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魔法騎士団本部へ

「うわー…」


わたしたちがメルトスパイダーの襲撃に遭ってから一週間が経った。わたしはリュウとベルナールさんに頼まれ、魔法騎士団の本部に来ていた。馬車を降りると、そこには巨大で立派な建物が建っていた。


「ば、場違い感半端ないー…」

「そんなことありませんよ、かなた様」

「いやだって場違いにも程があるでしょー…。こんなことになるなら、学校の制服捨てない方が良かったなぁ」


言うのを忘れていたけど、この世界では十二歳で義務教育を終える。それからは働くも進学するも良しで、十二歳から働いている人も少なくない。わたしは親に支援してもらえなかったから、進学しないでおばあちゃんと一緒に暮らす道を選んだけど。だからわたしの二歳上で十五歳のリュウが魔法騎士団に所属してても、なんらおかしくないのだ。


「うぅ…」

「大丈夫ですか?かなた様」

「だいじょばない…」


魔法騎士団の本部の中に入ると、周りの人達の視線が突き刺さってくる。わたしは隠れるようにリュウを盾にしてすすんだ(リュウはなんでか嬉しそうだった)。


「おっ、来たか…って、何してるんだ?」

「見られるのが嫌なので隠れてました」

「あー…許してやってくれ。ここは女が少ないから、かなたみたいに可愛い子がいるのが珍しいんだよ」

「それでも気になるものは気になりますよぉ…」


半べそ状態のわたしをなだめるように、ベルナールさんは頭を撫でてきた。


「泣くな泣くな。ほら、俺も盾になってやるから」

「ありがとうございます…」


わたしは二人を盾にして進んだ。


「どこに向かってるんですか?」

「団長室だ」

「団長…ってことは、シャルル・スティアートさんのところですか?」

「あいつは女子を不躾に見るようなやつじゃないから安心しろよ」


わたしはテレビとかで見たシャルルさんの姿を思い浮かべた。

シャルルさんといえば、金髪碧眼と絵に描いたような王子様といった姿で、ワイルド系のベルナールさんとは別の層の女性に人気があると聞いたことがある。


「着いたな。おーい、シャルルいるかー?」

「いるよー」


ベルナールさんが団長室のドアをノックしながら声をかけると、返事が返ってきた。ベルナールさんとリュウに連れられて、わたしも団長室の中に足を踏み入れた。

思ったよりも家具が少なく、シンプルで広い部屋の中。奥に置かれた机に向かい、書類に目を通していたシャルルさんが、こっちに目をやった。わたしと目が合うと、にこっと穏やかな笑みを浮かべた。


「こんにちは。貴女が透野かなたさん?」

「は、はい!そうです!」

「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。聞きたいことを聞いたらすぐ解放するからね」


わたしたちは部屋に置いてある二つのソファに、向かい合うように並んで座った。わたしの隣にはリュウが、向かいにはベルナールさんが座り、ベルナールさんの隣にシャルルさんが腰かけている。


「まず、部下のアンドリューを助けてくれてありがとう。貴女のおかげで、大切な部下を失わずに済んだ」


シャルルさんは深々と頭を下げた。


「そんな、頭を上げてください。わたしは当然のことをしたまでです」

「私達は、怪我をしても見て見ぬふりをされることが多くてね。だから私達を気遣い、怪我が治るまでアンドリューに寄り添ってくれたことが、自分のことのように嬉しいんだ。本当に、ありがとう」


その心からの言葉に、シャルルさんは本当に部下を大事にしているんだな、ということがよくわかった。リュウも嬉しそうに笑っている。


「そんな貴女に事情聴取のようなことをするのは心苦しいんだけど、私達はかなたさんの住んでいる地域にあまり詳しくなくてね。今回の件の原因を突き止めるためにも、話を聞かせてもらえないだろうか?」

「もちろんです」

「ありがとう。それではー」


わたしは一時間ほど聴取を受けた。メルトスパイダーのような災害級の魔物を初めて見たことや、あんな巨大な魔物と出会ったことがないことを伝えると、三人の顔がだんだん険しいものに変わっていった。


「…わかんねぇな。あの辺りに長く住んでるかなたの婆さんでも見たことないなら、なんであの時現れたんだ?」

「意図的なものを感じますね」

「けど、その意図が読めない。魔法騎士団の面子を潰すためなら、もっと被害の拡大が見込める町中に召喚するだろう。メルトスパイダークラスの魔物なら、我々魔法騎士が何人いても対処が難しいからね。被害を出さざるを得ないだろう。それなのに、なぜあんな町外れに現れた?まるで…いや、やっぱりなんでもない」

「俺としては、俺達を助けたやつも気になるんだよなぁ」


わたしは平静を装うため、出されたお茶に口をつけた。


「たしかに、彼のことも気になるね。災害級の魔物を一撃でほふれるほどの力を持つってことは、かなり手練れの冒険家かと思ってギルドにも確認してみたけど、二人の報告にあった特徴に該当する人はいなかった」

「謎が多いですね…。かなた様、彼とは本当にお会いしたことがないのですか?」

「うん、あの時初めて会った」

「手がかりなしか…」

「是非ともうちに迎え入れたいところなんだけまね」


なんとも重苦しい空気に包まれる。


「あ、あの!わたし、お手洗いに行ってきても良いですか?」

「あぁ、そろそろお開きにしようか。長い時間拘束してすまない。話を聞かせてくれてありがとう。リュウ、案内を頼んだよ」

「はっ。行きましょう、かなた様」

「あまり力になれなくてすみません」

「そう気に病まないでほしい。十分色々聞けたからね」


わたしは優しく微笑むシャルルさんとベルナールさんに頭を下げ、リュウとともに団長室を出た。




「はぁ…手詰まりだね。少しでも手がかりがつかめればと思っていたけれど」

「こればっかりは仕方ないさ」


ベルナールは落ち込むシャルルをなだめつつ、考えを巡らせていた。


(あの着流しの男…どうも気になるな。俺達を助けるにしても、タイミングが良すぎる。そうちょうど良く通りがかるものか?かなたも何かを隠しているみたいだったが…あの男の情報を隠して何になる?弱味を握られている、とかか?)


「…だーっ!わっかんねぇ!シャルル、気晴らしに体動かすぞ!手合わせの相手しろ!」

「あ、あぁ、構わないけど…急にどうしたんだ?」

「何でもねぇよ。ひとまず、かなたにはもう少し話を聞く必要がありそうだな」

「そうだね。今日の聞き取りだけでは不十分だ」


二人は団長室を出た。

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