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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第18章】取り合うその手に花束を
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18−11 リッちゃん、出番だよん★

 “出来損ないの真祖”。

 ハインリヒの態度に頭に来ていたこともあって、そんな事をつい、言ってしまったけれど。アケーディアはともかく、バビロンを前にすると……酷いことを言っちまったかなと、少し後悔する。そして、きっと……バビロンの方は自分で「真祖として不要な存在でかなかった」と言ってしまえる程に、放り出された側の苦悩を抱えてきたんだろう。だけど、それだからって……。


(……そこまで、自分で自分を諦めなくてもいいだろうよ……)


 誰かを「不要」だなんて決めつける権利は、誰も持っていない。神様だって、真祖だって……それこそ、自分自身だって。生きていればそりゃ、苦しいことも沢山あるだろう。数えきれない程に悲しいことだって、あったに違いない。それでも、なんとか折り合いをつけて、歯を食いしばって頑張ってきたんだろ? それなのに……どうして、そうもアッサリと悲しいことを言えちゃうんだよ。


「バビロンがそこまでしてやることはないんだよ。もぅ〜……仕方ないなぁ。本当は、最終手段で使おうと思っていたんだけど。そこの腐ったのを元に戻してあげれば、バビロンも満足できる?」

「え、えぇ……。このままでは、私も辛いもの。……何となく、だけど」


 それさえも何となく……なんだな。辛いのさえも、他人事っぽい事を言っている時点で……バビロンの自信のなさは、色々と手遅れな気がするな。……何がどうなったら、ここまで見事に自信喪失できちまうんだろう。


「はーい。リッちゃん、出番だよん★」


 そうしてバビロンの境遇に思いを馳せては、しんみりしていると。俺の愁歎を木っ端微塵にぶっ壊す勢いで、意味不明なモノを呼び出し始めるベルゼブブ。

 ……えっと、リッちゃん? あの〜、すみません。それ、どこぞの誰かにソックリなんですけど。きちんと強欲の真祖様の承認をとっていますかね……?


「ベルちゃん、その子は?」

「うん。この子は魔法道具・リッちゃん3号機! ザーハが造り出した、膝枕用のお人形でね。なんでも、ヨルムの沼にやってきた魂をこの子に誘導することで、ヨシヨシモード的な動きができるんだって〜」

「……ベルゼブブ。一応、聞くけど。それのモデル……リッテルだよな?」

「うん、そうだね。リッテルちゃんだね、これは」

「なぁ……外観がリッテルである必要性はあるのか?」

「むしろ、リッテルちゃんじゃないと意味ないみたいだよ?」

「へっ?」


 そうして続く、ベルゼブブの呆れた説明によると……そもそも、リッちゃん人形が開発された経緯は、ヨルムンガルドの横恋慕が発端だそうな。リッテルに一目惚れしたはいいが、彼女は息子(になるんだよな?)のお嫁さん。しかも、その息子は親よりも能力と責任感に優れる最強の悪魔だったりするもんだから……流石のヨルムンガルドも、リッテルに手を出せなかったらしい。そうして、仕方なしに根城に一番近いリヴァイアタンの領域に住んでいるザーハに「ヨシヨシ用人形」の作成を依頼したらしいんだけど……。


「……これ、マモンが知ったら怒るだろうな……」

「だろうね〜。バレたらグリグリのお仕置き程度じゃ済まないだろうねぇ、これは。で、どうしてもリッテルちゃんをモノにしたいダディは、この子の初号機と2号機を使って、スペルディザイアの代理発動をしようとしていたみたいなんだけど……うん。複雑なお願いは難しいみたいでね。この子の先代の2人は“本物になる”っていうお願いを叶えることもできずに、魂が使い物にならなくなったらしい」


 だから、お役御免でヨルムの沼に沈んでいったよ〜……なんて、軽々しく言ってくれるベルゼブブだが。……なんだろうな。そのお願い、叶わなくて何よりな気がするぞ。


「で、僕にお鉢が回って来たってトコなんだけど。ほら、ダディの他はスペルディザイアを完璧に使えるの、僕だけじゃない? だから、改良版リッちゃんと一緒に、お役目をもらったんだ〜」


 それ、胸を張る場面じゃないからな? 俺としては、親玉達(大元の父親含む)の思考回路に付いていけなくて、呆れることしかできないんだが。でも、おちゃらけていてもベルゼブブはどこまでも、魔界の大悪魔。ふざけている上に、無駄な威圧感を醸し出しているベルゼブブにしっかり怯えているロジェとタールカをとりあえず、手招きしては避難させる。……まぁ、今の俺の姿も威圧感タップリだろうけど。正体不明な感じは遥かにマシだろう。


「……ロジェにタールカ。とりあえず、こっちにおいで。ベルゼブブは見た目はアレでも、意外と中身はマトモだから、そこまで怖がらなくてもいいだろうけど。……うん、魔力も桁外れだからな。お前達が怯えるのも無理はない」

「う、うん……タールカ、ほら。しっかりして」

「あぁ……ごめん、ロジェ。とにかく……うん。僕も今はハーヴェンの所に避難した方がいい気がする」


 よしよし。お兄さん、素直な子は嫌いじゃないぞ。ご褒美に精神安定剤代わりの肉球プニプニサービスも提供してあげちゃう。


「ま、見てなよ。僕が正統派真祖のお作法ってやつを見せてあげるから。と言うことで、リッちゃん」

「はい、ご主人様。如何いたしましょう? ご要望は膝枕ですか? 添い寝ですか? それとも、夜伽……」

「うわぁぁぁぁッ! ちょ、ちょい待ち、リッちゃん! それ以上は言わないでくれ! 頼むから‼︎」

「……かしこまりました」


 素直ないい子達の前で怪しげな事、言わないんで欲しいんだな。と言うか、あんまりにもいかがわしい機能が盛り込まれている時点で……そんな事が知れたら、マモンに冗談抜きで殺されるぞ。マジで。

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