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『神殺し』の異世界転生    作者: ヤっちゃん
 学園編 入学
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第20話  書庫と図書委員


私は国立アスタルシア学園に通う1年1組のメイリィ・ステスファンド。

1組に在籍している者は能力が高いのだが、私は戦闘においては空っきしだ。家も貧乏子爵なので、賄賂で在籍しているわけでもない。

そんな私が1組に在籍しているわけ、それはこの加護の影響なんだろう。


『智聖ファリナスの加護』


それは文献によれば、十倍程の差がある大軍に対しても智略を駆使して勝利へと導いた古代の智将である。

どういうわけか、私は生まれつきこの加護を授かっており、そのおかげか周囲よりも頭の出来が良かった。周りの大人は神童なんて言って持ち上げて来る。


そうして私は将来性を見込まれて、1組に在籍しているのだが、正直つまらない。

座学の内容は一度聞けば頭に入るし、戦闘の技術は私には必要ない。いったい、何して過ごせば良いのだろうか。


そんな時にクラス内で委員会決めが行われていた。

ロクでもないものを押し付けられる前に、何か楽そうなものを‥‥。そう思っていた私は一つの委員会に目が止まる。


図書委員


図書委員。確か書庫の受付をやる委員だったはずだ。

本は‥‥好きだ。とくに昔の英雄物語なんかは何度だって読める。適当に受付を済ませて、後は本を読み放題。しかも、人なんて滅多にこない。これだ。これしか無い。

そして私、メイリィ・ステスファンドは図書委員になった。


入学して半年ほど経った頃だろうか。


ドサッ。

受付の机に本をたくさん置く。

今日の授業は終了したため、この後は好きな物語りを読み過ごすのみ。なんて幸せな日々なんだろう。

だが、そんな日々に少しいつもと違うことが起きた。


コンコン


「‥‥?はい。」


(誰?今まで人が来たことなんてなかったのに。)


「失礼します。」


入ってきたのは白髪の美少女‥‥いや、違う。この子は確か男の子だったはず。噂によると『神呪』を持ってるっていう‥‥


「フィウルスです。ちょっと調べ物をしに‥‥」


そうだった。フィウルス・ハワードくんだ。


「‥‥どうぞ。」


いったい何を調べに来たのか知らないけど、好きにさせよう。そう思い、私は読書に意識を戻す。


数時間後くらいだろうか。


(は〜。読み終わった〜。)


本を読み終わり、伸びをする。この瞬間が好きだ。

ふと例の白髪の少年を見ると、彼は難しそうな分厚い本を何冊も机に置いて本を読んでいる。


(物凄い集中力‥‥。)


雪の様な真っ白な髪。煌めく金の瞳は真剣で力強く開かれている。その姿はとても美しく、まるで有名な画家が描いた、一枚の絵画の様であった。


(‥‥綺麗。)


思わず見惚れてしまっていた。

そんな考えをしていた自分に気づき、頭を振る。

何だろう。何で私は顔が熱くなっているんだろう?

今までだって、容姿に優れる異性は見てきたけど、こんなことには今までならなかったのに。


初めて芽生えた気持ちを、何でも無いと自身で誤魔化す。


それからも毎日、彼はこの書庫に通い続けている。

季節はもう肌寒くなってきた頃だ。


日を追うごとに、本を読むよりも彼を見つめている時間の方が長くなってきている。


(べ、別になんでもない。彼が何を調べているのか気になっているだけだし。)


誰に対して、何の言い訳なのか。


ふと、もう一度彼を見てみると‥‥寝てしまっていた。


(疲れているのかな?)


そ〜っと。

起こしたら悪いから、そ〜っと彼に近づいて本を見てみる。


「神呪に苦しんだ人々」

「加護とは」

「本当にあった神々の呪い」


「‥‥!」


そうだった。彼がいったい何に苦しんでいるのか、知っているはずだった。

生まれてからずっと、神童なんて言われてチヤホヤされていた自分とは違って、この子は周囲から冷たくされながら生きている。


流れそうになる涙をこらえて、彼を見る。

その寝顔は穏やかなもので、とても可愛らしい。せめて、この書庫でのひと時が彼にとって安心出来る時間であって欲しい。

そう思って、彼の頭を撫でる。





「‥‥ん?あ、寝てしまってたのか。」


パチ、と目を覚ましたフィウルス。


「あれ?毛布?いったい‥‥誰が?」 


気付いたら背中に毛布がかけられていたみたいである。


(ここって、受付の人しか見てないけど‥‥)


そう思って見渡すと、隣の席にその人物はいた。


「くー。」


フィウルスと同じように、机に突っ伏して寝ている状態で。


「‥‥はっ。」


と、思っていたら向こうも起きたようである。


「‥‥あ、えっと、毛布。ありがとうございます。」


「‥‥いいの。」


口数の少ない女の子だ。髪は青くて短く、顔つきも整っている。


「‥‥これ。」


そう言って、女の子は一冊の本を差し出す。


「これは?」


「私の‥‥好きな英雄物語の一つ。‥‥息抜きに‥‥良かったら読んで。」


(息抜き‥‥。そうだな、読み疲れて寝てしまってたし、たまにはそういうのもしないと。)


少女の気遣いを嬉しく思うフィウルスは微笑み、


「ありがとう。」


「‥‥うん。」


そして、少女はそっぽを向いて、


「‥‥私、メイリィ。メイリィ・ステスファンド。」


自己紹介をする。


(恥ずかしがり屋なのかな?)


「僕はフィウルス・ハワード。よろしくね、メイリィ。」



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