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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第6章】魔界訪問と天使長
200/1100

6−8 覗き見なんて悪趣味なんだから(+おまけNo.1)

 やぁ、みんな元気かな? ボクはミシェル! しっかりお泊まり権をゲットした、陽気な大天使だよ!

 フフフ……2階の部屋を3人で使う事にしたけど、当然、このチョイスには意味がある。だって、このお隣は……ラブラブご夫妻のお部屋じゃないですかー。


「お隣さんは、何をしてるかな〜。こうして壁越しに……あぁ。この壁、結構厚いみたいだな……」


 壁に耳をくっ付けてみたけど、お隣の様子は一向に聞こえてこない。チェッ、意外とガードが硬いんだから。


「……ミシェル。それはマナー違反よ?」

「じゃぁ、ラミュエルは何でこの部屋で寝るなんて、言い出したのさ? それに、オーディエルも……」

「何かあったら、ハーヴェン様に助けを求められるかな、と思って」

「……神界最強の天使が聞いて呆れるなぁ、もう……」


 要するに……君達も気になるんでしょ? お隣の様子が。


「……この部屋、ベランダは隣とかなり近いんだよね。覗けるかな」

「まぁ、ミシェル! それはちょっと……」


 とか言いつつ、ラミュエルも興味深々な様子じゃない。


「ラミュエル、ぶりっ子はよしなって〜。気になるんでしょ? ボクは気になるから、ちょっと覗いちゃお〜っと」

「ま、待って!」


 優等生っぽいことを言いながらも、2人とも付いてくるし……。そうしてベランダに出ると、お隣の明かりは消えているみたいだけど、そんなに遅くないし2人とも眠っていない気がする。そんな事を考えながら、息を殺して隣のベランダに降り立ってみる。


(シーッ……! う〜んと……わっ、意外とベッドが近いよ⁉︎)


 細心の注意を払って、窓を覗き込むけど。気づけば、ボクの頭の上にラミュエルとオーディエルの頭も揃っていた。本当に……いい子ぶっても、中身はボクと一緒じゃないか。もぅ、仕方がないなぁ。


(ね、もしかして……あの背中、ハーヴェンちゃんかしら?)

(うん、そうじゃない? あぁ、残念。今夜はその日じゃないみたいだね〜)

(……でも、2人とも眠ってはいないみたいだな)


 3人でヒソヒソと話していると、合間に彼らの会話がちょっと聞こえてくる。一体……何を話しているんだろう?


「……それにしても、あの日、お前は私の服を脱がせてたんだな……? しかも、男の子かもなんて思ってたなんて……色々とショックなんだけど」

「仕方ないだろ、そこは……。当時は天使が女しかいないなんて知らなかったし、最初の強気な感じで女の子だなんて分からなかったし。それに服を脱がせたのは、手当の必要があったから、だぞ? そこ蒸し返して、拗ねるなよ……」


(あぁ〜、横から見ても素敵……しかも引き締まっていて、なんて綺麗な胸板なのかしら〜)

(おぉ! ハーヴェン様はこのお姿でも逞しいのだな……!)

(しかも……うわ〜、ずるいよ、ずるい! ボクもあんな風に、肩枕してほしい!)


 見れば、ルシエルはいつもの難しい顔からは想像できないような、うっとりした顔をしている。拗ねるなよ、なんて言われている割には……本人は満更でもなさそうだ。時折、優しく頭を撫でられて、嬉しそうに目を細めていた。


(クゥ〜! ボクもナデナデされたい!)

(下に同じ……あぁ、羨ましいわぁ……)

(……私もだ。しかし……ルシエルのあんな顔、初めて見たな……)


「でも、白状ついでに言うと、さっきの話には……ちょこっと続きがあるんだ」

「……何だ、私の意識がないのをいい事に、何をしたんだ?」

「今のルシエルなら、言っても大丈夫かなと思うんだけど……」

「ほぉ? 場合によっては、許さないかも?」

「あ、そういうコト、言う? それじゃ、内緒にします」

「そ、それはずるいぞ! う、怒らないから教えて……くれない?」

「どうしようかなぁ……ルシエルは意外と理不尽だし、凶暴だし……」

「さ、最近はそんなことないだろ?」

「う〜ん」


 多分、契約的にはルシエルが上位なのだろうけど、会話を聞く限り……ハーヴェン様の方がかなり上手みたいだ。面白そうにニヤニヤしている顔がまた、この上なく意地悪そうで罪深い。


(まぁ、ハーヴェンちゃんったら! ルシエルが劣勢なんて……やるわね)

(ハーヴェン様はルシエルの取り扱いを心得ているな)

(このやり取りが何か、超夫婦っぽい! ボクも夫婦やってみたい!)


