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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第17章】機械仕掛けの鋼鉄要塞
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17−56 グリちゃん成分、チャージです!(+番外編「リリーシングGO!」)

 ダンタリオンに必要なのは、可愛い天使様とライトにキャッキャウフフするための最低限のコミュニケーション能力。そんでもって、飛び込み参加のミカエリスに必要なのは、可愛い天使様とディープにキャッキャウフフするための臨機応変なコミュニケーション能力。ウブはウブでも、大事な所にウブ毛すらなさそうな配下のピュアっぷりに……俺は前途多難だと頭を抱えていた。

 大体、どうして魔界の真祖様が配下の恋愛模様を心配せにゃならん。いい加減にしとけよ、コラ。


「ただいま、あなた……」

「ハイハイ、お帰りなさい。……って、お、おい。どうしたんだよ、リッテル」


 そうして仕方なしに、悩み深きお年頃のポンコツ悪魔第1号・第2号の相手をしていると。今度は状況も空気も読む事なく、ただいまから間髪入れずに嫁さんが抱きついてくる。……うん、いや。いつもながら、嫁さんに抱きつかれるのは悪くないぞ? だけど……その。この状況でそれはやめてほしいんだな。


「……あぁ……やっぱり、あなたにスリスリしていると、落ち着くわ……。ふふ。グリちゃん成分、チャージです!」

「グリちゃん成分って、何だ……?」

「パパ、フェロモンでも出ているのでしゅ?」

「そうだったのです?」

「だったら……クンクンすれば、いい気分になれそうですよぅ!」

「それ、おいらもチャージしたいです!」

「人を発情中の動物みたいに言うな。……お前らもいい加減にしておけよ……?」


 そうして今度はクソガキ共までにひっつかれて、クンクンされているんですけど。……あの、すみませーん。俺は決して発情中でもないし、フェロモンも……出ていないと思うんだけど。それなのに……なんでスリスリしただけで、お前らはトリップしてんだよ。俺をマタタビ代わりにするのは、マジでやめろ。


「マモンはいつでも発情中ですものね。本当に……羨ましいったらないですね、全く」

「僕もリヴィエルにスリスリされてみたいなぁ。どうすれば、マモン様みたいに発情できますかね?」

「……一応、言っておくが。俺は別に発情もしていないし、今も至って冷静なんだが……?」


 だから、俺をケダモノ扱いするな。いや、そりゃ……確かに、リッテルみたいな美人にくっつかれるのは悪くない。そんでもって、ちょっとは興奮するのも……健全な男子なら、不可抗力だと思う。そこは仕方ないと思うし、これが本当の美女と野獣……って、やかましいわ! 誰が発情中の野獣だ、こん畜生ッ‼︎


「今晩は〜。お邪魔しまーす……って、おぉう……。なんだか、すごい事になってるな。これ……どういう状況?」

「……ハーヴェンまで何の用だよ……。この状況は俺も不本意だし、意味不明だ。頼むから、放っとけ」

「う、うん……それじゃ、あんまりお邪魔しちゃ悪いし、サッサとお届け物を渡すとするかな」

「お届け物……?」

「手短に要件も伝えるから、ちょっと耳だけ貸してくれる?」


 こんな状況で更に乱入してきたのは、ハッキリ分かるくらいの困惑顔をしている暴食のナンバー2。選りに選って、こんな時に……と、一瞬思ったけど。常々しっかりと気配りもできちゃうゲストに、安心させられると同時に、標準的な対応に今度は感動の涙が出そうになる。だけど……さ。どうして、領分違いのナンバー2に安心させられてるんだよ。それこそ、俺のフォローはポンコツ悪魔第1号さんの仕事だろーが。


「これはもしかして……?」

「うん。ルシエルから預かってきた。……ザフィがしっかりと採血をしてくれてな。ついでに、シルヴィアに魔法道具のあらましと、役目の説明もしてきたらしい」

「そうだったんだ。……それで? シルヴィアは何て?」

「あの子……本当に強くて、いい子だな。ルシエルが状況を説明したら、迷わず自分の身を差し出しても構わないとまで言い切ったらしい。もちろん、そこまでの犠牲をあの子に押し付けるつもりもないし、そうならないようにマモンに魔法道具の作成をお願いしていたんだけど、さ。いずれにしても、魔法道具の装着にも協力してくれるみたいだから。……忙しいところ悪いんだけど、できるだけ早めに仕上げをお願いできないかな」

