プロローグ
初投稿です。
空いてる時間に執筆していき、ゆっくり投稿していこうと思います。
拙い文章ですが、どうぞよろしくお願いします。
暗雲とした空に、荒れ果てた大地。所々で雷が鳴り響き、木々は枯れ果てている。そんな、何も無い荒野を1匹の黒い狼が駆けていた。
美しい漆黒の毛で覆われた体躯は数十メートルはあり、額には見事な一本角が生えている。
獣は、ただひたすらに駆ける。自身の体から滴り落ちる血を無視しながら。
そして、そんな獣を後方から追いかける複数の影があった。
(くそっ。あいつら、絶対に許しはせぬ!約定を破り、我が主神を裏切るなど‥‥。)
すると、後方の影達が獣に向けて手を突き出し、火球、岩塊、氷柱、雷の魔法をそれぞれ一斉に放った。
「ぐああああああ!!!」
それらの魔法が直撃した獣は、ついに足を止め、その場に倒れ伏す。
「手間をかけさせやがって。まさか自分が死ぬ寸前に、自身の『権能』を配下である神獣に譲渡するとはな。」
「だか、ようやく追い詰めた。これであの力は我々に‥‥。」
「おい!神狼ゼウル!おめえはもう終わりだ!その『権能』を渡してくれりゃ、すぐにご主人様の元へ案内してやるぞ?」
神獣は体力が限界なのか、起き上がる様子の無いまま、影達に向かって言った。
「だ‥まれ。我は主神様から‥‥最期の使命を受けた‥のだ。貴様らなんぞに‥‥渡してなるものかっ!」
その瞬間、神獣を中心に魔法陣が描かれ、神獣の体を眩い光が包み込む。
「こ、これは‥‥。まさか!?転生魔法か!?」
(覚悟は決めた。主神様の力を守るためにも、この手段を使うしかない!)
「くそっ!神縛の鎖!!」
影の一人から放たれた鎖が、神獣の体に巻きつく。
(こ、これは神縛の鎖!?いかぬ!このままでは、魂の力が封印されて、転生後に力が‥‥)
キイン!
神獣の体が強い光を放った直後、先程までいた場所に神獣の姿は消えていた。
「あの野郎‥‥。まさか人界に転生して逃れるとはな。」
「だが、封印は間に合った。これで転生しても力は使えない。いずれ息絶えて戻ってくるだろう。その時にあの『権能』を回収するとしよう。」
そう言い合い、影達は荒野から姿を消した。
神界から人界へ。
神獣の魂は、次の転生先へ向かっていた。
(まさか、寸前で封印の神器を使われるとは‥‥。仕方ない。人界で人間どもを食い散らかして、力をつけるしかない。いつか、奴らの喉を噛みちぎるためにも。主神様を‥‥あのお優しい主神様を殺めた、奴らを。)
憎悪の念を放ちながら、やがて神獣の意識は眠りについた。
その後、神獣はおろか、神々でさえも予想出来なかった事態が起こる。
一つの魂が、世界同士の隔たりの壁を突き破ってきたのであった。その魂は、神獣の魂と衝突して混ざり合った後、転生先へと向かうのであった。