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平穏な日

「よっし、あがりー!」

「むうううう…!また、負けた!」


今日は特にすることもないので、わたしは部屋でヒナタを呼び出してカードゲームにいそしんでいた。わたしの部屋は元は物置だったから少し手狭なので、立った時見上げないといけないほど身長の高いヒナタは、座っていても窮屈そうだけど、それでもわたしと遊べるのが嬉しいと言わんばかりに花をほわほわと飛ばしている。わたしの1番の親友が今日も可愛い。


「うー…。かなた、強すぎる…」

「年季が違うからね。わたし前世でもこのゲームやってたし。でもわたし、これでも弱い方だったんだよ?顔に出やすいって言われてたし」

「でも、かなたは強いよ。さっきから、ぼく青年全然勝てない」

「ヒナタはわかりやす過ぎるからなぁ…」


純粋という言葉を体現していると言っても過言ではないほど無垢なヒナタは、考えてることが雰囲気やら顔にすぐ出る。だからどのカードがジョーカーなのかすぐわかってしまうのだ。


「次違うゲームでもする?神経衰弱とかどう?」

「?しんけー…」

「裏返したカードを一枚めくって、めくったカードの位置を覚えて同じ数のカードとペアを作るんだよ。で、ペアの数が多かった方が勝ちってゲーム」

「難しそう…」

「習うより慣れろって言うし、まずはやってみようよ。やってたらコツとかつかめると思うよ?」

「うん!かなたと、遊ぶ!」

「ぐふっ…」

「かなた!?」


ヒナタの満面の笑みを正面からくらって、わたしは心臓のあたりを押さえた。


(これが母性ってやつか…)


わたしは心配そうにおろおろするヒナタを落ち着かせ、またゲームを始めた。


「あら、楽しそうね」

「おばあちゃん」

「ひまり!」

「ふふ、今日もヒナくんは嬉しそうね」

「うん!かなたと遊ぶの楽しい!」


わたしはダメージをごまかすようにわざとらしく咳払いをしてから口を開いた。


「それで、おばあちゃんどうしたの?なんかわたしに用事あったんじゃないの?」

「これから出かけようと思って。少し町に行ってお買い物してくるわ」

「え、一人で大丈夫?わたしもついていくよ。荷物持ちする」

「大丈夫よ、かなちゃんはヒナくんと遊んでて」

「そういうわけにはいかないって。ねぇ、ヒナタ」

「うん。ぼくも、荷物持つ!」

「あら、ヒナくんも?」

「………だめ?」

「気持ちは嬉しいわ。でも本当に二人で遊んでて良いのよ?」

「ひまりには、かなたがお世話になってる。だから、ぼくもひまりの手伝いする!」

「あらまぁ…」


おばあちゃんはやる気を見せるヒナタを見て、困ったように笑った。


「ヒナくんは良い子ね」

「わたしの自慢の友達だからね」

「ぼく、えらい?」

「ええ、すごく偉いわ。そこまで言われたらお願いしようかしら。二人とも、ついてきてくれる?」

「「うん!」」


わたしとヒナタは身仕度を整えて、おばあちゃんとともに家を出た。




「ヒナタ」

「?」


おばあちゃんとともに家を出たわたしたちは、並んで買い物をしていたのだが、人でごった返す市場を見て、わたしは小さめのパーカーのフードを被るヒナタに手を差し出した。


「はぐれないように手を繋ごう」

「…」

「ヒナタ?」

「…ぼくが握って、本当に大丈夫?かなた潰れたりしない?」

「しないしない。はい」


わたしから手を握ると、ヒナタも恐る恐る握り返した。あまりにも優しく握ってくるものだから、わたしは思わず吹き出した。


「あはは!ヒナタ、びびりすぎだって!」

「だ、だってかなたが潰れたら嫌だから…」

「そう簡単には潰れないから大丈夫だって」

「かなちゃん、私も手握って良い?」

「もちろん!」


わたしは左をおばあちゃん、右をヒナタに挟まれ、にこにこしながら進む。


「おや、かなたちゃん嬉しそうだな!」

「うん!だって、大好きな人達と一緒だからね!」


行きつけの店のおっちゃんに声をかけられ、わたしは満面の笑みでそう返した。ヒナタはどこか照れくさそうに、おばあちゃんはあらあらと嬉しそうに笑っている。


「ふぅ、いっぱいおまけしてもらったわね」

「ねー。なんか今日声かけられること多かったね?」


わたしが首を傾げていると、二人は顔を見合わせた。


「どうしたの?」

「いえ、なんでもないわ。…ふふっ、こんな日がずっと続くと良いわね?」

「うん!」


わたしは元気良く返事をした。


(…そのためにも)


わたしは絶対に、ベルナールさんとリュウを助けた青年だとバレたらいけないんだ。


(絶対口を滑らせないようにしよう…!)


わたしは改めてそう決意した。

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