第18話 カイル・バンディッド
(下らねえ。)
教室を見回してカイルは心の中でそう呟く。
(どいつもこいつも。2組に入れたことに浮かれていやがる。自分の家格や加護の自慢ばっかりしやがって。)
1、2組に在籍出来た場合、卒業後の職は選び放題になるだろう。それだけ優秀ということであり、社会的にも強い立場になれる。
(男ならもっと上を目指せってんだ。)
カイル・バンディッドは、辺境にあるバンディッド男爵家の三男である。
あまり武勇に優れないバンディッド男爵家だが、カイルの将来性には多くの大人達が期待している。
その理由は凄まじく高い闘気を持っていること。
そして、
「山崩し タイラントの加護」
それは稀少で強力な加護であった。
山崩しタイラントは古来から伝わる伝説の男だ。彼の特徴は膨大な闘気と、闘気の「回復力」である。
本によると彼の闘気は使用した後、凄まじい速さで回復するとのこと。その回復力をもって、大技を連発した結果、幾つもの山が崩れたと記されている。
そんなタイラントの加護を持っているカイルの回復力もかなりのものとなっていた。
おそらく彼の実力は五星に次ぐものであろうと、カイル自身も疑っていなかった。だが、結果は2組である。
(どうせ賄賂とか見えない力が働いてるんだろうが、いずれ引きずり落としてやるよ。そして上がってやる、1組に。)
燃え上がる野心を胸の内に留める。
もちろん、入学当初からギラギラしている彼に友好的な間柄のクラスメイトはいなかった。
(‥‥ん?あ〜。変な時間に起きちまった。‥‥小便でも行くか。)
深夜に起きてしまった彼は、寝静まっているルームメイトを起こさないようにしながら部屋を出る。
(五星のメンバー以外に骨のありそうなやつはいねえな〜。)
そんな事を考えながらトイレから出ると、
(ん?あの部屋、まだ明かりがついてるな。)
最も奥の部屋から光が漏れているのを見つける。
(‥‥こんな時間になにやってんだ?)
そ〜っと少し開いてる扉の隙間を覗き込む。そして、その目に映ったのは、
「‥‥ふっ!‥‥くっ!」
トレーニングをしている白髪の少年、フィウルスだった。
(あいつは、確か『神呪』持ちの‥‥フィウルスつったっけ?こんな時間までトレーニングしてるのかよ‥‥。)
「‥‥ぐっ!?‥‥ハァっ!ハァっ!」
(ナヨナヨしてそうなヤツだと、思ってたが‥‥)
カイルは扉の隙間から離れ、静かに自室へと戻って行く。
(‥‥いるじゃねえか。骨のありそうなヤツ。)
ニヤリ、と笑う。
実力的には比べるまでもない程の差があるはずだが、彼は確信していた。いつかフィウルスが上にまで上り詰めて来る事を。




