表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第4章】新生活と買い物と
138/1100

4−24 今からとっても楽しみですぅ

 ラミュエル様に呼ばれて、お馴染みになってしまっている彼女の部屋でお声を待つ。最近、任務以外の事で呼び出される頻度が上がっている気がするが……思い過ごしだろうか?


「もう、知らない仲じゃないんだから〜。そんなに畏まらなくていいのよ〜? それでね、今日はノクエルのことを伝えようと思って呼んだんだけど、大丈夫だったかしら?」

「えぇ、もちろんです。……それで、様子は?」

「まず、ミシェルに彼女の精霊帳の最終アップデート日を確認してもらいました。……で、ちょっと言いづらいんだけど……あなたへの例の処罰が実行された日、つまり魔力崩壊のすぐ後から途切れていることが分かりました」

「……そう、ですか。私への処罰の件はともかく、因果関係はあるのでしょうか……?」

「それに関しては調査中よ。ただ、ちょっと気がかりなことがあってね」

「?」

「保管されていた、あなたの翼がなくなっていたらしいの」

「……翼がなくなった? ……すみません。そもそも、落とされた翼は魔力分解されて、マナツリーに戻されるはずでは?」


 神界の霊樹・マナツリー。大天使のみが足を踏み入れることを許される、白亜の宮殿の中庭に聳え続けるまごう事なき純白の霊樹。亡くなった天使の魂や、落とされた翼は全てマナツリーに返還され、神界の魔力となって空間を潤すと聞いていたのだが。


「まぁ、ルシエルの場合は特殊……というか、あなたの元の翼は姉様が授けたものでしょう? だから返還する前に、ミシェルの所で一時的に保管して、魔力状態を確認することになっていたのだそうよ。ただ、魔力供給が絶たれた翼なんて、自然消滅してもおかしくないし、あまり気にされることもなかったみたいなんだけど。でもそれも……徐々に形が崩れるものだし、跡形もなく消失していることを考えると、誰かに持ち出された可能性が高いんですって」

「まさか、そんなに前から天使の翼を使って精霊を生み出そうとしていた、ということでしょうか?」

「それはまだ分からないけど……ただ、ノクエル達が持ち出した可能性は考えた方がいいかも知れないわ。ダッチェルは元々、転生部隊の宝物庫番をしていた子だったし……」


 なるほど。彼女は神界の宝具や魔法武器を保管する、神物庫の門番をしていたのか。だとすれば……翼を持ち出すくらいは、訳もないのかも知れない。しかし、それこそ私の翼にどんな価値があると言うのだろうか?


「そういえば、ラミュエル様。ノクエル本人の調子は……詰問の進捗はいかがですか?」

「そちらは結構、難航しているわ。やっぱりというか、案の定というか。彼女の記憶にもシールドが掛けられていてね。記憶の強制アウトプットは難しいみたいなの。拷問のフルコースを実行した後に……強制回復で2巡くらいしているみたいなんだけど、ちっとも効果がなくてね……。今日は痛覚を10倍にしてから詰問するって、オーディエルが言っていたわ」


 フルコースということは、手足の爪剥がしから指を落として……最後は千本刺しだったか? それを痛覚増強での実施となると、その苦痛が如何程のものなのか、私には想像もできない。


「そう……ですか。ハーヴェン相手にはあんなに饒舌だったのに、不思議ですね」

「そうね。……ノクエルにも思うものがあるのかしら? まぁ、今回はそのハーヴェンちゃんにしてやられた部分もあるんだろうけど……。何れにしても、進展があったらお話しするわね。彼女から情報を引き出せたら、何か気づくことがないか、ハーヴェンちゃんにも伝えてくれると嬉しいわ」

「かしこまりました。そうそう、そのハーヴェンが、というわけではありませんが。例のアーチェッタの悪魔文字の主が分かったようです。やはり、闇堕ちして魔界にいたとのことでした」

「あら、そうなの? で、その子は今……どうしているのかしら?」

「魔界で悪魔となるべく、精進しているそうです。今はまともに話すことが難しい状態とのことですが、おそらくアーチェッタの件で相当の情報を持っていると思われますので……場合によっては、契約をした上で情報提供をお願いしようと思っています」


 とは言え、先日の話を聞く限り、プランシーは天使を恨んでいる可能性がかなり高い。拒絶される可能性もあることを考えると、あまり現実的な話でもないが。今は会うことすらもできない以上、仕方ないだろう。


「分かったわ。こちらで協力できることがあれば、バックアップもするから、遠慮なく言ってちょうだいね」

「ありがとうございます」

「さてと、世間話はこのくらいにして。今日はそちらにお邪魔することになるけど……大丈夫かしら?」


 そう言えば、そうだった。今朝は小鳥のことで頭が一杯で、すっかり忘れていたのだが……今日は例の晩餐会の日ではないか。とは言え、私が何か準備をしなければいけない訳でもなし。ハーヴェンの方は今頃、仕込みに大忙しだろう。


「あ、えぇ……多分、大丈夫だと思います。先日、ちゃんと食材も渡しましたし……私自身、本日もこの後は明日の分の食材を交換するだけですので、そのままご一緒すればよろしいかと……」

「そう? それじゃぁ、20分くらい後にエントランスで待ち合わせでいいかしら? マディエル、2人のエスコートをお願いね」

「はぁ〜い。アフ、今からとっても楽しみですぅ〜」

「あ、うん……」


 今からとっても楽しみにして頂けるのは、いい事なのだろうけど。何だろう……私の方は妙に落ち着かない。やっぱりこの焦りは……ハーヴェンの食事だけではなくて、何かも取られてしまいそうな気持ちになるからだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