アンケートに答えたら異世界に来たよ。
サイト小説のアンケートに答える。景品の特製バインダーが気になったから。
長い質問に答えて答えて……だんだん作業化した指先は、最後の〝異世界に行く?〟にもチェックを入れた。
『うん? 異世界に行きたいかどうかを問うてるわけ? チートもらえて巨乳神官と獣人女戦士がお供なら考えても良いかな。あと特製バインダー』
と思っていると、見たことのない部屋に居た。床には丸くなって寝る女。モフ耳がピクピクと動いている。おやまあ。
そんな事より、左手にあるのは特製バインダーじゃないか! これこれ! これが欲しかったんだよ!
テンションの上がった俺は、バインダーの材質や構造、バネの強さや、ロゴの質感などを確かめながら、荒くなった息を整えて、暑くなった頭をバインダーであおいだ。
と、地面に同じく景品のボールペンが落ちたが、そっちには興味が無いので目線をずらすーーと目が合った。
「おはようございます」
と言う女は全裸で乳が丸出しだ。しかし筋肉に回されたのか、その双丘は正しいブラ診断を受けたとしても、AからBといったところか。
その前に乳房の横に書かれた蛍光色のロゴが気になる。指を伸ばすと避ける様子もなく、皮下筋肉を思わせる、スベスベ乳房にプリントされたロゴをなぞる。
「質感同じかよ」
思わず声に出すと、
「はい、ご主人様」
と女が答えた。まるでそれが誇らしい事のようにとても嬉しそうだ。
何だこれは? サイトの陰謀か? 妄想こじらせてあっちの世界にピクニックしちゃったのか? 現実の俺はどこ?
とプチ・パニックになっていると、おもむろに部屋の扉が開いた。そこには絵に描いたような巨乳の女。漫画〝泡いい病院〟の〝おねだりシスター〟にそっくりな女は、ビックリした目で犬女を見ると、
「こら! またそんな格好して、ご主人様が襲われたときに対処できないでしょう!」
と叱りつけ、
「まったく」
と言いつつ、部屋の隅にある板金鎧を軽々と放り投げた。
それを見事にキャッチした犬女は、
「パイこそ無防備」
と言うと、ニヤッと笑ったパイと呼ばれた巨乳女が、スカートをたくし上げる。そこには鎖が裸の上に巻き付けられていた。
あれじゃ肉や毛が挟まるだろうに。と思う間に、ゆったりとした服を戻す内腿に、犬女と同じロゴが蓄光の緑を主張する。
自然と伸びる指が、拾ったボールペンに押し留められ、
「ご主人様も無防備ですよ、チート・ペンが落ちてますわ」
と叱られた。説明を求めると、チート・ペンでチート・バインダーに書き込むと、望んだ現象を起こせるらしい。
さらに既にチート・グッズの恩恵で様々な強化を受けた俺は、神をも超えるチート人間らしい。
うん、一応頭に浮かべた状態になってるな。巨乳も犬女も、チートもまあまあ望み通りだ。
「さあ、今日も冒険者組合に行って、Sランク・クエストを受けましょう」
とパイが言う。それに反対するオツという犬女が、
「ご主人様、そろそろ赤龍の奴が調子にのってるから、また懲らしめに行きましょう」
と言う。え〜、それしなくちゃいけないの?
「いえいえ、王国の後宮でご主人様をめぐっての争いが起こってますから、まずは女百人斬りから取り掛かってください」
と、パイがのたまう。ウザい。めんどい。オツとパイがウザい。そして微妙に思ったのと違う。ロゴがもう少しシャープだと思ったのに、ブロック体のモッサイ字体だなんて、センス無さすぎだ。
俺はバインダーに魔力を通すと、電子メモのように光る文字を書いた。
「異世界やめる?」
チェック欄に即座にペンが走った。