第2話 生まれてすぐ‥‥
薄暗い森の中を、1台の馬車が駆け抜ける。
その馬車の中では、まだ20代前半ぐらいの歳で、美しく長い白髪の女性が赤ん坊を抱えていた。
(‥‥ここ‥は?どこだ?‥‥この人はだれだ??‥‥いや、それよりも俺のこの姿は!?)
赤ん坊は目を覚まし、自らの状況に驚愕している。
(そう‥か。生まれ変わったのか。幸いなことに記憶は消えてないみたいだ‥‥。それで、どこなんだここは?俺を抱えている、この人は‥‥多分今世においての母親なのかな‥?こんな美しい白髪‥‥ぜってー日本人じゃないなー。)
「あら、目を覚ましたのね。」
白髪の女性が赤ん坊に語りかけるが、すぐにその目元から涙が伝う。
(あ、言葉はわかるん‥‥て!?なんで泣いてんだ!?どっか痛いのか!?)
「あ、あうあうー!あうあー!」
残念ながら赤ん坊である雄は、まともに話すことが出来ず、手足をばたつかせた。
「うう‥‥ごめんね。あなたに呪いがついている以上、あなたのことを公表することも、育てることも出来ないの‥‥。でも、お母さんはあなたのことを愛してるわ‥‥。いつまでも。」
そういって、白髪の女性は雄に顔をよせる。
(呪い?呪いっていったい?それに、俺はどうなるんだ‥‥?)
突然のことに雄が固まってる間に、ついに馬車は森の奥深くで止まった。
「フォリア王女様。ここまでです。」
「‥‥どうしてもダメなのですか?」
馬車の扉が開き、騎士の様な佇まいをした男が告げると、白髪の女性、フォリアは問うた。
「‥‥お気持ちはわかりますが、こればっかりはどうしようも出来ません。王族の子が呪い持ちだと、我らだけでなく民にまで知れ渡ると‥‥。」
「この子は何も悪くないのに!?どうして‥‥。」
「‥‥申し訳ございません。ですが、この条件でなければ、その赤子は殺されてもおかしくありませんでした。」
「‥‥わかりました。」
苦渋の表情を浮かべながら、フォリアは雄を抱えたまま馬車を降りた。
(ここは?森?)
そして、雄は籠に入れられたかと思うと、すぐ傍で生い茂っている木の下に置かれた。
その後、フォリアは胸元から何かを取り出した。
それは勾玉のような物がついている、二対のネックレスであった。フォリア王女はそれを、重なっている勾玉の部分を外し、2つに分かれた内の1つ、黒い勾玉を雄の傍に置き、白い勾玉の方を自分の首元にかけた。
「!?王女様!それは国宝の‥‥」
「これぐらいはさせて下さい。もしも、この子がここから逞しく生き抜いて‥‥いつか私の前に現れた時に分かるためにも‥‥」
おそらくは、その可能性が極めて低いことを理解しながらも、フォリア王女はその希望に縋った。
その時、ガサガサと茂みが揺れたかと思うと、2メートル程はある狼が飛び出してきた。
「ファイアランス」
フォリア王女がそう呟くと、炎の槍が形成され、狼を貫き、
「気刃!!」
騎士の男が剣を振り下ろすと、刃状の気が放たれ、狼の体を両断した。
(‥今のも気を感じなかった。まさか、魔法とかか?てか、こんなとこに置いていかれるのか!?)
雄は、前世で襲ってきた者たちのことを思い出す。フォリア王女の炎にも、騎士の放った一撃も、雄の知っている気を感じることが出来なかった。
「何もしてあげられなくて、ごめんなさい。あなたが、逞しく生き抜いてくれることを祈ってます。私の‥愛しいフィウルス。」
そう言って再び涙を流しながら、フォリア王女は馬車に戻り、やがて馬車も見えなくなった。
(‥‥生まれてすぐに森で捨てられるとはな。どうすりゃいいんだ?)
あまりのことに困惑する雄だが、
(とりあえず、俺の名前はフィウルス‥ね。それと、あなたの愛情はしっかり感じたよ。フォリア王女様。さて、呪いとか何か訳ありみたいだけど、まずは現状の確認だな。)
一先ずは、これから生き抜くための方法を模索するこのしたフィウルス。
(‥‥全身のチェックだ。手足は問題なく動く。視覚と聴覚も以上なし。全身に流れている気は掴めるか‥‥?)
目を瞑り、全身の気を感じようとする。すると、身体を巡る気の感覚が直ぐに感じ取れた。|三つも。
(‥‥どうなってる?3種類の気を感じるぞ?‥‥考えても仕方ない。一つずつ試してみるか‥‥。)
フィウルスは一度深呼吸をし、
「あっ!!(破っ!!)」
気合を入れた後、傍にある大岩を掴み‥‥持ち上げた。
(前世で慣れ親しんだ気に間違い無いな。次は‥‥。)
大岩を地面に置いた後、再び目を瞑り深呼吸をする。
(さっきの騎士は明らかに気のようなものを、放出させていた‥‥。前世で手にした気は、それ単体では放出しても消えてしまう。なら、まったく別種の気であるはずだ。)
そして、目を開けて、傍に生えている木の枝へ向けて手を伸ばし、
「あっ!!(破っ!!)」
再度気合を入れると、手から何かが放たれて木の枝が折れたのであった。
(やはり、別物なんだろうな‥‥。ということは最後に残ったこの気は‥‥)
今度は両手を掲げて、
「あっ!!(破っ!!)」
コポ‥コポポ‥と目の前に水球が浮かぶ。
(魔法で間違い無いな‥。森の中だし、制御出来なかった時を考えて、水をイメージして良かった。)
そして、自らが出した水を飲んだ後、彼は一つの結論を出した。
(ここ‥‥地球じゃないよな。)




