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『神殺し』の異世界転生    作者: ヤっちゃん
 学園編 入学
31/78

第26話  男



ランキング戦が終了した日の夕方、ほとんどの生徒が居なくなった校舎内を歩く人影があった。

長い水色の髪をポニーテールにして、凛とした佇まいをしている。


五星・無限弓 ティリア・アーチェ


『魔弓王 オルゴス』の加護を授かっている五星の一人である。



(王立といっても五星以外で手応えのある者は‥‥あのカイルとかいう男ぐらいか。)


思い出すのはランキング戦でのこと。使った瞬間から無尽蔵に回復する闘気だからこそ出来る、大技の連発。

今のところは対処出来るだろうが、中々に厄介な戦法だと思う。


(さらに‥‥強くならなくては。)


強き加護を授かった者は、強くあるべし。そんな考えを彼女は抱いている。家族の者、特に2人の姉はそんなことに拘らなくていいと言ってくれているのだが‥‥。


(それにしても、それ以外に手応えを感じられらる者がいないとは。嘆かわしいな。)


入学して1年が経ち、学園の生徒達の現状に彼女は失望している。


(どいつもこいつも、卒業後のコネ作りに必死。言い寄ってくる男どもは、強くなることなど大して考えていない。‥‥男のくせに。)


彼女の家族構成は父親以外が全員女であり、同年代の男達とはこの学園で初めて出会った。

よく読み聞かせてもらっていた英雄譚から、逞しくて強く、頼りになる男。そんなイメージの男に一種の憧れを抱いていた彼女には、学園の男達は失望以外のなにものでもなかった。

事実、それほどまでに学園の男達はだらしなかったのだ。

  

ガンッ


そんなことを考えながら歩いていると、何かを殴ったような音が聞こえた。


(なんだ?誰かいるのか?)


そっと、音がした方を窓から覗き込む。すると、校舎裏の庭に白い髪をした者の姿があった。


(あれは‥‥フィウルス・ハワードか。)


その男のことはもはや学園において知らぬ者などいない。


(女みたいな顔をしてナヨナヨした奴だと思っていたが、あの戦いで最後まで諦めなかった姿には‥‥少し心が動いたな。)


同じ五星の一人とあそこまで喰らい付けるのは、数えるぐらいしかいないであろう。

彼女は心の中で称賛しつつ、フィウルスの境遇に同情する。


(せめて、呪いさえなけれ‥‥)


「くそっ!‥‥くそっ!」


「っ!!」


そこで彼女が見たものは、フィウルスの涙と心からの叫び声。

涙など屈強な男が流すようなものではない‥‥はずなのに、何故か馬鹿に出来ない。目が離せない。

理由はわからない。だが、その綺麗な雫に、天に吠えるその姿に、ティリアはフィウルスの「男」を見たような気がした。

胸の内がザワつく。何故か頬に熱がこみ上げる。

何故だろう。学園で最も弱い者のはずなのに、情景を抱いていた英雄と重なって見えてしまう。


その理由をティリアはまだ知らない。

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