の姫と、『赤い狂犬』のカイル先輩に、『無限弓』のティリア先輩でしょ?それに『不動杖』のスース先輩とさらには『智将』のメイリィ先輩まで!そして、その中に‥‥『最底辺』のフィウルス‥‥先・輩♪そりゃ、こんなに場違いな人間がいたら不思議に思いますよぉ〜。」
「場違いなどではありませんわ。彼はわたくし達の友ですもの。」
「アハっ。姫様〜。友達っていうのは〜、対等な立場同士の人間がなるんですよぉ?私はぁ、虫けらと友達にはなれませーん。」
シャルル姫とエルシィがそんな会話をしている最中、辺りの空気が急速に凍えていく。
「‥‥うざい。」
冷気の発生源であるスースが一言呟く。普段は気怠げな目に力が入ってる。
「‥‥これ以上は危なそうですから、わたしは向こうにいきますね〜。フィウルス先輩と姫様方、ごゆっくり〜♪」
エルシィはまるで嵐の様に場を荒らして、去っていった。
「申し訳ありません。あの子は‥‥悪い子ではありませんの。」
シャルル姫が申し訳なさそうに謝る。
「う、うん。大丈夫だよ。気を使わせてしまってごめんね。」
気にしない様にフィウルスは答えるが、
「フンッ。悪い子の印象しかねえよ。」
「まったくだ。」
カイルとティリアが悪態をつく。
「あ、えっと。ありがとう、カイルとティリア。僕のことで怒ってくれて。」
「な、わっ、私は別に‥‥あの女の態度が、そう!気に食わなかっただけだ!」
フィウルスの感謝に、ティリアは恥ずかしくなり赤面する。
「それでも、ありがとう。嬉しかったよ。」
「あ、あう。」
更なる追撃に、ついには赤い顔を俯かせる。頭からは湯気のようなものを出しながら。
「スースもありがとうね。」
「‥‥べつに。」
素っ気ない返事をするスースだが、その普段は気怠げな顔が少し熱を持っていた。
(あの女に教えてやろうかな‥‥。ここにいるほとんどの奴は‥‥フィウルスにぞっこんだってこと。)
フィウルスと女子達のそんなやりとりを見ながら、カイルは心の中で思った。




