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『神殺し』の異世界転生    作者: ヤっちゃん
幼年期
17/78

幕間  Side サファ



街中で暗殺されるところをフィウルスから守られた日の夜、サファは不思議な夢を見ていた。


そこは真っ白な空間だった。

右を見ても、左を見ても何もない。もちろん上も。自分が立っている真っ白な床だけが地平線の先まで続いている。


(ここは、一体‥‥)


『ようやく()()()ましたね。』


「え?だ、だれ!?」


怯える。それも仕方ない。さっきまで寝ていたはずが、気づけば知らない場所にいるし、得体の知れない声が響き渡るのだから。


『落ち着きなさい、人の子よ。ここにあなたを害する者の存在はない。』


優しそうな女の人の声だ。少し警戒を解きながら、サファはそう思った。


「ここはどこ?あなたは誰なの?」


『ここはあなたの深層心理と私の神域を繋げた場所。現実世界のあなたは今も寝室で寝ているわよ。』


「神域って‥‥」


『ええ。私の名はアウレール。結界神って大そうな肩書のね。』


「し、失礼しましたあああっ!!!」


予想外の相手に、ほぼ反射的に深く腰を曲げる。知らなかったとはいえ、神相手にする態度ではなかった。


(け、結界神アウレールってお母様に加護を授けたお方じゃないの!!?な、なんで突然?)


『ふふ。そんなに畏まらなくてもいいのに。さっきまでの態度で接してくれた方が、私は好きよ?』


「い、いえ。そういうわけには。」


『もう、真面目なんだから。マリー達の教育がしっかり行き届いてるってことなんだろうけど‥‥。』


なんてフレンドリーな神なんだろうか。


「あ、あの、どういったご用件で‥‥」


『ああ。そうそう!サファちゃん。あなたに加護を与えようと思ってね。』


「ほ、ほんとですか?」


『ええ。()()はついさっき満たしたからね。』


「やった!あ‥‥し、失礼しました。」


『ふふ。可愛いらしいわね。』


「あ、あの。条件っていうのは何だったのか、聞いてもいいですか?」


サファはこれまでも母親と同じように、アウレールの加護を授かるために何度も結界魔法の練習をしていた。しかし、一向に叶わなかったのだ。それなのにここにきて突然、条件を満たしたと告げられたのだ。気にならないはずがない。


『他の人に漏らさないのなら、いいわよ。そうね、主には‥‥その人が善性の心の持ち主であること。結界魔法に高い適正があること。それと、守りたい大切な者がいることよ。』


「守りたい大切な者‥‥」


前者の二つはまだわかる。神によってはその人の心の在り方を大事にする者もいる。

結界魔法の適正も、結界神の加護を授かるために必要なのも予想できることだ。


『ふふ。意外だった?でも、最後のこれだけは譲れないの。私が人間だったころも守りたい人はいたのよ?』


「そ、そうだったんですか。」


(わ、私の守りたい大切な人‥‥ついさっき?それって‥‥!)


『可愛らしいわね〜()。サファちゃんはああいうのが好みなんだ〜。』


「‥‥!」


顔が一気に熱くなる。見抜かれている。それは自分でも気づかないようにしていた、淡い恋心。

だが、神を欺くことは出来なかった。


『最初の出会いも運命的だったわよね〜。可愛らしい顔をしてるから、弟として可愛がることで何とか誤魔化していたみたいだけど、二回目は流石にとどめになっちゃったかな〜?』


「あ、あわわわわ」


恥ずかしい。この思いを知られてしまったのは、ひどく恥ずかしい。これは死にたくなる。


頭を抱えてうずくますサファに、これ以上()()()()のは流石に可哀想だと思ったのか、アウレールは話題を変える。


『‥‥結界魔法は強力な分、発動や維持が難しいからね。その辺はマリーに教わりなさい。』


「は、はい。わかりました。」


『じゃあ、そろそろ時間ね。サファちゃん、私が出来るのはあくまで手助け。その力で大切なものを守りきれるかは、あなた次第よ。』


「はい!ありがとうございました!」


サファは深くお辞儀をする。


(やっと、やっとこれで結界魔法を使うことが出来る!これからは、私が守る!)


その決意をするとともに、サファの意識は覚醒を始める。


「ん、朝?」


見慣れた寝室。いつもより早い起床時間だが、サファの意識ははっきりしている。


「ステータス」


まずは自分のステータスを確認する。先ほどの夢が本物ならば、あるはずだと確信して。


「‥‥あった。結界神アウレールの加護。」


部屋を飛び出す。駆け出して向かった先は、



「お母様!」


「ん〜?どうしたの?サファ〜?」


まだ少し眠たそうにしているマリー夫人だった。


「加護を授かったの。‥‥結界神アウレール様の。」


「あら‥‥。そう。サファにも出来たのね。」


何がとは言わないが、マリー夫人とサファは分かっている。お互いに同じ加護をもらっているのだから。


「なら、これからは特に厳しい訓練が待っているわよ〜。覚悟しておいてね。」


「うん!私だって、頑張るんだから!」




後に「結界剣術のサファ」として世界中に名を轟かせる伝説の、誕生の瞬間であった。

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