第10話 教会
「今日はフィウルスを教会に連れて行こうと思う。」
「え?」
朝ごはんを食べている最中、ウォルス公爵がそう切り出す。
「お父様、フィルを教会に預ける気なの?」
サファの目に不安が浮かぶが、
「いや、そうじゃない。一度フィウルスのステータスをしっかりと見て登録しておこうと思ってな。」
ステータスは『鑑定』持ち以外の場合、自身でしか見られない。教会や特別な施設には『鑑定』持ちを配属しており、正式なステータスを登録することが出来る。登録していない場合、例えば特別なスキルを持っていると本人が言っても信じてもらえないのである。その本人以外にステータスを確認していないからだ。
そこため、そういった施設で『鑑定』してもらい登録されたステータスは、公式に扱われるようになる。
「そうね。それに、フィルちゃんもまだこの街をちゃんと見てないし、いい機会かもしれないわね。」
「それじゃ、鑑定が終わったらお買い物にいきましょう!」
「はい!わかりました!」
「もう、フィル!姉弟なんだから、敬語はなしだってばー!」
「ご、ごめん。サファおねーちゃん。」
街へは馬車で1時間程度で着く。執事長のアラナンとメイドのミサとメル、そしてジード達が護衛として一緒に来ていた。
「フィウルス様、馬車なので少し揺れますが気分は大丈夫ですか?」
アラナンの気遣いに、大丈夫と答えるフィウルス。
「しかし、あのスピードで動ける坊主‥‥じゃなかった。フィル様なら、すげえスキルとか加護を授かってるんだろうなー!!」
「そうですね。わたくしも気になります。」
山奥での出来事を直接見ていたジード達とミサがそう推測するが、
「いや、多分大したものはないですよ。」
「ほんとかな〜?」
正直に答えるが、この人達は確実に何か持ってると確信している様子である。
「街でお買い物‥‥。フィウルス様にアレを着せたり、コレを着せたり‥‥ブツブツ‥‥。」
「メル〜?私も一緒に混ぜてくれないかしら〜?」
「はい。奥様。勿論でございます。」
「わ、わたしも!フヒヒ、可愛いフィルのあんな姿やこんな姿‥‥。」
メイドのメルとマリー夫人とサファの3人は何か企んでいる様子だが、フィウルスは聞こえていないフリをする。
(ああ。また着せ替え人形させられるのか‥‥)
死んだ魚のような目をして馬車の窓から遠くを見つめる。
そうこうしている間に馬車は街へと辿り着く。
「それじゃ、先に教会の方からいこうか。」
「はい!」
「お父様、これから行く教会では何を信仰されているのですか?」
フィウルスがウォルス公爵に尋ねると、
「うむ。世界に信仰はそれぞれたくさんあるが、慈愛の女神アイシルを信仰している所だ。」
「神様はたくさんいるのでしょうか?」
「ああ。そして、加護をもらってる者も多くいる。私は剣神ダグリューの加護を授かってるし、マリーは結界神アウレールの加護を授かっている。」
「そうだったんですか!どうやってその加護を授かるんですか?」
「ううむ。これについてはあまり判明してないんだ。ある条件を満たしたら授かることもあるし、何もしていないのに突然ステータスに加護がのっていたりするんだ。今のところ能力かもしくは、気まぐれで神に見初められたら授かるという曖昧な理論が出ている。ただ、同じ加護にも優劣はあるらしい。その神に気に入られるほど、加護の能力は強力になる。特に神の姿を見たという者は異常な程にな。」
「神の姿‥‥」
「ああ。夢の中で対面したらしいぞ。私は夢の中で声を聞いたことはあるが、まだ姿を見ることは出来ていないな。」
「なんていうか、そんなに人々へ干渉されるんですね。もっとこう、見守る程度の感じかと思ってました。」
「それに関しては、元は人間だった神にその傾向が多いらしい。」
「え?元々は人間だったんですか?」
「ああ。最初から神の者もいるが、元は人間だった神もたくさんいる。人間だった頃に伝説を残す程に強くなった者は、人としての位階を超えて神になるらしい。そうして、人々へ己の加護を授けるんだ。」
