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少年の目覚め

少年が目を覚ましたのは、わたしがおばあちゃんの家に連れてきてから三日経ってのことだった。少年を寝かしている部屋の方からドタドタ音が聞こえたので、中を覗き込むと戸惑った様子の少年と目が合った。


「あ、起きました?」

「…誰だ、あんた」

「命の恩人に向かって何ですその態度。第一、自分から名乗らない人に名乗る名はありませーん」

「ぐっ…」


少年はしばらく躊躇った後、口を開いた。


「…………アンドリュー・ヘイズ」

「ヘイズさんですね。わたしは透野かなたです。裏山で倒れてたあなたを拾ったんですけど、何があったんです?」

「あんたには関係なー」

「あなたを助けたわたしには知る権利があると思いますけど?」

「…」


しばらくわたしたちは睨み合った。根負けしたのはヘイズさんが先だった。


「…わかった、話すよ。と言っても、そんな大したことじゃないけど。ただ僕が、周りのやつらの挑発にのって、まだそんなに訓練受けてないのに魔物の群れに突撃しただけ。なんとか群れは撃退できたけど、このザマだよ」

「他の人達は一緒じゃなかったんですか?」

「みんな群れに恐れをなして逃げてったよ。ま、これでみんな僕のこと見直したんじゃない?一人で群れを倒したしー」


パァンッ


わたしは気づくと、ヘイズさんの頬を叩いていた。ヘイズさんは何が起きたかわからない、といった様子でわたしを見ていた。


「よーくわかりました。あなた、バカなんですね」

「…はっ!?今なんてー」

「何度でも言ってやりますよ、バーカバーカバーカ!」

「っ、言い過ぎなんだよ!」

「だってヘイズさんバカなんですもん!そんなことのために命賭けるとか、バカ以外の何者でもないですよ!」

「そんなこと、だって!?そっちこそふざけんなよ!僕にとっては命賭けるくらい大事なことでー」

「だからって本当に命賭けるバカがどこにいますか!良いですか、あなたは全然周りを見れてない!」

「!」

「まずあなたがなりふり構わず魔物の群れに突貫したことで、魔法騎士団に迷惑がかかってるでしょうね。今ごろ大規模な捜索隊が派遣されててもおかしくないと思います。

次に、あなたが命に関わる大怪我をしたことで、わたしたちにも迷惑がかかっています。あなたの治療に何本ポーション使ったかわからないですよ。要は周りにどれだけ迷惑かけるか考えないで突撃したあなたは、本当にバカってことです。わかりました?」

「…」


ヘイズさんはしばらくうつむいていた。さすがに言い過ぎただろうか、とわたしが声をかけようとしたところで、ヘイズさんはわたしに頭を下げた。


「…たしかに、あんたの言う通りです。僕は本当に子どもでバカだった。自分の行動がどんな結果をもたらすかも考えないで、自分の面子を守ることしか考えてなかった」

「わかってもらえたみたいで何よりです。さ、ごはんにしましょうか」

「いや、これ以上迷惑かけるわけにはー」

「今さら何言ってるんですか。それに三日も何も食べないで寝込んでたんですから、お腹空いてるでしょう?そんな状態で外に出す方が心配です」

「それは、そうだけど」

「はい、じゃあ行きますよ!というかおばあちゃんのごはん絶品なので、ぜひ食べてくださいな」


わたしはヘイズさんの手を引いて部屋を出た。ヘイズさんは小さくありがとう、と呟いたので、わたしは笑顔でそれに返した。




ガツガツ…


「「…」」

「…あ、すみません。食べ過ぎましたか?」

「いえ、そんなことはないんですけど…」

「ただ、あまりにも食べっぷりが良いものだから。つい見てしまいましたわ。そうだ、おかわりいりますか?」

「お願いします」


リュウ(そう呼んでほしいと言われた)は寝起きとは思えないほどの食べっぷりで、おばあちゃんの作り置きしていた料理を次々と平らげていった。おばあちゃんは作りがいがあるわぁ、とにこにこリュウを見ている。


「この度は、本当にお世話になりました」


ごはんを食べ終えたリュウは、改めてわたしたちに頭を下げた。


「当然のことをしたまでですもの。そう気になさらず」

「そうそう。この国を守ってくれてる騎士さんに、少しはお返しできて嬉しいですよ」

「…」

「それで、リュウくんはこれからどうするんですか?制服なら直してありますから、すぐにでもここを出ることができますよ」

「そうですね、一旦騎士団に連絡してから帰ろうと思います。本当に、お世話になりました」


リュウは最初見せたつっけんどんな態度からは想像もつかないほど素直な様子で、また頭を下げた。リュウの荷物をまとめた後、リュウを見送ろうと玄関に立ったわたしに、連絡先を交換してもらえないか、と言ってきた。


「連絡先、ですか?」

「はい。お世話になったので、いつかお礼をしたくて」

「そんな気にしなくても良いのに」

「具体的にはトロトロースの肉なんかを持ってこようかとー」

「交換しましょう!」


わたしは素早くスマホを取り出した。みっともないかもだけど、口に入れただけで天国を味わえる肉がとれると噂の魔物、トロトロースの肉には変えられない。わたしの変わり身の早さに笑ったリュウは、同じくスマホを取り出して連絡先を交換した。


「これで良いですね。それと、僕と話すのに敬語はいりませんよ、かなた様」

「いやいや、そういうわけには…って、え?かなた様?」

「またお会いしましょう」


リュウはとろけるような笑みを浮かべてから、貴族式の礼をして去っていった。


「…………様ってなに?」


一人残されたわたしは、思わずそう呟いていた。




「…以上です。この度は、ご迷惑をおかけしました」


事の顛末を報告し終えたアンドリューを見つめる上官の目は厳しかった。


「本当にな。けどま、お前が無事で何よりだ。今度騎士団総出でお前を助けたっていう二人のところに礼を言いに行かないとだな」

「…そうですね」


上官はどこか柔らかくなった雰囲気の彼に首を傾げたが、気のせいか話題を移した。


「しっかし、あんなところに人が住んでるとはな」

「え?」

「なんだお前、知らないのか?あそこは手練れの騎士でも手こずる魔物がたくさん出るダンジョンだぞ。お前は本当に運が良かったな」


アンドリューは朦朧とする意識の中見た光景を思い返していた。自分を助けたという、かなたと名乗った少女が鼻歌混じりで魔物を次々と倒していくところを。それも、自分を支えながらだったために、片手間にこなす作業のように。


ー彼女は、一体…?

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