第13話 入学式
「フィル。もうすぐで学園よ。」
中西ヨーロッパのような街中を1台の馬車が走る。
その中に乗っているのは、フィウルスとサファ、護衛のジード達とアラナンである。
「学園に着いて少ししたら、入学式だからね。多分先生方が案内してくれると思うわ。」
この後の流れを簡単に説明してくれるサファ。ハワード家を出るときは制服姿のフィウルスを見て、何故か鼻血を出していたが、ようやく落ち着いたらしい。
アスタルシア学園は10年制である。今年入学するフィウルスは1年生。サファは3年生である。
この世界の成人は15歳であり、学園の卒業とともに成人として迎えられるようになっている。
1〜3年生を初等部。4〜6年生を中等部。7〜10年生を高等部として分けている。
「基本的に他学年同士は関わり合いがあまり無いわ。だから、何かあっても私が助けられることは少ないと思う。それに、貴族の思想的にも大々的にフィルを守るようなことは‥‥。」
「その辺りのことはお父様からも聞いてたから、覚悟の上だよ。大丈夫、心配してくれてありがとうサファおねーちゃん。」
「う、うん。でも、フィルの世代はすごいのが多いから、ちょっと心配なの。」
「そうなの?」
「ええ。周りからは五星の世代なんて呼ばれて騒がれているの。しかも、その中には王族も入っているし。まあ、王族は私の学年にもいるんだけど‥‥」
「五星ってことは‥‥5人いるの?」
「そうよ。それぞれ有名な貴族の子で、強大な加護を授かっているらしいの。多分、他国からもマークされる世代になると思うわ。」
「教えてくれてありがとう、サファおねーちゃん。」
「これくらいのことは全然いいわよ。フィル、本当に辛くなったりしたら私に言ってね。私も影ながらあなたを支えるから。」
「サファおねーちゃんも無理したらダメだよ?」
「ええ。そろそろ着くわね。それじゃ、フィル。お互いに頑張りましょうね。」
装飾が施された重厚な門が開かれると、煌びやかな校舎が見えて来た。
(これが学園。流石、王国が建てただけに豪華だな‥‥。)
「新1年生。フィウルス・ハワード、こちらへ来なさい。」
眼鏡をかけた気の強そうな女教師に呼ばれて、フィウルスはそれについていく。
「これから入学式の会場に向かいます。席に着いたら、静粛にしていなさい。国王様からのお言葉もありますので。」
「わかりました。」
「フンッ。教育だけはしっかりされているみたいね。」
いきなりこれである。しかも教師から。おそらく事前にフィウルスの情報は行き届いてるのであろう。
「では、そこの席に座ってじっとしていなさ。起立などの号令には従うこと。」
席に着いてしばらくすると、入学式が始まった。
学園の偉いだろう人が長々とした話が終わると、
「続きまして、新入生代表による入学宣誓。新入生代表、シャルル・ヴァン・アスタルシア様。」
「はい。」
凛とした声が響く。席を立ち舞台に向かうのは、透き通るような長く金髪にウェーブのかかった美少女だった。
(あの人が王族なんだろうな。)
事前にサファから聞いていた情報とアスタルシアとい名から、フィウルスはそう推測する。
「本日、我々は栄えある国立アスタルシア学園へ入学することとなりました。学園での規律を守り、己を律し、ここに集う仲間達と切磋琢磨して、これからのアスタルシア国の未来を切り開く者として成長することをここに誓います。」
宣誓の終了とともに式場に拍手の音が響き渡る。
「ありがとうございました。続きまして、国王陛下からのお言葉です。」
続いて出て来たのは、同じように金髪を生やした男性だ。
がっしりとした体格をしており、煌びやかな剣を腰に差している。新入生全体を見渡すその瞳は赤く、この距離でも威圧を感じられる。
(この王様。‥‥とんでもなく強いな。)
威厳があった。そこに王としての威厳が。
「新入生の諸君。このアスタルシア学園への入学を心よりお祝いする。ここでの日々を経て、いずれ他国へも名を轟かせるような者が現れることを心待ちにしている。」
短い言葉だったが、それは重く響き渡った。
「寮部屋は一人だけか‥‥」
入学式が終わった後、新入生は各々の寮部屋へと案内されて今日は終わった。
尚、寮部屋は本来なら二人部屋なのだが、貴族独特の思想から同じ部屋にする訳にはいかないという学園側の措置である。
(正直、不安だな。今日見た中でもとんでもなく強そうなヤツはたくさんいた。そいつらに『気』を使わずに戦わないといけないのか‥‥。)
布団の中で目を閉じ、今日起こった出来事を反芻する。
(だけど、やるしかない。必ず『神呪』を解いてやる!)
苦難の学園生活が始まる。




