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アドの冒険  作者: ほまりん
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第15話 ハイエスタでの冒険②

お待たせしてすいません。前回までの話を覚えていない方も多いと思われます。大学生活が忙しく、中々執筆に時間を割くことが出来ませんでした。ここまで投稿期間が空いてしまったことお詫びします。

 呪われた草原ハイエスタ。城下町スフィアから、徒歩で三日の所にあるD級冒険区域だ。その場所へ俺たちは強行軍を敢行し、僅か6時間ほどで着いていた。

 呪われた草原とは、スケルトンのような死霊族や小さな悪魔の住処になっていること、D級冒険区域にも関わらずD級冒険者達の死亡率を著しく高めていることからそう称されている。

 高い死亡率の原因の一つはネチャリスパイダーの存在。レアモンスターであるため遭遇しにくいとはいえ、彼はCランクモンスターだ。出会ってしまえば、逃げるという選択肢が最も利口だがネチャリスパイダーのある特性が逃走の成功率を下げている。

 もう一つの原因がモンスターの群れとの遭遇確率の高さだ。一割程度しかないが、それでも他の区域に比べれば高く、その危険性は言うまでもない。俺達が今日、群れとよく出くわすのは『悪運』だけでなく、ハイエスタの特徴でもあった訳だ。それでも普段以上にスキルが張り切っているのは間違いないが。


 ハイエスタに来るまでの道中、ヘインさんにある一つの提案を持ちかけられた。その内容は俺とガルにとってはかなり嬉しいものだった。

「君とガルくんを僕達の都合で振り回してしまうからね。その代わりといっては何だが、君たちに、パーティを組んでいる間は戦闘技術の手ほどきをしようかと考えているんだ。どうだろう?」

 返答はもちろんイエスだ。A級冒険者達からの指導を断る訳がない。


 げんこつを食らったギスターさんとリリーさん、げんこつを与えたサミリアさんが、俺とガルとヘインさんの方へ戻ってくる。全員が揃った所で早速、それは開始された。

「まず、体の使い方がなっていないね。動作の一つ一つに無駄がある」

「うっ」

 いきなりヘインさんからきつい一発をもらう。

「魔力感知も全然ダメ。せっかくガルちゃんと魔力を共有してるんだから、もっと活かしなさいよ」

「ぐっ」

「剣の扱いはうめぇがそれだけだ。狙う場所が悪すぎて話にならねぇ」

「げふっ」

「敵行動の予測が甘い」

「ごはぁっ……!」

 ぼろくそだ。完全ノックアウト。精根尽きた戦士のように、ばたりと倒れる。

 分かってはいたが、容赦がない。だが遠慮せずに言ってくださいと言ったのは俺だ。痛む心を堪え、ぐぐっと起き上がると具体的な指導が行われ出す。まずはヘインさんからだ。


「言いたいことはたくさんあるけど、とりあえず一つだけ。君は、力み過ぎだ。ずっと力が入っているから、無駄に体力を消費してしまう。柔軟さも失われ、ここぞという場面で力を出し切れていない」

 なるほど。そんなこと少しも気づかなかったし、考えもしなかった。このまま一人で冒険していては気づけなかったことだろう。

 だがそういえば昔、おばさんにも同じようなことを言われた気がする。

「とりあえず、全ての動作を全力で、という意識を無くそう。必要な時に、必要な場所に力を込めるんだ。それが出来なければ、きっとどこかで躓く」

「分かりました」

 彼の言葉に頷く。今まで盲点だった短所を、こうして明らかにしてもらえるのはとてもありがたい。彼の説明が終わった所で、次はリリーさんの番へと移る。

 

「さてと、私からは魔力感知についてね。さっきも言ったけど、あんたはガルちゃんと魔力を共有してるからさ。魔法に携わる職業ジョブについてないにしては、魔力の数値は高い方なの。当然だけど、それに比例して魔力を感知する能力も優れてるはず。ところがあんたはまるで出来ていなかった」

「……はい」

 厳しい、しかし彼女は間違ったことは言っていない。苦い顔をしながらも反論はしなかった。

 そんな俺を見て彼女は少し驚いた顔を見せる。

「魔法を使うモンスターと戦うのが初めてだったこと、言い訳しないのね」

「しても、意味がないですから……」

 苦笑して彼女の言葉にそう返した。

 確かに魔法を行使するモンスターとは初戦闘だったし、それを言い訳にしたい自分も確かにいる。だけど、そんなことをしたって何も始まらない。

「ふ~ん、そっか」

 彼女はそっぽを向くようにくるりと振り向く。だが、どこか機嫌は良さそうだった。

「今あんたが一番出来るようにならなきゃいけないのは、間違いなく魔力感知よ。慣れない内は難しいかもしれないけど、がんばりなさい」

「がんばります!」

 彼女の後ろ姿に威勢よく返事する。何日このパーティを組んでいられるのかも分からないけど、解散してしまう前に何とか出来るようになりたい。

 何せ魔法を使うモンスターが現れるのはDランクからで、この冒険が終われば暫くの間は魔法に触れることが出来ない。魔法教訓施設にでも向かえば話は別だがそれには金がかかってしまう。

