透野かなたの世界
今さらだが、この世界のこととわたしについて説明しようと思う。
この世界には、魔法が存在する。けど科学技術も発展しているので、スマホとかも普及している。個人的にはこの科学技術が発展している、というのが一番ありがたかった。わたしの相棒と出会うためには、電脳世界と接続しなければならないから。
次にわたしのことについてだが、わたしは前世の記憶がある。その世界は魔法が無い代わりにこの世界よりも科学技術が発展していて、わたしたちはサイバーゴーストと呼ばれる生命体の力を借りて生活していた。
サイバーゴースト…彼らは電脳世界に住み着き、邪神や悪魔を召喚する時みたいにプロセスを重ねることで呼び出すことができる。不思議な力を持った彼らは人の手助けをしたり、時には人と敵対しながら共存してきた。
そんな彼らを認識する能力に、わたしは優れていた。普通の人なら認識できない、野良のサイバーゴーストを視認して会話することができた。その力もあって、わたしには六体のサイバーゴーストが力を貸してくれている。
クリムゾンナイトの紅。グレイシャスキングの氷雨。ライトニングリーパーの雷切。フォレストハンターの凪砂。イーリス。そしてヒナタの六体だ。
彼らはわたしが普段身につけている、<柩>と呼ばれるヘッドホン型のデバイスに住んでいる。この世界ではサイバーゴーストの存在が認知されていないので、もちろん<柩>もなかったのだが、相棒達がこっそり前の世界から回収してこの世界に持ってきてくれたのだ。彼らの力を使うにはわたしに憑依させるか、借りた力を宿した魔眼を使う必要がある。魔眼は普段前髪で隠している右目がそれで、上半分は左から順に赤・青・黄・緑の順番に色が並び、下半分は金色に輝いている。ステンドグラスみたいでわたしは気に入ってるけど、他の人から見たら不気味だろうから、普段は隠しているのだ。
…大体こんな感じだろうか?これでわたしとこの世界んことは知ってもらえたと思う。必要に応じてまた説明するから、読み飛ばし厳禁だよ!
「こんにちは」
「あー!いらっしゃいリュウ!」
家の外で薪を割っていると、真新しい制服に身を包んだリュウが現れた。わたしが手を振ると、リュウは顔をほころばせて手を振り返してくれた。
「お元気ですか、かなた様」
「うん、元気元気!…で、いつまでかなた様呼びなの?なんかむず痒いよー」
「僕にとって、かなた様はかなた様ですから」
「うーん…」
最初の態度はどこへ行ったのか、リュウは従者よろしくわたしを様付けで呼び、恭しく礼をした。なんでここまでなつかれたんだろう?と首を傾げていると、おーいという声が聞こえた。
現れたのは、見覚えのある褐色肌の青年だった。制服の上からも筋肉質とわかる体つきで、身長も高く制服もベテランの魔法騎士が着る黒いものだったから、相当強そうだと思った。
「よっ。あんたが透野かなたさん?」
「あ、はい!えっと、あなたはー」
「ベルナール・シュラットンだ。魔法騎士団の副団長を勤めている」
「は、はじめまして!」
そうだベルナールさんだ、とわたしは慌てて頭を下げた。
「ははっ、そんなにかしこまらなくて良いって。-この度は、私の部下を助けてくださりありがとうございます」
ベルナールさんは人懐っこい笑みを崩してただずまいを直し、かしこまって頭を下げた。
「そんな、気にしないでください。わたしたちはベルナールさんとかリュウみたいな魔法騎士の人達に守ってもらってるんですから、あんなにボロボロで倒れてたら助けるのが当然です」
「かなた様…」
リュウは何に感激しているのか、キラキラした目でこちらを見ている。そんなリュウを一瞥してから、ベルナールさんはわたしに持っていた風呂敷を手渡した。
「これは?」
「お礼の品。トロトロースの肉とか渡すって約束したんだろ?」
「はっ…!まさか本当に持ってきてくださったんですか!?…うわぁ、この脂ののり具合、見てるだけでおいしそう!おばあちゃーん、ごちそうもらったー!」
わたしは二人そっちのけでテンションが上がり、家の中のおばあちゃんに声をあげた。わたしは二人に頭を下げてから家に戻った。
「…へぇ、あの子がねぇ。見た感じは普通の女の子だけどな」
「そうですね。ですが僕の記憶が正しければ、彼女は魔法とも違う力で魔物を倒していました」
「信じがたいけどなぁ。ま、それもこれからたしかめれば良いか。なにせ今日の目的はそれなんだから」