第27話 スース・テファイト
ランキング戦が終了して数日経ち、長期休暇まではあと一月ほどある頃。
今日は授業が休みのため、フィウルスは寮から出て街へと買い物に向かった。
王都なだけあってか、街は人々でいつも賑わっている。
(筆記用具と衣服と‥‥他に必要そうなものは無いかな?)
雑貨屋をキョロキョロと見回していると、ある物に目が止まる。
(マントと‥‥仮面か。もしも「気」を使う場面の時に、バレないように顔を隠すのに丁度いいかもしれない。)
そう考えたフィウルスは、漆黒のマントと白に黒い縦筋の入った仮面を手に取って会計に向かった。
(結構買っちゃったな。けどまあ、これでしばらくは持つだろう。)
買い物を終えて通りを歩いてると、微かに殺気を感じとる。
(こんな通りで殺気?‥‥あの人からか。狙われているのは‥‥前を歩いてる女の子!)
殺気の発生源とそれの向かう先を特定し、駆け出す。
男はナイフを取り出し、少女へ向けて今まさに突き刺そうとしているところであった。
(間に合えっ!!)
Side スース・テファイト
(ほんとうんざり。)
街中をとぼとぼ歩く少女、スースは物憂げに思う。
(強大な力を持つ者には、義務と責任を背負わなければならない。って、なんなのよホントに。)
「千剣千盾 アルドナスの加護」
「堅守剛盾 ドルムの加護」
「魔唱帝 アビリスの加護」
3つの強力な加護をその身に宿した少女は、フィウルスの同級生であり、五星の1人である。
三星・不動杖 スース・テファイト
(わたしは別に戦う力なんてなくていいのに。戦いたくなんてないのに。それなのに、周りは強くなれ、戦え、勝て。そればっかり。嫌になるわ。)
生徒の中でも群を抜いて、やる気のない者として有名であった。
(周りから守られるような、か弱い女の子でありたかったのに‥‥。特にアルドナスとドルムの加護のせいでっ!!!)
アルドナスの加護は、剣や盾に自身の魔力を介すことで、自在に操る能力。また、ドルムの加護は自身の魔力から堅牢な盾を具現化する能力を持つ。
スースはこの二つの加護を合わせることで、常に複数の盾を出すことができ、それぞれの盾は自律的に動いてスースを守る。
(意識してなくても、勝手に出てきて動いて守る。上から落石が落ちてきても守られる。急に魔法が飛んできても守られる。ええ、そうよ。便利よ。便利なんだけど‥‥)
いったい誰に対しての文句なのか。ムスッとした表情をしながら歩く。
(‥‥誰もわたしを守ろうと動いてくれない。家族でさえ。そら、自分で勝手に守るんだから必要ないんだろうけど。)
「絵本の話みたいに、わたしを守ってくれる騎士様はいないのかな‥‥。」
空を見上げて、ポツリと呟く。
不意に背後から勢いよく駆けてくる音が聞こえる。それと同時に、自身から勝手に展開される術式の感覚。
(ああ。またか。有数な家格の令嬢だからって、こんな白昼堂々と‥‥。どうせ大丈夫なんだけ‥‥)
振り向きざまに見た光景に彼女は息を飲む。
ズシャッ
刺客のナイフが届くよりも、盾が展開されナイフを阻むよりも。それよりも先にナイフを止めた手があった。
ナイフに貫かれた手からは血が滴り落ちるが、止めた男は表情を変えない。
「‥‥っ!グランド・ロック!」
「なっ!?くそっ!」
スースは思い出したかのように、刺客に対して土魔法で拘束する。
(この子は‥‥わたしのことを知らないの?怪我までして守る必要なんてなかったのに。)
見覚えのある顔だ。否、知らないはずがない。
(確か、フィウルス‥‥よね?)
「ええっと、怪我はない?」
「‥‥あなたばかね。」
「えっ!?」
スースは石ころを拾い、自分の頭上に落ちてくるように上へ放り投げた。そして、石がスースの頭上に近づいた時、
キンッ
展開された盾がスースを守る。
「わたしは常に守られているの。わざわざそんなことしなくても、問題なかったの。」
「あ、ああ。そうだったんだ。」
良かった、と少年は笑顔で口にする。
「‥‥でも、ありがと。」
感謝の言葉を口にしながら顔を背ける。おそらく、物凄く赤い顔をしているだろうことは、自分でも分かった。
(‥‥いた。‥‥わたしを守ってくれる‥‥騎士様。)
「君たち大丈夫か!?」
騒ぎを聞きつけた衛兵がやって来たので、事情を説明し刺客を引き渡す。
その後、
「‥‥ねえ、あなた。名前は?」
少年のことは人伝に聞いているのだが、ここはお互いに自己紹介をするべきだと思い、スースは問う。
「僕はフィウルス。フィウルス・ハワードです。」
「そう。わたしはスース・テファイトよ。よろしくね。」




