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『神殺し』の異世界転生    作者: ヤっちゃん
幼年期
13/78

第9話  明かす秘密


「はあっ!!」


掛け声とともに男は剣を振り抜く。常人では目に見えない速さの剣は、その男が只者ではないという証左である一閃であった。


「シッ!!」


しかし、そんな剣技を危なげなく避ける5歳程度の少年は、さらに異様であった。


「‥‥ほう。今のを避けるか、フィウルス。」


「避けるだけなら、なんとか。」


「今の一撃を避けられる者など、そういないぞ?」


そう言って、男と少年はその場で腰を下ろす。


フィウルスがハワード公爵家に来てから1週間が経ち、朝食前にウォルス公爵と模擬戦をするようになった。


「しかし不思議だな。君から感じる魔力や闘気は微々たるもの。なのに何故それほどの強さなんだ?」


(あー、やっぱり不審がるよな。どうしようか?誤魔化す手もあるけど、これから一緒に長く過ごしていく相手だし‥‥。これだけ良くしてくれてるし、隠し事は、したくないなあ。)


思い悩んだフィウルスは、決意する。


「実は、『気』を使ってるんです。」


「『気』?‥‥それは闘気ではないのか?」


「はい。魔力や闘気とは違う、別の力です。」


「驚いた。そんなものがあるのか?フィウルス、それをどうやって身につけたのだ?」


「まずはかなりキツいトレーニングをします。そして、トレーニングが終わったら、瞑想して自身の気を掴みます。そうやって気を掴んだ後は、トレーニングによって生まれるはずだった筋肉、力を気へと変換させることで、気を高める事が出来ます。」


「なるほど。だから、小柄で細身な体をしていても、それ以上の力や速さが出せるということか。その方法は、誰かに教わったのか?」


「いいえ。実は‥‥僕には前世の記憶があるんです。」


フィウルスは俯きながら答える。


(隠し事はしたくなかったけど、気味悪がられるかな?)


胸中には不安が溜まって、張り裂けそうだ。そんなフィウルスの気持ちとは裏腹に、


「そうか。納得がいった。フィウルスは前世持ちなんだな。」


「え?‥‥前世持ち?」


「ああ。ごく稀に、前世の記憶を持っている人がいるんだ。フィウルスもその内の一人だろう。しかし、そんな記憶が残っていたとは。そのおかげで、あの山奥でも生き抜くことが出来たのだな。」


(そうなんだ。この世界では、たまにあることなんだ。流石に違う世界の記憶を持ってる人はいないだろうけど。)


「ところで、その『気』は私にも扱えるのか?」


「そうですね‥。一度でも自身の気を掴めたら、なんとかなると思います。」


そう言ってフィウルスは、気についてや鍛錬の仕方をウォルス公爵に教える。


「ほう。確かに衰えることがないのなら、無駄に筋肉をつけるよりもよっぽど良いな。しかし、変換出来る量はごく少量なのか。」


「そうです。毎日コツコツと溜めていかないといけません。」


「わかった。私もやってみる。この年になっても、まだまだ強くなれる可能性が見えるというのは、中々嬉しいことだな。」


「お父様ー!フィルー!朝ごはんですよー!!」


屋敷の方からサファが叫びながら駆け寄ってきた。


「おお。もう時間か。ありがとうな、フィウルス。」


「いえ。これくらいのことは。」





食卓にはパンとサラダとハムのようなお肉、野菜のスープが並んでいる。


「お、おいしそう。」


知らず涎が垂れる。山で虫や魔獣ばかり食べてきたこの男には、食への貪欲さがかなり上がっていた。


「フィル!おねーちゃんが食べさせてあげる!」


「おじょ‥‥サファおねーちゃん、ありがとう!」


フィウルスがサファのことをお嬢様と呼ぶと何故かむくれる。この1週間、頑なにサファおねーちゃんと呼ばせるのだ。


「ウヘヘ‥‥。あ、はい!あーん!」


「あーん!」


「あ〜〜〜もう!!かんわいい!ほんとに天使!私の天使〜!!」


小声でサファが何か呟く。その顔は貴族の淑女がしてはいけない顔で、涎が垂れてる。


(あれ?サファおねーちゃんも涎がでそうになってる。もしかして、お腹すいてるけど食べさせてくれるために我慢してのかな?それなら‥‥)


それに気づくが、良い方向に盛大な勘違いをしたこの男は、


「はい!サファおねーちゃんも、あーん!」


「‥っ!!」


まさかのあーん返しである。天使どころか悪魔の所業だった。


「ちょ、ちょっと、おトイレにいってきますですわ!(は、鼻血が‥‥。はやくなんとか‥‥)」


(あれ?大丈夫かなー?)


まさに悪魔の所業である。


そんな姉弟の微笑ましいやりとりを、胸中で複雑な思いを抱きながら見守る両親。主に姉が危ない方向に向かいそうなのが理由だか。


「ところで、フィウルスは魔力や闘気を鍛えることはしないのか?」


「そうね。気に関しては夫からさっき聞いたけど、体力や魔力に闘気、どれも少ないわね。」


「えっと、それが‥‥。鍛えてはいるんですけど、全然でして。実は、ステータスにあるものが理由かと思うんですけど‥‥。」


「何かあるのか?」


「はい。これが捨てられた理由でもあると思います。『神呪』です。」


「‥‥あなた。」


「‥‥まさか。」


二人の顔が驚きの表情になる。


(やっぱり、良くないものみたいだな‥‥。)


「‥‥フィウルス。先程の前世持ちでも稀有な存在だが、その『神呪』を持っている人はさらに少ない。故に全てが解明されている訳ではないが、それを持っている人間は魔力や闘気などの能力が大幅に低下する。そして、そんなデメリットに反して良い点は全くないと言われている。だから、それを持っている者は、一部の人からは‥‥忌避されるようになる。」


「やっぱり、そうなんですね‥‥。」


「勿論、私達はそんなことで見放すようなことはしないし、フィウルスは大切な家族だ!それに、そんな状況でもフィウルスは驚くような強さを身につけている。落ち込む必要はない!」


「そうよ。あなたは私たちの大事な息子よ。」


公爵夫妻の優しい愛情に、気づいたら涙が流れていた。


「あ、ありがとうございます。気に関しては影響を受けないみたいですけど。僕はいつかこの能力抑圧を解除できる方法を見つけたいと思います。」


「ああ、君ならきっと出来る。私も協力するし、他の伝手を使って調べてみよう。」




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