第14話 1年6組
体が重い。
「へへっ。どうした?『底辺』!もっと頑張らないと当たっちまうぞ!?」
相手の攻撃は見える。見えるのに、体が追いついていない。
「オラァッ!!」
「うぐっ!?」
大したことない一撃のはずだ。なのに想像以上に痛い。
「‥‥ぐ、くそっ」
隙を見てなんとか一撃を返す。だが、力が足りない。
「痛くねーんだよっ!!」
そのまま強引に押し出される。息が苦しい。スタミナも無くなってきた。
「ファイアボール!」
火魔法の初歩的な技。レベル1で覚えられるような、そんな魔法だが、
「うぐああああっ」
それだけでこちらの体力は0に持っていかれたあげくに、身体中に火傷がつく。
「それまでっ!」
審判役の教師が止めたことで、ようやく対人訓練は終了した。
「救護係!フィウルスを直ちに治療室へ!」
身体中に火傷を負ったフィウルスは立ち上がれず、担架に乗せられてそのまま運ばれた。
「ほんっと弱ーな。あいつ。」
「そのくせ武器も使わねえんだもんな。」
そんなフィウルスを見て、先ほどまで戦っていた生徒と他の生徒同士が嘲笑う。
「失礼します。救護係です。お願いしまーす。」
治療室に運ばれたフィウルスは、患者用のベッドに乗せられる。呼吸は荒く、意識も朦朧とした状態であるが、周りのものは特に気にしない。
「あら、またこの子なのね。」
白衣を着た女性が近づき様子を見る。眼鏡をかけており、青い髪を短く切り揃えている。
「回復魔法ジオ・ヒール」
女性が魔法を発動すると、フィウルスの身体が光で包まれ、怪我が治っていく。
「う、あ‥‥」
「大丈夫かい?まだ痛むところはあるかね?」
「だ、大丈夫です。ありがとうございます。」
「あなた、入学して数日でもう何回目なんだろうね。あまり無理をするんじゃないよ。」
「は、はい。」
その後、身体の状態をチェックされ問題がなかったフィウルスは治療室から出ていく。
(これほどとは‥‥。まるで歯が立たない。)
悔しい。
そんな感情を胸に抱く。
(もっと。もっと強くならないと。)
入学式から数日を経て、予想通りにフィウルスは貴族達からぞんざいな扱いを受けている。
周りからは『底辺』と蔑まれ、対人訓練においても明らかにオーバーな攻撃で追い詰めてくる。そして、そんな状況を殆どの教師は黙認している。
各学年のクラスは能力の高さで割り振られており、フィウルスが在籍しているクラスは1年6組。1組が最も能力が高いとされ、6組は最も低いとされている。
そんな1年6組の中でもフィウルスは最下位だ。
(今のままじゃダメだ。なにか‥‥なにか手を考えないと。)
そうやって考え事に没頭しているフィウルスは、歩いてる最中、横から出された足に引っかかって転倒する。
「うわっ!?」
「ひひひっ!」
(気にするな!こんなちょっかいにいちいち相手していられない。)
彼を取り囲む環境は、大いに悪いようだった。
昼休み。
フィウルスは食堂で買った弁当を持って、校舎裏の庭へ向かう。
食堂で食べても教室にいても、周りからいじめが襲ってくるからである。
「はー。」
ため息を吐きながら、弁当を口へ運ぶ。
(これだけ能力値が低いと、戦闘中にすぐに底をつく。どうすればいいのかな?上限を伸ばせないのなら‥‥圧縮して密度を‥‥)
「あら、どうやら先客がいらしたみたいですわね。」
「え?」
声が聞こえた。ここはあまり人が来ないはずだ。一体誰が?
声がした方向を見る。するとそこに居たのは、長い金髪に少しウェーブがかかっており、赤い瞳はぱっちりとした美少女。
「ご機嫌よう。ご一緒してよろしいですか?」
シャルル姫がそこにいた。




