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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第22章】最終決戦! 鋼鉄要塞・グラディウス
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22−1 ブッサイクな女神様

(さて……と。ここからが正念場……なんだよな。よっし! ここは1つ、平和のために頑張っちゃうぞ)


 俺とルシエル、マモンとリッテル。そして、ベルゼブブとルシファーの組み合わせに、急遽指輪持ちになったミカエリスさんとリヴィエル。ルシファーがこれだけのメンバーが集めたのは勿論、グラディウスさんにはできるだけ穏やかに機能停止していただくためだ。

 「指輪持ち」のメンバーはグラディウス突入要員に駆り出されることは、前もって予告もあったけれど。ただ……ルシファーによれば、事態の収束が難しい場合は「最終手段として」グラディウスを燃やし尽くすのも致し方ないと、マナの女神様から最終判断を頂いたそうな。だから、どうしても上手くいかなかった場合、強行突破や強制終了も止むを得ず……なんだけど。


(それはあくまで最終手段……なんだよな。それに、こっちには切り札もある。まだ、諦めるには早い)


 グラディウス陣営がどこまでの状況を把握しているのかは、俺には知る術さえない。ただ……少なくとも、俺達を攻撃対象としていない時点で、ルシエルのロンギヌスは見落としている可能性は高いと思う。ミカエルさんがヤーティ経由で託してきたのは、特別な機神族の修復プログラムを宿したロンギヌス。ルシエルの手元で「本来の姿」に戻ったロンギヌスは……追加の性能もバッチリですと言わんばかりに、持ち手に凛とした青い花を咲かせている。


「……ハーヴェン、準備はいいか?」

「もちろん。ここまで来たら、やるしかないだろ」

「そう、だな。うん、やるしかないのは、間違いない。ただ……」

「あぁ。……向こうは大丈夫かな」


 グラディウスはどうやら、小手先の雑兵で前哨戦の牽制するのはやめたらしい。だけど、その代わりと言ってはなんだけど……「彼女」がターゲットにし始めたのは、元同僚のドラグニール。よほどライバルが憎いと見えて、足元で飛び回る俺達には一瞥をくれることもなく、遥か先に見える大物霊樹に向かって白い閃光の束を放ち続けている。


「……しっかし、今回の神様はベルゼブブに負けず劣らず、悪趣味みたいだな? なーんで、あんなにブッサイクな女神様を象るかねぇ……」

「そ、そうね……。こんな状況で、そんなことを言っている場合じゃないのだろうけど……ちょっと、間抜けに見えるわよね」


 頭上でカパっとお口を開けると同時に、眩い光を吐き続ける「ブッサイクな女神様(マモン談)」の様子は確かに、リッテルが漏らしたように「間抜け」であることは間違いないだろう。だけど、ファニーなのは見た目だけみたいで……彼女が放つ攻撃の束は、容赦なくアドラメレクと竜族の連合部隊の分厚い防御魔法さえも穿つ勢いだ。


「とにかく、急がねばならん。幸いにも、リヴァイアタンが潜入口を用意してくれている。この先の突入は指輪を持つ者に限られるが、これだけの精鋭揃いであれば何とかなろう。皆が持ち堪えてくれている間に、我らは内部からグラディウスを叩く。そして……」

「ここはロンギヌスで正常化プログラムを打ち込むことを、最優先事項とすれば良いでしょうか」

「……そうなるな。なんでも、ヤーティの話では、勝手口から角を2回曲がった区画がミカエルが囚われていた場所らしい。そして……そこはミカエルが玉座としていた部屋だそうだ。ともなれば……」

「そこが機神王・ヴァルシラの玉座である可能性が高そうですね」

「ラミュエルさん……」


 潜入できないなりに、きちんと見送りに来てくれたのだろう。ルシファーの言葉に的確な反応が返ってくるので、そちらを見やれば。不安と信念とをごちゃ混ぜにしたような面持ちで、ラミュエルがポツンと浮かんでいる。そして、彼女の隣には潜入口を拵えた張本人のリヴァイアタンまで揃っていた。


「ごめんよ、マモン。僕達が見送れるのはここまでみたいだ。中途半端にしか道を用意できなかった上に……大変な役目を押し付けてしまって、悪いね」

「いや? これだけ穴を開けられりゃ、十分だろ。おかげさまで、相当のショートカットができるみたいだし。俺としては、文句もねーぞ。ただ……」

「うん、奴らも女神様のお怪我をそのままにしておくつもりはないみたいだね。だから……急いだ方が良さそうだ」


 あちゃー……なるほど。女神様のお怪我を治すラディウス天使はしっかりいらっしゃるのね。マモンとリヴァイアタンが睨む先からは、さっきまでの静けさが嘘のようにカクカク天使が押し寄せてくる。結構な頭数を揃えて、迎撃もバッチリですと言った風情だ。


「チッ! 意外と抜け目ねーな、あいつら。しっかたねぇ。ここは、俺が……」

「いや、マモン達は先を急いで。ここは僕達に任せてよ」

「だけど……いくら強くなったからって、あの数はお前だけでどうこうできるレベルじゃ……」

「あれ? 僕はさっき“僕達”って言ったんだけど? ね、ラミュエルさん?」

「えぇ、そうですわね。リヴァイアタン様」

「へっ……?」


 そんなことを言いながら、先程までのちょいキザな表情を剣呑に挿げ替えると……示し合わせたように、隣にいるラミュエルさんと視線で頷き合うリヴァイアタン。そして……!


「いいかい! みんなはきっちり、役目を果たすことだけを考えるんだ! ここは僕達に任せて、先に行っておいで! ラミュエルさん、頼むよ!」

「もちろんです、リヴァイアタン様! 僭越ながら……祝詞を解放させていただきます! 望みに応えよ、その名を示せ! 羨望の真祖たる深淵と、その身に宿りし海竜の激情を解き放たん! 我が欲望をしかと受け取れ……エンヴィマスター・リヴァイアタン!」

「オーケイ、愛しのベイビー! ここは……2人で派手に行くよッ!」

「はいッ!」


 あぁ……そういう事かぁ。リヴァイアタンはラミュエルとの契約をしっかり済ませていたのね。

 精霊と同じように、俺達悪魔も祝詞を解放してもらえれば、「いつも以上に」本領を発揮できる。そして……今までのマモンの暴れっぷりを聞く限り、祝詞解放の恩恵を受けられるのは真祖も同じらしい。


(しかし、こりゃぁまた……ご立派なことで……)


 ……そう言えば、リヴァイアタンの「本気」は初めて見る。今回の相手が相手という事もあり、もう遠慮はいらないという事なのだろう。見れば、祝詞を解放されて「本気を出した」リヴァイアタンは……頭にチョコンと黒い仮面を載せた海竜の姿に変身していた。

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