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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第22章】最終決戦! 鋼鉄要塞・グラディウス
1020/1100

22−21 絵面が猟奇的過ぎる(+番外編「モフモフ達は鋭意活動中」)

 マモンは今頃、どうしているかな……。まぁ、あいつの事だから、世界の果てからでも何食わぬ顔で帰ってくるだろうけど。

 そんな事を考えながらも、無事にヤーティが言っていた「ミカエルさんの玉座」まで辿り着く。しかし、向こう側的には防衛対象にもなっているみたいで……今までの奴らとは存在感も威圧感も別物な4体の機神族が待ち構えていた。……感じからしても、こいつらはお飾りの小物じゃなさそうだ。


「大層なお出迎えだが……肝心の玉座には、神様とやらはいないんだな」

「みたいだな?」

「それなのに、こんな所で待ち構えているとなると……」

「うん、多分バレているんだろう。俺達が潜入しているのが」


 ルシエルが指摘するように、玉座は空っぽのまま放置されている。そして、ミカエルさんが玉座ごと入っていたと思われる檻の残骸も残されたまま。新しいご主人様や住人がいる様子もない。


「その割には、もぬけの殻じゃない? えっと、よーするに……僕達は目的地を見誤っていたってことかな?」

「いや、そうと決まったわけじゃないだろう。俺達の目的はロンギヌス経由で修復プログラムを稼働させること……って、ウォッ⁉︎」


 今回の最終目標はローレライの正常化であって、新しい女神様を痛めつける事じゃない。状況によっては、多少の手荒な真似をしてでも、女神様には大人しくなってもらう必要もあるのだが……本格的に叩きのめす必要もないと思う。


(なーんて思っているのは、どうも俺だけっぽいなぁ……)


 しかしながら、あのメガトン天使(仮名)さん達の方はバッタリ出会った途端に、殺意もバリバリと迸らせてくる。お部屋の様子を隅々まで拝見させて頂く間もなく、棍棒をくっつけたような腕を思いっきり振り回しては……周りの空間ごと粉砕しようと、遮二無二突撃してきた。


「……⁉︎」


 既のところで攻撃を躱した後に残るのは、それはそれは見事なクレーター。……いくら、嫁さん印の回復魔法があるとは言え。一撃食らっただけでもめちゃくちゃ痛そうだし、普通に致命傷になりそうだな……これは。


「とにかく、話は後だ。まずはこいつらを片付けるぞ。それと……リヴィエル!」

「ハッ! 承知しております、天使長様!」


 そうして2人で申し合わせたように、ルシファーとリヴィエルとが見事な手際で防御魔法を展開する。キッチリと綺麗に構築された防御魔法は、あっさりとメガトン天使の攻撃を受け止めるものの。……悪いことに、相手は1体だけじゃないんだよなぁ。


「もぅ! 仕方ないんだからぁ……堅牢な鋼鉄の決意を知れ、我は純潔の庇護者なり。クリスタルウォール、シックスキャスト!」


 地属性の強みを生かし、残り2体の攻撃をもしっかりと防御魔法で受け止めるベルゼブブだけど。……そう言えば、ベルゼブブは何だかんだで防御寄りだったな。だとすると、自然と攻撃役に回るのは……。


「攻撃は俺達の役目になりそう……だな。で、ルシエル。大暴れする準備はできてる?」

「無論だ。……今回も拳で制圧すればいいのだろう?」

「う、うん……そうなるだろうな。きっと、ロンギヌスの攻撃は望み薄なんだろうし」


 だけどね、ルシエルさん。いくらなんでも、いかにもな感じで指を鳴らさなくてもいいんですよ? そんでもって、鼻筋も立てないでくれないかな。明らかに、悪魔の形相だぞ……それ。


「うらぁぁぁッ! 図体がデカいだけの、ガラクタがッ! チビだからって、舐めるなよ!」

「ヒィッ⁉︎」


 ドウドウ、ルシエル。そもそも誰もお前をチビだなんて、言ってないぞ? セルフで怒りのツボを押すの、マジでやめておこうか?


「ちょ、ちょっとルシエル! いきなり、そんなに突っ込むなって……あっ」


 俺が言っている側から、ベコベコッと凹まされて。まずは1体、見事に陥落しました……。どうやら、嫁さんは相手を効率的にシメる方法も習得してしまったらしい。一発目で胴体の中心を狙ったかと思えば、彼女達の原動力と思われるカラクリをベキッと握りつぶして見せる。ここまでのヒントを貰えたら、俺も同じように頑張ればいいのだろうけど……。


(なんだけど! 絵面が猟奇的過ぎるって!)


