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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第18章】取り合うその手に花束を
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18−41 ないない尽くし

(僅かだが、まだ魔力は繋がっている……さて)


 コンラッドの契約はまだ、切れていない。それは私に対する信頼の証なのか、それとも、恐るるに足らぬという軽侮の顕れなのか。何にしても、手繰り寄せるべき糸が切れていないことに安心しつつ。塔が拾い上げている魔力の奔流の中から、入念に彼の居場所を辿ってみる。


(この場所は……)


 そうして、ミシェル様自慢の魔力検知システムの観測データと、彼の糸が示す先とを照らし合わせると。微弱ながらも、確かに自分はここにいると……確かな反応に手応えを感じた。


「……コンラッドはヴァンダートにいるんだな。……やはりと言うか、何と言うか……」


 観測データが示すポイントを睨んでみれば。そこはローレライが元々あった場所と同じ計測値を叩き出している場所でしかない。きっと先方の通例通り、コンラッドも地下の拠点にいるのだろう。「本来の悪魔」になったはずのコンラッドの反応さえもが、ここまで隠蔽されるとなると……ちょっとした隠れん坊にしても、随分と手が込んでいる。しかし、それ以上に……。


(ここで使われた魔法は一体、何だろうな? データは白い属性反応……か。だとすると……)


 コンラッドがいるらしい観測地には、別の見慣れない魔力データが存在している。魔力の色からしても、光属性の魔法のようだが、少なくとも私が使える魔法ではなさそうだ。回復魔法でもない、補助魔法でもない。そして……攻撃魔法でもない。更に使われている言語のアルゴリズムも、あまり見慣れないものが使われている。その上、魔法名が「不明」になっていることから、神界のデータベースにもない魔法らしい。ここまで「ないない尽くし」であれば、導き出される答えは1つ。……ここで使われた魔法はおそらく、種族限定の固有魔法に違いない。

 使われた魔法が光属性となると、術者は悪魔ではない……つまり、術者はコンラッドではないということになる。ハーヴェンも言っていたように、「悪魔は光属性の魔法は使えない」のが一般的な見解だ。その事から、コンラッドとは別の誰かが、その場にいるということになるが……選りに選って光属性の固有魔法となると、事はそう単純ではないだろう。


(この魔法は……何の言語で紡がれたものだろうな?)


 私が分からないアルゴリズムの魔法だとなると、術者は天使でもなさそうだ。天使の固有魔法はマナ語による魔法のため、曲がりなりにも天使である私にも判別できるだろうし……神界のデータベースに情報がない時点で、対象の魔法は一般的な光属性の魔法でも、天使の固有魔法でもない。そうなれば、この固有魔法の術者は天使以外で光属性のハイエレメントを持ち得る種族……竜族である可能性が非常に高い。


 固有魔法は特定の種族ではなく、特定の種類にしか行使を許されない魔法ではあるが、魔法の行使には種類の縛りがあると同時に、術者のエレメントに対する縛りもしっかりと存在している。

 天使の場合、4大属性は個人の持ち得ていた素質によってバラバラだが、悪魔も含めて精霊は種類ごとに4大属性までしっかりと固定されているのが現状だ。まぁ、大悪魔は4大属性もそれぞれバラバラのようだが……彼らは領分に沿った頂点としての固有種という扱いになるらしく、この事例では勘案しなくてもいいだろう。それに、悪魔は基本的に光魔法を使えないのだし、今回の候補からは既に外れている。


(そう言えば……)


 ティデルから聞いた話の中に、中身は竜族らしいオズリックの話題があったことも思い出す。彼について、「相当上位の精霊だったみたいで、霊樹の扱い方をよく知っている奴」とティデルは評していたが。もし、オズリックが「ギルテンスターン」だったのなら、状況的にも色々とスジが通る。

 ギルテンスターンは竜族の長老……オフィーリア様と同じディバインドラゴンであり、光属性のハイエレメントも保持していた。ディバインドラゴンに固有魔法があるのかどうかは、それこそ、長老様に聞いてみないことには分からないが。竜界の中でも「白の樹海」というドラグニールが根を下ろしているエリアを任されていることを考えても、長老様の一族であれば霊樹の扱い方について、知識があってもおかしくない。それに、彼は霊樹絡みの材料に対する加工技術まで有していたようだし、「向こうで1番偉い奴との契約持ち」だったことも判明している。

 ……先程の「ないない尽くし」とは打って変わって、ここまで条件が揃い始めると、寧ろ空恐ろしい。


(……とにかく、コンラッドがヴァンダートにいることは分かった。今日は一旦、帰るとして……明日は竜界に出かけるとしよう)


 ドラグニールの条件に対する明確な返事を用意できないのが、何だか気まずいが。シルヴィアへの協力要請に関しては確実に準備が進んでいるし、そもそもユグドラシルの使者を立てるには、キーパーソン(キー妖精?)でもあるピキ様も回収しなければならない。私はどうも、あのピキ様は苦手だが……。ここはそうも言ってられないだろう。

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