第23話 それぞれの覚悟
(くそっ)
担架で運ばれていくフィウルスを眺めながら、カイルは自分自身に悪態をつく。
(どうして、俺は‥‥こんなにも弱いんだ。)
それは成績のことを言っているわけではない。彼は、自分の友一人を助けることも支えることも出来ない、自身の弱さを嘆いていた。
「見たかよ、あいつ。ボロ雑巾のようになってたぜ?」
「おい、それはいつものことだろう?」
「そうだったな。アハハ。」
クラスメイトの不快な会話が耳に流れてくる。
「オイッ!てめえら笑ってんじゃねえ!」
限界が来た。もう我慢出来ない。
「な、なんだよカイル?あの『底辺』のことなん‥‥」
「『底辺』じゃねえっ!!フィウルスだ!」
「‥‥!」
「てめえら、覚えとけよ。俺の前であいつのことを馬鹿にする奴は、俺がぶっ潰してやる。」
「お、おい、まじか?」
「あいつは、フィウルスは‥‥俺の友達だ。」
クラスメイトに背を向けて、カイルは去って行く。
「うそ?」
「え、あのカイルと?」
「なんでよりにもよって‥‥」
(もう、限界だ。見てるだけなんて出来ねえ。)
カイルは覚悟を決めた。
その瞬間、唐突に周りの景色が違うものになる。
「な、なんだ!?ここは?」
それは真っ白な空間。先ほど歩いていた場所とは違って、どこを見渡しても何もない。
『ここはヌシの精神と、ワシの神域を繋げた空間だ。』
誰もいない。なのに、頭に直接響いてくる声にカイルは困惑する。
『挨拶するのは初めてだな。カイル・バンディッド。ワシは山崩しタイラントだ。』
「‥‥!あんたが。」
『うむ。条件を満たしたからな。友のために周囲が敵となっても闘うとういうその意気、確かに届いた。』
「‥‥強くなれるのか?」
『ヌシがそれを望み、諦めないのであれば。』
「上等。」
『加護の位階は上がった。後はヌシの気持ち次第だ。』
「‥‥感謝します。タイラント様。」
その後の試合でカイルは、無尽蔵な回復力を持つ闘気を乱発し、暴れ回る。
1組に在籍する格上も倒していき、最終的な順位は学年で8位となった。
(こんなにも‥‥ひどいなんて。)
フィウルスの試合を見ていた、シャルルは涙を堪える。
(ダメですわ。わたくしにはまだ‥‥力も権力も足りない。)
姫といえど、わがままを通すことは難しい。それも、周りからよく思われていない、一個人を贔屓することは周囲に混乱をもたらす。
(もっと‥‥。もっと力をつけないと。待っててください、フィウルス。必ずわたくしが‥‥。)
己の友であり、ライバルとなる少年。そんな少年に降りかかる悪意をなくすためには、自らが強くならなければいけない。
シャルルは強く思う。
シャルル姫は、その圧倒的な力をもってして1年生のランキング戦で優勝をする。
だが、優勝を果たした彼女の顔は晴れやかではなかった。それは、これからの苦難を見据えて覚悟を決めた顔であった。




