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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第9章】物語の続きは腕の中で
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9−51 意思さえも壊せばいいじゃない

 結構な時間、ラボの実験室で2匹のおもちゃ相手に試行錯誤しているのだけど。土台が元天使であれば、かなりの無理と改良ができるとワクワクしていたのに、少し前からなーんか、片方だけ素材がしっくりと馴染まなくなっていた。……ったく。折角、私が腕を振るってやろうとしてんのに。何が原因なのかも、何が違うのかも分からないもんだから……目の前の「失敗」が自分のせいだと言われているみたいで、もの凄いムカつく。


「チッ! ノクエルは役立たずなんだから! 素材がこうも馴染まないなんて、どういうことなのよ⁉︎」


 アヴィエルはきっちり鱗が馴染んでちゃんと改造できたのに、ノクエルはいくら鱗を埋め込んでも次から次に剥がれてきて、ちっとも定着しない。もう、いいや。こいつはこれ以上改造できないみたいだし、例の部屋に放り込んでおこう。一応、腐っても元天使だし……「赤い花」の材料くらいにはなると思う。


「あ〜あぁ……お姉ちゃん、随分とやらかしたね。こんなに皮を剥がれたら……そろそろ、死んじゃうよ?」

「……仕方ないでしょ、馴染まないモノは馴染まないんだから。あんたはどうなのよ。随分と角と尻尾がサマになってきたけど、まだ完全に定着してないんじゃないの?」

「そうだなぁ……でも、大分慣れてきたよ。魔力を感じることもできるようになったし、何より見てよ、この綺麗な尻尾! ようやく鱗が生え揃ったんだ! これで僕も、竜族になれるのかな……」

「さぁ、どうだか。ま、そこまで行けば大丈夫なんじゃない? 例のギノって子も、最初はそんな感じだったみたいだし」


 何気なく私がその名前を出すと、あからさまに目の前の男の子……ロジェが嫌な顔をし出す。全く、何をそこまでムキになってるんだか。よく分からないけど、どうやらロジェは例のべへモスに敵対心を燃やしているらしい。どうせ、一緒に孤児院にいた時に仲が悪かったとか、そんな理由だと思うけど。私には関係ないし。


(とは言え、ロジェは試作品の中ではかなりいい出来だし……このまま放っておいていいか)


 改造してやるって言っているのに、泣き喚いて拒否するガキ共が多い中、余程にべへモスに追いつきたかったらしいロジェは自ら改造を望んだ優等生だ。しかもちゃんと器持ちだったりしたもんだから、精霊化もかなりスムーズで……ジャバヴォックの鱗が馴染んで、デミエレメントまでステージを進めたらしい。始めは魔獣族と結合させていたのだけど、本人の強い希望もあって、こうして超貴重品の鱗を使ってやったら見事に馴染んで見せた。

 精霊化には本人の意思も重要な要素らしい。どうも本人の意思に沿わない事をすると、素材への拒否反応が出やすいような気がする……。なーんて考えていると、どこか見下された言葉がフラッシュバックして、また私の頭を悩ませる。


《魂の悲鳴をおざなりにしているあなたに、本当の意味で従う者は唯の1人とて居ますまい》


 悪魔如きが、何を偉そうに。別に従わないのなら、従わせればいいじゃない。意思があって邪魔しているのなら、その意思さえも壊せばいいじゃない。……そのためには、あの花をたくさん咲かせないと。それを考えれば……。


(しっかたない。ノクエルは餌にしようっと。別に今更、こいつを使う理由もないし。それに……)


 この間、あの方からジャバヴォック本体も貰えたし、次は竜族を土台に何か作っても面白いかも。そして私だけの自慢の精霊兵を作って……師匠をあっと言わせるんだから。だから、待ってて師匠。私は私の手で、自分に相応しい精霊を作り出してみせるから。そして、私の精霊の方が強いって……いつか認めさせてあげるんだから。

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