「ぅ……絶対に怒らないから、意地悪しないで教えてください……」

「本当に?」

「うん……」


 その答えに今度は嬉しそうに、ルシエルに頬ずりするハーヴェン様。


「ルシエルは夢見姫、って話知ってる?」

「夢見姫?」

「……まぁ、一種のお伽話で。魔女の呪いで眠ったままのお姫様がいたんだけど、お姫様の呪いを解く方法ってなんだと思う?」

「呪いをかけた魔女を殺せばいいんじゃないか?」

「その答えを即答かよ……。やっぱりお前、凶暴だよな……?」

「え、違うのか?」


 ボクも真っ先にルシエルと同じ答えが浮かびました。ごめんなさい。


「もっとロマンチックな方法なんだけどなぁ。ルシエルにそれを求めてもしょうがないか……」

「ゔ……わ、悪かったな」

「まぁ、それはいいとして。……夢見姫の呪いを解いたのは魔女を殺すことじゃなくて、運命の人の真実の愛でした」

「真実の愛?」

「……魔女はそもそも、夢見姫に恨みがあったわけじゃない。彼女の父親に裏切られて、ぞんざいな扱いをされた仕返ししただけなんだ。だから彼女の父親を困らせる意味でも、彼女自身が絶対にあり得ないと思っていた条件を設定したんだと思う」

「それが真実の愛? それをあり得ないと条件に設定するなんて……魔女はどんな風に裏切られて、そう思うようになったんだろう?」

「それは話の中には描かれていないが……ただ、魔女は真実の愛なんてないと信じていて、それを条件にすることでお姫様を永久に眠らせたつもりでいたんだ。でも、夢見姫にはきちんと運命の人が用意されていた。彼女を呪いから解放したいと願った王子様の口付けで、目覚めたんだよ」

「う、いいな、それ……ちょっと羨ましい」


(はーい! 私も羨ましい!)

(ボクも! 眠ってたのを、王子様のキッスで起こしてほし〜い!)

(ひ、姫……ウゥむ……。私はどちらかというと、助ける側かもしれん……)


 オーディエル。それ、間違いない。


「……で、あの時……眠り続けるお前を見てて不安だったのに、どこかで聞いたらしいその話を思い出して。おまじないも含めて……俺は王子様ってガラじゃないんだけど……」

「そっか。……なんだ、そういう事」


 ルシエルは何かを理解したみたいで、とっても嬉しそうに微笑んでいる。


「俺のこと好きになってください、って思いながら……口付けしました……」

「……そう。私もお姫様、なんてガラじゃないけど……おまじない、ちゃんと効いて良かったな」

「うん……そうだな」


 そこまでやり取りをしたところで、ルシエルが起き上がり、彼に口付けをする。


「おやすみ、ハーヴェン」

「うん、おやすみ」


 その「おやすみ」を最後に……彼らの会話が途切れる。……今日はそのまま、眠っちゃうみたい。ボク達は見つからなかったことにホッとしながら、自分達の部屋に戻ることにした。


「見た?」

「あぁ、見た……」

「……本当、なんて素敵な時間なのかしら……」


 ちょっと声のトーンを落としつつ……興奮冷めやらぬまま、3人で顔を突き合わせる。


「何あの、超ラブラブな様子!」

「あぁ……それにしても、ハーヴェン様は物知りというか……。いや、ルシエルを納得させる手際の良さに感心するべきか?」

「あぁ、とにかくもう悔しい、超悔しぃ〜! ボクも旦那様とイチャイチャしたい〜!」

「ミシェル、とにかく落ち着いて……」

「これが落ち着いていられる〜? ボク、あんなの見せつけられたら、眠れないよ?」

「それは自業自得だと思うわ……。でも、私はルシエルの様子に……安心してしまったの」

「実はな、私もだ。……ルシエルが笑っていた。いつも固い顔をして周りを寄せ付けなかった彼女が、あんな風に幸せそうな顔をしていた……。我々の過ちを全て押し付けた手前、こんなことを言えた立場ではないのだが。私は彼女のあの笑顔に、救われた気がする」


 ルシエルはハミュエルの願いを聞き届けて、彼女を殺した。それは間違った行いとは言い切れないものだったけど、神界のルールとしては大罪だった。彼女もそれは理解はしていたみたいだし、その結果が分からないほど愚かではないけど。それでも……翼を2対も取り上げられて、遣る瀬なかったに違いない。


「そう、だよね……。あの後、ルシエルは辛い思いをしてたんだよね……。ボク達がハミュエルの後釜を自分の部下から出すことに躍起になってて……いがみ合っている間も、恥さらしなんて言われながら耐えてたんだ。もしかしたら、ハーヴェン様との出会いはそのご褒美なのかな……?」

