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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第9章】物語の続きは腕の中で
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9−17 明日の計画

 ラミュエル様からもご了承を頂いたので、夕食の席でコンラッドに許可が出た事を報告する。しかし、計画を子供達には何も話をしていなかったようで……カーヴェラというキーワードが出た途端にエルノアが目を輝かせて、話に食いついてくる。

 しかし、出かけて行くのと暮らしていくのでは、生活スタイルの次元があまりに違う。それでなくても、エルノアは傾向を見る限り、後先考えずに街中で魔法を使ってしまう可能性も高い。……一緒に孤児院で暮らすのは、まず無理だろう。


「エルノア、いいかい。カーヴェラに遊びに行くのはいいけど、君は竜族……つまり現役の精霊である以上、人間の街で暮すのは難しいんだよ。特に孤児院には、普通の子供達が暮すことになるのだし……。エルノア達が一緒に孤児院で暮らすのは無理かな」

「えぇ〜? そうなの? カーヴェラに住んでいれば、たくさんお買い物できると思ったのに……ルシエルの意地悪」

「エル、仕方ないでしょ? 僕達が住んでいたら、何かに巻き込まれる可能性も高いし……カーヴェラに行っちゃダメって言われているわけじゃないんだから、ここは我慢しよう?」

「でも……ギノは神父様と離れて暮すの、寂しくないの?」

「もちろん、寂しいけど……別に一生のお別れというわけではないんだし。神父様の活動を必要としてくれる子がいるかも知れないでしょ? ……幸せのお裾分けを、他の子供達にもしてあげようよ」

「う……ギノが言うんなら、仕方ないな……。でも、カーヴェラにまた行きたいな〜」


 エルノアは余程、カーヴェラが気に入っているらしい。ギノにとりなされて、渋々納得した様子を見せるものの。名残惜しそうに、口を尖らせている。その様子にやれやれと……ハーヴェンがデザートを運びつつ、ちょっと不機嫌なエルノアに明日の予定を提案し始めた。


「だったら、明日は孤児院の候補地探しに、みんなで行ってみるか。孤児院ができたら、差し入れで出入りする場所になるだろうし、お手伝いをお願いするかもしれないし。みんなが場所を知っているに、越した事ないだろ」

「……何だか、すみません。私のワガママに付き合わせてしまいまして……」

「いや、別に構わないよ? ギノの言う通り、ちょっとしたお裾分けをするのは、悪くないと思うし。それに……カーヴェラにも拠点があった方が、何かと便利かもな。場合によっては、そっちにお泊まりもアリだろ」


 恐縮した様子のコンラッドにハーヴェンがカラリと請け負う一方で、お出かけの提案にコロリと機嫌を直すエルノアと、どことなく安心した様子のギノ。私としては、ギノの方がコンラッドと一緒に暮らしたいと言い出すと思っていたのだが……相変わらず、必要以上に気を使っている様子が少し気になる。この間、悪い夢を見たと泣いていた事もあったし……ギノの様子にも気を配っていた方が良さそうだ。


「あの、悪魔の旦那。明日は俺達も一緒に行って、構いませんか?」

「……私も、もう1度お買い物に行きたいです」

「あい! おいらも行きたいでヤンす!」


 デザートのマーブルケーキに夢中で大人しかったモフモフ達が、乗り遅れまいとハーヴェンにお伺いを立てている。彼らは彼らで、お出かけが楽しかったようだが……妙な必死さがあるのが、少し引っかかる。


「あぁ、もちろん構わないよ。……本屋にも寄った方が良さそうかな?」

「あ、あい? お頭、どうして分かったでヤンす?」

「……だってお前達、既に本を交換し始めてたじゃないか。話の続きが気になって、仕方ないんだろ?」

「えっと……悪魔の旦那は流石ですね……」

「……すみません。面白くてつい、読み切ってしまいまして……」


 なるほど……買ってきた本を、この子達は読み切ってしまったのか。冬篭りの楽しみがもう尽きてしまったとあれば、追加で新しい物語が欲しくなるのも……無理はないのかも知れない。


「まぁ、構わないよ。本を読むのは悪い事じゃないし、むしろいい事だ。だったら今度は、多めに本を買ってこような」


 財布の紐を握っているハーヴェンから正式にお許しが出たのに、モフモフ達も満足そうだが……そうしてウキウキされると、とてもモヤモヤする。当分は休みを取る事もできないだろうし、ハーヴェンは家の事で掛り切りだし……。またあの素敵な時間を過ごすには、どうすればいいのだろう。


「あ、そうそう。ルシエルは何か欲しいものないか? もし良ければ、見繕ってくるけど」

「べ、別に何もないし……みんなで楽しんでくれば、いいんじゃないかな。孤児院の資金はルシフェル様からも助成金を頂いたから、心配しなくてもいいし……」


 何もない……と言いつつ、取ってつけたような気遣いがちょっと辛い。そうして私の不機嫌を機敏に察知したのだろう。ハーヴェンがちょっと苦笑いしながら、明日の計画をバージョンアップさせてきた。


「そうだったんだ? じゃぁ、孤児院の開設は天使様公認って事か。……だったら、明日はお前も来いよ。ちょっと顔を出した後にすぐに戻ってくれば、一緒に出かけられるだろう? それに、孤児院はお前達にとっても重要な拠点になり得るだろうし。……どうかな?」

「いいの……?」

「いいの……って、そちらさんの都合次第なんだけど。一緒に行けそうか?」

「ぜ、善処する。何が何でも切り上げてくるから……明日は少し待っていてほしい」


 私がギリギリの妙な返事をしたところで、楽しそうな笑いが起きる。子供達も私がお出かけに混ざるのには、賛成してくれているようだ。だとすれば……。


「私は、例の雑貨屋に寄りたいんだが……」

「あぁ、あの鳥ちゃんの置き物をくれた」

「うん……ダメかな?」

「いや、いいんじゃない? それに……」


 ハーヴェンがすんなりと同意を示した後で、目配せをする。彼の視線を追えば……エルノアが殊の外、キラキラした瞳でこちらを見つめているが。……あぁ、なるほど。雑貨屋は間違いなく、女の子が好きな類の店になるだろう。


「雑貨屋さん、私も行きたい!」

「そう? それじゃぁ、エルノアも一緒に行ってみようか」

「うん!」


 計画がまとまったところで、ハーヴェンに1番気になっていた事を確認しなければならないと、話を振ってみる。

 今日も今日とて、ベルゼブブが遊びに来ていたようだが……。塔の情報に異常な魔力の塊が2つもあったのが、非常に気になっていた。流石にベルゼブブは2人もいない……よな? だとすると、もう片方は同レベルの真祖だと見ていいだろうか?

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