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『神殺し』の異世界転生    作者: ヤっちゃん
 学園編 入学
26/78

第21話  学年末ランキング戦



時刻は深夜。

寮からこっそり抜け出したフィウルスが向かった先は学園の近くにある山の中である。


「う〜、寒い。」


何着も上着を重ねているのだが、今だに肌を刺すような寒さが襲いかかる。季節は真冬である。


「この辺だよな‥‥。あ、あった。」


そこは木々の生い茂った場所であった。

山の中なのだから、木々が生い茂るのはおかしい事ではないのだが、奇妙なのな木々の枝から()()()()()()()()

木の枝には紐が垂れ下がっており、その先には拳大の石が括り付けられている。それが、そこら中の木の枝に吊るされており、その数およそ数百。


フィウルスはその中心で構えをとる。そして、吊るされている一つの石を手で弾く。

すると、弾かれた石は別の石にぶつかり、また別の角度へと弾かれる。それが連鎖的に繋がり、やがてそこはあちこちで石が弾き合う状態となった。


「ふっ!はっ!」


フィウルスは襲いかかってくる数々の石を避け、弾き、流して捌いていく。

前世の時でもやっていた鍛錬方法である。


「ふっー。こんなもんかな。」


およそ1時間ほど経った頃、ようやく終了したようだ。


「明日は学年末ランキング戦だったよな。今日はもう早く寝ないと。」


そうして、彼はまたこっそりと寮へ戻って行った。







この時期、王立アスタルシア学園には大勢の人々が押し寄せる。その理由は学年末ランキング戦の観戦である。

ランキング戦は半月に一回、つまり夏にも行なっているが、保護者や騎士団関係者などの観戦が出来るのは、冬の終わり頃に開催される学年末の際だけである。

それは、生徒たちが学園での一年の成果を見せる大一番でもある。

ランキング戦は1年生から順に行われ、卒業生は最後となる。


「さあ、お待ちかねの皆様。もう間もなく王立アスタルシア学園、学年末ランキング戦が開催されます!」


司会役の言葉に会場は賑やかな歓声に包まれる。


「あなた‥‥フィルちゃんとサファは大丈夫かしら。」


その観客席の中にはウォルス公爵とマリー夫人の姿もあった。


「うむ、サファは問題はないようだが、フィウルスがな‥‥。聞くところによると、やはり迫害は受けているみたいだし、成績も芳しくない。」


「やっぱり、あの力を使わずになんて無茶なんじゃないのかしら‥‥」


「難しいだろう。だが、フィウルスはそれを承知で臨んだのだ。私達に出来るのはそんな彼を支えてやることだ。」


「‥‥ええ、そうね。」


二人は拳を握りしめて心の中で祈る。

我が子が、苦難の先で目的を達成出来ることを。


「それでは、1年生の試合から行いまーす!第1試合!1年3組マルス・ターナー!そして対するは‥‥」




観客席とは別の場所、主に教員達が集うところでは、


「いや〜、始まりましたな。セコン教頭殿。それにしても、例年以上の観客数ですな。」


「今年は王子と姫に五星のメンバーと、注目を浴びる者たちが勢揃いですからな。」


「おっと、もう1人忘れておりますぞ。例の呪い持ちの『混じり血』のことを。」


「ククッ。そうであったな。アレの役目は既に決めている。きっと、観客の皆様も盛り上がることだろう。」


「ほう。それはいったい、どんな役目ですかな?」


「ふっふっふ。『見せしめ』だよ。」


「グフフ。それはまた、楽しみですな。」


醜い笑顔を浮かべながら、学園の権力者達が会話をする。


(‥‥あまりいい趣味とは言えんのう。)


それを横目にしながら、ベグラス・ナダーク学園長は心の中で彼らを蔑む。


(じゃが、いかに学園長といえども、貴族の凝り固まった思想に逆らうのは‥‥力不足じゃな。)


長年の経験とその知恵、そして能力の高さから学園長の座に着いた彼をもってしても、学園の闇を消し去ることは出来ずにいた。


(なんとも、歯痒いことじゃ。願わくば、あの少年が志半ばで折れぬことを‥‥。)


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