「少なくとも、ルシエルがこんな風に私達に話をしてくれるようになったのも、そして私達がこんな風に仲良く同じ部屋で寝られるようになったのも……考えたら、ハーヴェンちゃんのお陰なのよね。彼らの出会いが、さっきのお姫様と王子様みたいに運命だったら、素敵ね……!」

「うむ、そうだな。……神はきちんと、我々の行いを見てくださっているのかも知れん。だとすれば、御心に応えられるように精進せねばなるまい」

「そうね。私達も明日から、もっと頑張らないとね」

「よっし、やる気、出てきた! ボクもお仕事頑張って、旦那様のご褒美もらうぞ!」


 きっと、それには因果関係はないと思う。でも、頑張らない子にはご褒美がないのは、当たり前の事で。ちょっと強引でヘンテコな理屈だけど、何となくそれが正しい気がして、ボクは目を閉じる。

 ……オーディエルが妙にデカくて、ちょっとベッドがキツいけど。今はそれすらも、何だかくすぐったい。


***

 ……どうやら帰ったみたい、かな?

 隣で既にスヤスヤと寝息を立てているルシエルに安心しつつ、ようやく気づかないフリをしていた窓を見やる。


(全く、覗き見なんて悪趣味なんだから……)


 きっちり魔力は漏れないようにしていたみたいだが。俺にしてみれば、子供騙しにもいいところで。一度嗅いだ事のある匂いであれば、大抵の相手は感知できたりするんだよなぁ、コレが。今回はちょこっと興味本位で覗きに来ただけだろうし、隠さなければいけないような話もしてないし……なかった事にしておいてやるか。


(しっかし……覗きが好きなのは、悪魔だけじゃないんだな……)


 魔界では「そういうコト」が好きすぎて、隙あらば、覗き見た挙句に「混ざろうとする奴」が後を絶たない。相手がサキュバスやリリスみたいにそっち専門の悪魔であればまだいいが、そうではない場合は「混ざろうとする」行為はどう考えても、一方的な凌辱でしかなく。いくら覗き見する程に興味津々とはいえ、そんな体験はどう考えても、ない方がいい。

 そうだな。明日はちょっと……肩で風を切りながら歩いてみるか。あまり、偉ぶるのは得意ではないけれど。彼女達を守るためにも、多少の威圧感を醸し出しておくのは、無駄じゃない。

 そんな事をぼんやり考えながら、改めて窓から夜空を見つめれば。銀色の光を纏った三日月が微笑んている。

 彼女と契約したあの日から……自分は精霊なのだと言い聞かせ、悪魔らしくある事を出来る限り捨てようとしてきた。そんな俺さえも優しく照らすその銀色の輝きは、どこか慰めるような色を帯びていて。月光の穏やかさに安心しながら、瞼を閉じる。

 明日は悪魔としての本領こそを、発揮しなければならない。そのためにも、今夜はしっかり眠らなければ。ヨルムツリーまで辿り着くのには、場合によっては命がけになるかもしれないが。……それでも俺の身1つで済むのなら、どうって事もない。俺はただひたすら道を切り開く。……ただひたすら、前に進む事だけを考えればいい。そう、どこまでも……ただ、それだけだ。

※コンタローの呟き No.01


 あい、みなさまお晩です。モコモコ担当のコンタローでヤンすよ〜。

 ……って、何をトートツにと思われたかもしれないですけど。今回から、不定期にちょいとした「大きさについての話」をすることになったでヤンす。

 読み飛ばしてくれてもいいでヤンすけど……できれば、お相手して欲しいでヤンす。そこのところ、よろしくです。と、前置きが長くなりましたが、早速今回のお題、いくでヤンす。


『お頭と姐さんの大きさについて』


 う〜んと……身長についてでヤンスかね?

 ……白状すると、おいらはウコバクの中でも一番ちっこくて、ベルゼブブ様のソファくらいの身長しかないでヤンす……。まぁ、あのソファに座るのは遠慮したいんですけども……そうですね、高さ的には、40センチ程でヤンすよ。


 で、普段のお頭は184センチくらい、それでもって姐さんはお頭より小さめで……確か、155センチくらいでヤンす。

 あ、因みにですね、エルダーウコバクのお頭は430センチくらいあるでヤンす! ……同じウコバクなのに、どうしてお頭はあんなに大っきいんでしょうね? ピーマンをモリモリ食べれば、大っきくなれるんでヤンしょか?


 とにかく、おいらも大っきくなって強くなりたいでヤンす!

 それでは、次の機会にまたお会いしましょうです。ここまで読んでくれて、ありがとうでヤンす!

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