第19話 フィル・ラヴァーズ
「おめえ、今日も散々にやられていたなあ。体は大丈夫なのか?」
「回復魔法かけてもらったから、大丈夫だよ。毎度のことで申し訳ないけど‥‥。」
「本当に大丈夫ですの?それにしても、複数で襲いかかるなんて‥‥。わたくしから一言申しましょうか?」
「それはやめとけ。余計に悪化する可能性があるし、俺も前に言った時に断られたんだ。」
「ですが、静観できるような状況では‥‥」
「自分の力で何とかしたいんだとよ。」
「うう、それを言われると‥‥。」
時刻は昼食時。
校舎裏の庭には並んで弁当を食べる3人の姿があった。
シャルル、カイル、そしてフィウルスである。
「うん。気持ちは嬉しいけど、シャルル。これは僕の問題だからね。」
「う、わかりましたわ。でも、無理はしないで下さいね?」
いつ頃からかこの3人はいつも集まって、昼食をともにする仲になっていた。
「それにしても、その『神呪』というのは厄介ですわね。」
「解除する方法、まだ見つかんねーんだよな?」
「そうだね‥‥。でも、まだ入学して半年ほどしか経ってないし。もっと調べてみないと。」
「ふむ。それでしたら、書庫とか調べてみてはどうですの?利用する者はほとんどいないらしいですけど、この国有数の書物が保管されているとのことですわ!」
「書庫か‥‥。確かにまだ調べてなかった。ありがとう、シャルル!」
「これぐらいのこと、何でもないですわ!」
今日にでも行ってみよう、とフィウルスは考える。
「そういやあ、この間のランキング戦、アルス様とサファ先輩の聞いたか?」
「え?アルス様とサファおねー‥‥先輩がどうかしたの?」
「あ、そういやおめえの義姉なんだっけな。何でも、アルス様に勝ったらしいぜ。」
アルスとは、アルス・ヴァン・アスタルシアのこと。つまり、シャルルの兄でありこの国の王子である。
「そうですわね。お二人は入学以来のライバルと聞いています。それに最近、サファさんは結界神の加護を授かったみたいで、結界魔法と剣術を織り交ぜての戦法で兄様に打ち勝ったと聞いていますわ。」
「そ、そうなんだ。」
「そりゃすげえな。」
サファとは入学以来、学年が違うこともあって会うことがなかった。
(サファおねーちゃんも頑張ってるみたいだし、俺も頑張らないとな。)
Side サファ
「やあ、サファ。この間は負けたよ。あの様な戦法があったとはね。」
廊下を歩いていると前に立っている男が話しかける。
「これはアルス様、どうもです。お褒めに預かり光栄です。それではこれで失礼いたします。」
「え‥‥っとお。」
素っ気無い。あまりにも素っ気なかった。
仮にもこの国の王子であり、容姿・能力ともに高水準な自分に声をかけられた女の子の反応ではない。
動揺するが、すぐに気を取り直す。
「よ、良かったら今日の昼食一緒にどうだ‥‥」
「結構です。」
即答であった。
「サファさん、良かったのかしら?王子様からのお誘いを断ってしまって‥‥」
「別にいいのよ。それよりあの子の様子はどうなの?」
「会員の一人からの報告によると、やはり周囲からの当たりは厳しいものみたいです。」
「くっ。予想通りね。それなのにこっちからは何もしてあげられないなんて‥‥。」
「心中お察し致します。ただ、その中でも友人と呼べそうな間柄の者が二人いてる模様です。」
「あら、誰かしら?」
「1年2組のカイル・バンディッド、それと1年1組の‥‥シャルル・ヴァン・アスタルシア様です。」
「‥‥まさか姫様がくるとはね。」
「ええ‥‥。ですが、ある意味頼もしい味方になるでしょう。」
「そうね。引き続き陰から見守るようにお願いできるかしら?」
「はい!私達、フィウルス大好き隊にお任せ下さい。」
彼女達はフィウルス大好き隊。この半年、貴族特有の思想があまりない女子達を、サファ自らが集め、フィウルスの可愛さを教授し、洗脳‥‥フィウルスのファンとなった者達だ。
フィウルス大好き隊の活動は陰ながらに行われ、また、会員も徐々に数を増やしていく。