 美少女天使が相手の胸元を弄ったかと思えば、心臓部分を木っ端微塵とか。……相手が機神族っぽい見た目だから、スクラップが出来上がるだけで済んでいるだけで。相手が生身だったらどうなるんだ……と思わず想像しては、ゾワっと身震いする。……うん、今はそんな事を考えている場合じゃないな。俺もセルフで怖がりのツボを押すの、やめとこう。


「グルルルル……ウラァッ‼︎ は〜い、こっちもスクラップの3枚下ろしができましたよ〜」

「そうなの? そうなの? だけど……それ、とっても不味そう……って、おっと! ハーヴェン! ベルちゃん達で防御魔法を展開してあげるから、ちゃっちゃと残りもやっちゃってよ!」

「へいへい、もちろん全部料理するつもりだよ? だけど、さぁ……」

「……うん。ハーヴェン、ガンバ。このままじゃ、活躍を全部ルシエルちゃんに持っていかれるよ〜?」


 そうだな。俺もせめて、半分は潰せるように頑張るよ。


「……ふむふむ。こうして、天使様は勇猛果敢にグラディウスの悪鬼どもに立ち向かい……悪魔と共に世界を平和に導くのでした……と」


 そんな中、戦闘に参加せずに熱心にメモを取っている猫顔の悪魔が1人。お嫁さんの背後で、随分な余裕をかましているが……ミカエリスさんはこんな時に、何をやっているんだ……?


「あのぅ……ところで、ミカエリスさんは何をしているんだ?」

「すみません、ハーヴェン様。セバスチャンはあまり戦闘が得意じゃないみたいで……それで、今回は記録役をお願いしているんです」

「えっ? そうだったの……?」

「うむ。よく、適材適所と申すだろう? マディエルがグラディウスに潜入できなかったが故、ミカエリスには道中の記録を頼んであるのだ」

「左様でしたか……」


 お嫁さんのリヴィエルに加えて、天使長様にもご了承いただいているんなら、俺が文句を挟む余地はないんだけど。……しかし、マディエルの代わりとなると……。


「……因みにな。ミカエリスさんが収集した情報はそのまま、マディエルへ流れる予定らしい」

「そ、そうか……えぇと、それってつまり……」

「……久しぶりに『愛のロンギヌス』の続編を出せると、マディエルからは喜びの返答をいただいたとかで……天使長様もリヴィエルも、とっても乗り気なんだ……!」

「そうなんだ……って、ルシエル! ストップ、ストップ!」


 明らかに怒りを滲ませて、フルフルと震えていたかと思ったら……またもや、怒号を浴びせながらスクラップ量産に勤しむ嫁さんだけど。そもそも、小説にされるかもって分かっているんなら……そこまでアグレッシブに大暴れしない方がいいんじゃないか? また、ルシエルに変なキャラ付けされそうだぞ……?


(あっ、違うな、この場合。……この暴れっぷりは多分……)


 八つ当たりも兼ねてるな、間違いなく。嫁さんは相変わらず、調達先も意味不明な怪力で大暴れしています。ハイ、合掌。

【番外編「モフモフ達は鋭意活動中」】


「はぅぅ! コンタロー、こっちにも食べ物持ってくるです!」

「言われなくても、分かっているでヤンすよ! えぇと……クラン達はリニアーテ方面担当でヤンすね。あそこは確か……」


 リニアーテは元から貧しい地域だった気がする。そんな事を考えながら、コンタローは大量の食料を詰めてクラン達に手渡す。

 今、彼ら「モフモフな小悪魔達」が行っているのはいわゆる、食糧支援。突如降って沸いた「神様の抗争」に巻き込まれた人間達に少しでも安心材料を提供するため、「ベルちゃん特製・クッキングシステム」で大量の食料を世間様に送り出していた。


「ウコバク! こっちにも食べ物、寄越せよ!」

「はいでヤンす! えっと……カイザー達の所はミットルテでしたっけ?」

「そうだよ! ほら、サッサとしろよ!」

「……どうしてゴブリンはこうも横柄なんでしょうねぇ……」


 それでも「まぁいいか」……と肩を落としながら、せっせと食料を運ぶコンタロー。小悪魔同士で虚勢を張り合ったところで、つまらない。


「ヒスイヒメ、そっちはどうでヤンす?」

「問題ありませんわ。しかし……天使長様と言うのは、本当に恐ろしい相手ですわね。……こんな所で信仰を集めるだなんて」

「全くだわ。……ホント、抜け目がなさすぎて、立派よね。で? こっちも食料、もらえるかしら?」

「もちろんでヤンすよ、ティデル。孤児院のみんなにもよろしくです」

「分かっているわよ。しっかり、この食料は天使様のご慈悲ですよ〜……って宣伝もしてくるわ」


 皮肉混じりで応じるティデルを見送りつつ……彼女の言う通り、天使長は抜け目がないと脱力してしまうコンタロー。しかしながら、ルシファーが「こんな事」を「小悪魔達に」命じたのは、純粋に人間達の信仰を繋ぎ止めるだけではないだろう。


(多分、天使長様はおいら達が退屈しないように、お役目を作ってくれたのと……悪魔が悪い奴じゃないって事を宣伝するつもりなんでヤンす。……あぅぅ。やっぱり、ルシファー様は恐ろしい相手でヤンす)


 そうして、要らぬ事にまで気づいてしまったコンタローは、余計な心配をしてしまうのだ。そんな天使長をお嫁さんだと豪語して、果たしてベルゼブブはこの先苦労しないのだろうか……と。


(ベルゼブブ様も抜け目はない方ですけど……。お頭とマモン様も、あの調子ですし。本当に大丈夫でヤンすかねぇ……)

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