「そっか。そういう事なら、任せておけ。肝心の魔法道具はハコまではしっかりできてる。明日にでもそっちに届けに行くよ」

「急がせて、悪いな。ただ……明日はちょいと、出かける用事があってな。俺がいない時はコンタローに渡しておいてくれる?」

「ハイハイ。お前さんがいない時はコンタローに渡しゃ、いいんだな? 承知しましたよ、っと」


 俺が了承の返事を出せば、お人好し悪魔さんも安心した様子で帰っていく……と見せかけて、何かを思い出したらしい。あっ、そう言えば……なんて、結構重要なことをサラリと報告してくるんだが。


「そうそう。お陰様で、ティデルが目覚めてさ。まだまだ態度にはトゲトゲしいところもあるけど……夕食どきの様子を見ていても、意外とうまくやっていけそうでな。あんまり心配しなくても、大丈夫そうだ」

「……だってさ、リッテル。そのうち、一緒に会いに行くか」

「はい……そうさせて頂きます。ふふ。……そう。ティデル、無事だったのですね。本当に……良かったです」


 しかし……リッテルさん? 薄らと感動の涙を浮かべつつも、依然俺に抱きついたままなのは絵面的に如何なもんでしょうか? そろそろ、離れてくれませんか? そんでもって……。


「……おい、お前らもいい加減離れろ。いつまで俺にくっついているつもりだ」

「だって……」

「パパにスリスリしていると、安心できるですよぅ」

「おいら、眠たくなってきました……」

「パパ〜、抱っこでしゅ……」

「このクソガキ共……!」


 そうして仕方なしに全員まとめて抱き上げると、ゴジに至ってはそのままゴロニャンと眠り始めたんだが。しかし……俺、本当に何してるんだろう? 嫁さんに抱きつかれて、挙げ句の果てにクソガキ共の寝かしつけまでさせられて。その上……。


「……あ? ハーヴェン……なんだよ、その顔は。お前、無駄にニヤついてんじゃねーぞ」

「いや、これはニヤつかないのは無理だろ。相変わらず、仲が良くて何よりだな〜」

「……俺はこの状況を断じて受け入れてるつもりはないからな。ごっ、誤解だ、誤解!」

「ふ〜ん? そうか、そうか。誤解かぁ〜。一応はそういう事にしておこうかな?」


 あっ、この顔は……信じてねーな? そうだな? そうだよな?

 そうして、結局は誤解したままらしいハーヴェンが嬉しそうに帰っていくけれど。……俺の真祖的なイメージ、もう色々と満身創痍かも知れない。威厳を回復するのって、本当に難しいよな……。

【番外編「リリーシングGO!」】


「うふふふ……あなた」

「は、はい……なんでございましょうか、リッテルさん」


 マモンが小悪魔達を寝かしつけ、やれやれと寝室に引き上げてみれば。そこには何かの準備も万端と……満面の笑みでリッテルが待ち構えていた。その様子に……今宵も、戦慄せずにはいられないマモン。


(……こ、これは……とっても、嫌な予感がするんだけど……!)


 それもそのはず、一応はネグリジェを身に着ける奥ゆかしさがあると見せかけて……スケスケのミエミエである時点で、リッテルの目論見も丸見えである。そうして、そろりそろりと回れ右をしては、退室願おうとするマモンだったが……。


「うふふふ……逃がさないわよ、あ・な・た。だって、折角グリちゃん成分をチャージしたんですもの。ここは思いっきり、リリーシングGOしないと!」

「リ、リリーシング……GO……? と、いうか……頼む、リッテル! 落ち着け、落ち着けったら!」

「まぁ! こんなに美味しい展開を逃せるものですか!」


 要するに、アレである。リッテルはチャージしたグリちゃん成分に伴うパッションを、しっかりとリリーシングGOするつもりらしい。既に文章もアレになりつつあるが、そういうことである。一方……。


(ミカエリス君……もしかして、マモンはいつもこんな感じなのだろうか……?)

(多分、そうなんじゃないですか? だって……ほら、見てくださいよ。あのリッテル様の鮮やかな剥がしっぷり。……マモン様があっという間に丸裸ですよ……?)


 ドアの隙間からある意味での修羅場の予兆を見つめては。マモンを助けることもせずに、スゴスゴと退散していくダンタリオンとセバスチャン。そうして、どうやら発情しているのは旦那様の方ではなく、奥様の方であることをよくよく理解するのだった。

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