「なるほど。わかりました。ありがとうございます!」
加護や神について聞いている内に、教会へと辿り着いた。
地球にあるのと似たような教会で、厳かな装飾が施されている。
「お久しぶりです。ウォルス・ハワード公爵様。本日はどのようなご用件でしょうか?」
扉を開けて入ると、この教会の責任者らしい人がウォルス公爵に挨拶をする。
「どうも。今日はこの子のステータスを鑑定してもらいたいんだ。」
「そのお方ですか?わかりました。奥の鑑定室までお願いします。」
フィウルスは促されるまま鑑定室へ入る。
「お待たせしました。この教会の鑑定士のビットと申します。」
数分後、ビットという男が入ってきて会釈をする。
「よろしくお願いします。」
「はい。それでは鑑定させてもらいます。」
《ステータス》
名前 フィウルス
性別 男
年齢 5歳
種族 人間
体力 50/50
闘気力 50/50
魔力 50/50
スキル
・闘気術 Lv3
・体術 L v10
魔法
・水魔法 L v3
・火魔法 L v3
・土魔法 L v3
・風魔法 L v3
・雷魔法 L v3
・光魔法 L v3
・闇魔法 L v3
・回復魔法 L v1
・時空間魔法 L v1
加護
なし
???
・「神呪」
能力に制限・抑制される。
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「え?お、男?あ、いやなんでもありません。」
(女の子だと思ってたんだな‥‥。別にもういいけど。)
「そ、それよりも体力や魔力の値が低いと思ったら、し、神呪‥‥」
「その神呪を解除する方法はわかりますか?」
「いえ、残念ながら私にはわかりません。申し訳ございません。」
「そうですか。わかりました。」
「そ、それではこちらのステータスを公式として登録させていただきます。」
「はい。お願いします。」
(気力や開門のことは鑑定されなかったな。それに称号の欄もなかった。『鑑定』にも見れないものがあるのか、それとも個人差で見れる量が変わるのかな。)
部屋を出てウォルス公爵達と合流する。
「おかえり。『気』に関しては鑑定されなかったみたいだな。」
既に鑑定内容を聞いていたみたいだ。
「はい。嘘とかじゃないんですけど‥‥」
「大丈夫。フィウルスのことは信じてるよ。それに、鑑定には個人の力量差もあるからね。」
やはり個人差はあるようだった。
「ステータスの項目について質問してもいいですか?」
「ああ。何が聞きたいんだ?」
「体力とはなんですか?」
「体力とは、体を覆う見えない盾のなようなものだ。これの値が高いほど、敵からの攻撃を軽減できる。しかし、攻撃を受けるたびに数値が減っていき、0になると軽減できなくなる。これを体力の壁とみんな言ってるな。あと、減った体力は時間とともに回復する。」
「そうだったんですね。それじゃ、相手の体力を0にしないと倒せないのですか?」
「いいや。必ずしも0にする必要はない。体力の壁は生物の肉体には適応されないからな。君の格闘術やブラッディーベアーの爪だと体力の壁を貫通してダメージを与えることが出来る。対して、魔術や武器に対しては働く。」
「わかりました。あと、称号ってなんですか?」
「それはその人を表す二つ名のようなものだな。別段、能力の増減には関係がないと言われている。」
「ありがとうございます。」
(生身の攻撃なら、体力差に関係なくダメージを通せるのか。それならなんとかなりそうだ。)
「フィルー!終わったのでしょうー!?はやくお買い物に行くわよー!!」
ウォルス公爵と話し込んでいたら、サファが叫びながら駆けてきた。
「ふふ。行ってくると良い。それに、フィウルスも欲しいものがあったら買いなさい。」
「あ、ありがとうございます!」
「さ!行くわよ!フィル!」
「あ、ちょ、サファおねーちゃん!」
サファに手を引っ張られながら、フィウルスは街へと駆け出した。