 その上、今はAランクの人間が行使する魔法を生で体感出来るのだ。この機会を逃してしまえば、一気に損をすることは明白だろう。


 そして次はギスターさんからの指導だ。普段の彼の態度を考慮すると、かなり罵られそうな気がする。

「まず初めに言っておくが、お前の剣は十分なレベルまで達している。『剣術』スキルがあるのは知ってたが、あれは剣の腕前が一定の域に達したら誰でも会得出来るもんで参考にもならねえ。あまり期待せずに見てたんだが、予想以上だった」

「ありがとうございます」

 予想に反して褒められてしまった。ここまで厳しいことしか言われていなかったので少し嬉しくなる。

しかし本題はここからだった。

「だがその技術を全く活かし切れてねぇ。いつだってその場しのぎの剣筋、立ち回り、クソみてえな有様だ。良いか、常に次を考えて動け。攻撃の選択肢は大きく分けて二つある」

「二つ?」

 よく分からず、首を傾げる。

「一つ目は急所狙い。急所さえやりゃあ敵は死ぬ」

「はい」

 戦闘における、基本中の基本だ。

「二つ目は、敵の行動の幅を狭める攻撃だ」

「行動の幅を狭める……」

「ああ、一番分かりやすいのはどこでも良いからとにかく傷を負わせることだ。負傷しちまえば、満足なパフォーマンスは発揮出来ねぇ」

 もっともだ。

「しかし、これは確かに有効な手だが、こればっか狙うのは頭の悪ぃ奴のすることだ。敵だって傷を負わないよう注意してっからな、中々攻撃を当てさせちゃくれねぇ。にも関わらず、てめぇは馬鹿の一つ覚えみてぇに剣を振り回してよぉ。何でもいいからダメージを、ってな感じで戦闘してやがる」

「うっ……」

 異論はなかった。自分でもギスターさんの言ってることに心当たりがありすぎる。

戦いの最中では攻撃、回避、防御とやることが多い。俺は特に回避に重きを置いているため、攻撃は半分テキトーになってしまう。


「だが行動の幅を狭めるってのは、それだけじゃねぇ。敵の動きを制限する方法なんて他にもいくらでもある」

 ギスターさんは一息つき、ポーチに入っていた水の入った竹筒を取り出し中身を飲んだ。

 ごくごくと喉を動かす良い音が耳に届く。

 その時ちらりと周りに目をやると、話を終えたヘインさんとリリーさんが、俺が倒したモンスターの落としたドロップアイテムを回収しているのが目に入る。

 ギスターさんは水を飲み終わると、濡れた口元を腕で拭い話を再開した。

「例えばだが、敵が正面から突っ込んできて、左肩に剣を振り下ろそうとしてきたとする。てめぇならどうやって凌ぐ?」

「右へ避けます」

 迷わない。

「どうしてだ?」

「まず、左に避けるのは無理です。左肩を狙われているのに左へ回避しようとしても間に合わず、おそらく右半身のどこかが斬られてしまいます」

 長くなるが、彼の問いに丁寧に答えることにした。

「バックステップして後ろに下がるというのもあまり意味がありません。敵が正面から突進してきているのなら、左肩への攻撃は避けれても、勢いそのままに追撃してくる可能性が高いからです。剣の振り下ろしならば、ジャンプして回避することもしゃがんで回避することも難しいはず」


「残る方法としては、右に避ける、剣を自分の武器で受け止める、敢えて突進してくる敵へと接近し懐に潜り込んで迎え撃つ、のどれかだと思うんですが、武器で受け止めようとしても俺の力では足りないだろうし、最後の方法はリスキー過ぎます。それで右に避けることにしました」

 この答えで合っているのだろうか。少し不安になって、ギスターさんの顔色をちらりと伺う。彼の表情は、期待通りだと言うようにいつもの獰猛な笑みを浮かべていた。

「上出来だ」

「ありがとうございます!」

 どうやら正解だったらしい。そう思い喜びで胸が高鳴るが、彼は別に正解だとは言っていないことに後から気づくことになる。


「てめぇの説明通り、今の状況なら右へ回避するのが最も有効な手だ。それは間違いねぇ。だがよぉ、てめぇが敵側だったとして、それを逆に活かせやしねぇか?」

「?」

 どういうことだろうか。

「要は、敵からしたらてめぇが右に避けるのは分かりきってるんだよ。左肩を狙う時点でな」

「あ……」

 そこで気づく。さっきギスターさんに質問された時、俺はすぐに「右に避ける」という解を導き出すことが出来た。ならば当然攻撃する側だって、そうやって自分の攻撃を防ぐことは分かっていることだろう。

