第25話 ランキング戦後
「‥‥なんとか回復したようね。」
白衣を着た教師‥‥ブリジット・アウラーは額の汗を拭う。
ここは治療室。戦闘で負傷した者を治療するための部屋であり、彼女は高レベルな回復魔法を保持した教師だ。
そんな彼女でも、間に合わないかもしれないと思わせる負傷者が運ばれてきた。
1年6組フィウルス・ハワード
入学して以来、毎日運ばれてきている常連の生徒だ。
彼は『神呪』によって、能力が著しく低下しているため、戦闘の際は大怪我を負ってこのように運ばれてくる。
「それにしても、ランキング戦とはいえ、ここまでやるものかね。」
運ばれた当初の状態は酷かった。全身に数十に及ぶ裂傷がある上に、腹部に剣で貫かれた穴が2つもあったのだ。
「間に合って良かったものだ。」
だが、そんな状態ですら傷跡を残さずに回復させた彼女の技量も凄まじい。
「‥‥ん、うん?」
そこで、フィウルスはようやく目を覚ました。
「ここ‥‥は?」
「治療室だよ。危ない状態だったけど、なんとかなったみたいだ。身体に異常はないかね?」
「あ‥‥そっか。‥‥はい。なんともないです。」
「そうかい。良かったよ。学園の待合室に君の家族と友人が待ってるよ。みんなすごく心配してたんだから。」
「はい。‥‥あの、ランキング戦は?」
「もう終わったよ。君はあれから3日も寝込んでたんだよ。」
「そう‥‥ですか。ありがとうございます。お世話になりました。」
「ああ。体には気をつけるんだよ。」
治療室を出て、フィウルスは待合室とは違う方向へ向かう。
そこは人気のない校舎裏の庭だ。そして、俯きながら校舎の壁を
ガンッ
殴る。
「くそっ!‥‥くそっ!!」
目から何かが溢れる。顔が悔しさで歪む。自身の情けなさに腹が立つ。
(悔しい‥‥。悔しい!)
戦闘は終始圧倒的な展開だった。死に物狂いで当てた一撃は、相手にとってはなんら大したものではなく、こちらは瀕死にまで追い詰められた。
さらに思い出すのはこちらで出来た家族と、友人の顔。そして、知らない人達から降りかかる罵声の数々。
(何なんだよ、この呪いは。何でこんなのが俺にあるんだよ。)
学園に来て1年経つが、いまだに『神呪』については解決策がない。
魔力や闘気の圧縮は欠かさずに行っているが、道のりはまだ遠い。
「負けねえ。絶対に負けねえからなっ!!」
涙を流しながら、空に向かって吠える。
「絶対に強くなる!!」