「そういうこった。相手が右に避けることを予め想定してりゃあ、隙の多い振り下ろしも悪手にはならねぇ。むしろ相手の行動を誘導出来る一手になる訳だ。分かるか?」

「はい」

「これが行動の幅を狭める方法の二つ目だ。最初っからこんなに難しく考える必要はねぇから、とりあえず、こうしたら敵はこう動くぐれぇのことを常に頭の隅で考えながら戦え。そうすりゃあ今よりはちっとはマシになるだろうよ。ついでにさっきの問題の正解はてめぇがリスキーだからと外した、敢えて敵に突っ込む、ってのが正解だな。人もモンスターも予想外の事態に動揺するって所は変われねぇ、どんどん敵の意表を突くよう心がけていけ」

「はい!」

 彼らの話は本当にタメになる。俺の未熟さが露呈していくのは少し悲しいが、それが気にならない程には喜びが勝る。

 そして最後に残ったサミリアさんの話を聞くが彼女の言葉はあっさりしたものだった。

「私からは敵の行動に関して話すつもりだったが、ギスターが大方話してくれた。よって特に言うことはない」

 そう言い、彼女は話を終えた。既に十分収穫があったのでそれでも満足だ。


 その時ちょうど、ヘインさんとリリーさんがドロップアイテムを回収し終え、再び全員が集合する。

さっき戦った群れは今日一番の規模で、大体二十匹ぐらいだっただろうか。それら全てを俺が倒した訳ではなく、五匹ぐらいは皆さんが倒してくれて、俺とガルVS多数の構図にならないよう、それ以外のモンスターも常に何匹かは足止めしてくれていた。

 手に入れたドロップアイテムは十三個。

「僕は浅はかだったね……」

 集まってすぐ、ヘインさんは自嘲気味にそう述べた。

「どうしてこれほど単純なことに僕は気付けなかったんだろう」

「?」

 彼の言葉の意図がよく分からず、首をひねる。すると俺の様子に気がついた彼が、説明を始めてくれた。

「今回は二十一匹中、十三個のドロップアイテムが入手出来た。確率で言えば六割越えだ。しかしハイエスタに来てからの戦いでのドロップ確率は、今回を除けば平均して三割程度。どういうことか分かるかい?」

「えっと……」

 想像がつかない。どういうことだろうか。

「スキルがもたらす効果は常に所持者に対してのみ、ということがヒントかな」

「あ!」

 そこでようやく、気づくことが出来た。ギスターさん達もはっとしたような表情になる。しかし確かに、気づかなかったことが恥ずかしい程に単純なことだ。

「『幸運』は僕にしか効果をもたらしてくれないから……」

「今回だけドロップアイテムの確率が高かったのもそれが原因だろうね。参ったな、予定が狂ってしまった」

 ヘインさんの言う予定とは、簡単に言えば、俺の『悪運』でネチャリスパイダーをおびき寄せ、『幸運』でネチャリスパイダーからのレアドロップ率を上げるというもの。『悪運』に関しては何も問題はないのだが、今回の計画の穴は『幸運』の方にある。つまり何が言いたいのかと言うと。

「これでは君に、ネチャリスパイダーを倒してもらわなければいけない」

「そういうことになりますね……」

 Eランクの俺が、Cランクのネチャリスパイダーを討伐しなければ、『幸運』は何も働いてはくれないということだ。

「ランクが2つ以上高いモンスターの討伐を手助けするのは規則で禁止だから、僕達がネチャリスパイダーを追い詰めて、止めだけ君がするという訳にもいかない」

 へスターさんは困ったように顎に手を添え考え始めた。ランクが1つならばまだしも、2つも上では、一体倒しただけでもランクアップの条件を満たしてしまう。

 さっきの戦いで、サミリアさんにエンチャントをしてもらいDランクのモンスターを倒していたが、そういった場合には殆どの経験値は上級者であるサミリアさんへ流れる。そのため、俺自身にはあまり経験値は入っていないのだが、Cランクのモンスターを倒してしまってはそうもいかない。

 僅かに経験値を得ただけでも、俺はランクアップしてしまうだろう。それでは俺の実際の戦闘技術などが向上しない為、正しい強さが分からなくなってしまい、結果、冒険者組合に迷惑をかけてしまう。どれだけランクが上がっても、技術が無ければ倒せる相手でも倒せなくなってしまう。

 だがそこで思わぬ所から、思わぬ意見が飛んで来た。

「ならこいつを、一人でネチャリスパイダーを倒せるレベルまで上げたらいいじゃねえか?」

 あまりにも予想の斜め上を行く言葉に、俺もヘインさんもばっと声の発信源へ顔を向けた。

 そこには俺が今までに見た表情の中で、一番楽しそうするギスターさんの、厳つく口角を釣り上げた笑みがあった。

 この発言が、大きく俺達のハイエスタでの予定を変えることになる。

これだけ投稿期間が空いても、ブックマークを解除しなかった読者の方に向けて……

ありがとうございました!

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