第10話 ガルの登録
再び説明回です。説明ばかり申し訳ございません。なるべく説明に充てる文字数を減らすよう心掛けました。
「冒険者カードの更新が終わりました。Eランク、おめでとうございます。新スキルが2つも発現していましたよ」
「2つ?」
冒険者組合に着き、初めに行ったのは俺の冒険者カードの更新。この後にガルの登録をする予定だ。
ソフィーさんが俺のEランク昇格への祝辞とともに冒険者カードを渡してくる。俺はスキルを2つも取得していたらしいが、心当たりがあるのは1つ、『調教』だけだ。もう一つは何なのだろうと心を躍らせながら、カードの詳細を見る。
アド・スミス 14歳
ランクE
力0 物理防御0 敏捷0 技術0 魔力289 魔法防御289
適性 敏捷、技術
職業 探検家
魔法 なし
スキル 『悪運』 効果:何かと悪いことが起きる。
『幸運』 効果:何かと良いことが起きる。
『剣術』 効果:剣を上手く扱うことが出来る。
『武器強化〈剣〉』 効果:装備している剣の切れ味上昇。
NEW『調教』
効果:適性のあるモンスターとの意思疎通が可能になる。また、それらのモンスターを調教し、仲間とすることが可能になる。調教出来るモンスターの数は、スキル所持者の力量に依存する。
NEW『不屈』
効果:戦闘を行う際、諦めない限り時間経過と共に身体能力が向上していく。戦闘が終了した時、元に戻る。体力の減少量の低下。
「不屈……」
新スキルを見てぽつりと声を漏らす。諦めない限りとあるが、諦める諦めないの基準はどこで判断しているのだろうとどうでも良いことを考えた。ぽけー、と眺めてる間に一つのことに気づく。
――もしかして、あの時の俺があんなに強かったのはこれのおかげ?
それならばあの強さにも納得がいった。というよりも、それ以外に考えられない。だがそうだとして、あの青い光は何だったんだろうか。ダメ元でソフィーさんに聞いてみよう。
「青い光、ですか。すみません、私にも分かりません」
やはり知らないようだ。今度、機会があれば他の職員さんにも聞いてみよう。誰も知らなかったらその時はその時だ。
「お役に立てず、申し訳ございません」
「いや、ソフィーさんが謝る必要なんて……」
知らないことは仕方がない。だから、謝罪の必要なんてないはずだ。
青い光の正体は謎のままだったが、一つだけ推測していることがある。
スキル『調教』と『不屈』、この2つのスキルをゲットしたのは青い光に包まれた時なのではないだろうか。あの後、力が増幅したのは『不屈』を手に入れたからで、その後ガルを仲間に出来たのは『調教』を手に入れたから。その可能性が一番高いような気がする。
「Eランクに昇格しましたので、一つだけ新しくスキルを覚えることが出来ますよ」
ソフィーさんの言葉に、冒険者カードから顔を上げた。そういえばと、過去にされた説明を思い出す。ランクが上昇すれば、いくつかのスキルの候補の中から、一つだけ選べると教わった。
「アドさんがお選び頂けるのは、『状態異常耐性〈毒〉』だけですね」
「一つだけ!?」
「はい」
スキルの候補は人によって変わる。数も種類も全てが異なり、レアスキルが出ることもあればノーマルスキルしか候補にないこともある。今回の俺はノーマルスキル一つだけという最も悲しい結果だ。既にNEWスキルを2つも覚えてるのだから贅沢は言えないが、やはり落ち込む。
しょんぼりと項垂れていると、励ますような声が耳に届く。
「そう落ち込まないでください。確かに候補が一つというのは残念ですが、『状態異常耐性〈毒〉』はかなり優秀なスキルです。様々な場面で役に立ちますよ」
ソフィーさんの言葉に元気を出す。そうだ、こういうのは量より質。たった一つでも良スキルだったのなら何も問題はない。彼女の言葉が元気づけるためだけのもので、嘘だったらかなり凹んでしまうが。
『状態異常耐性〈毒〉』を入手し、説明を読む。効果はその名の通り、毒に対する耐性が出来るとのことだった。
それにしても、スキルが増えかなり冒険者カードが見づらくなってきた。どうにか出来ないかと相談すると、効果説明の表示は省けるらしいので省いてもらう。かなり見やすくなった。
ステータス更新を終え、次はいよいよガルの登録に移る。登録すれば、冒険者カードとは違うがそれと同じ、ステータスが記載されたカードが発行される。そのカードの名称はモンスターカード。
ガルのステータスの初披露だ。調教されたモンスターは、テイムされる際になんらかのスキルを獲得するらしい。調教師の魔力が体内に流れ込んだ際、その魔力がスキルの発現を促すそうだ。
調教師側は、モンスターの魔力を受け取ってもスキルを取得できないと説明された。人間がモンスターから魔力を受け取ることは、経験値を得ることと酷似――決して同じではない――していて、特別な変化は起きないとのことだ。
ガルは職員さんに組合の奥へと連れていかれ、そこで登録を済ませる。早く早くとワクワクしながらガルの帰りを待つ。
しばらくして
「ガルっ!」
「おおん!」
尻尾を振りながらガルが戻ってきた。初めは「ガルル」とか「グルル」とか物騒な鳴き声だったのに今は完全に犬の鳴き声だ。ガルの頭を一撫でし、モンスターカードを受け取った。ばっと覗き込む。
ガル・スミス 0歳
ランクE
力318 物理防御215 敏捷298 技術160 魔力289 魔法防御289
種族補正 +敏捷 -技術
適性 力
魔法 なし
スキル NEW『忠臣』
効果:主君の戦闘時、全能力値が1.2倍。主君が危機に陥った際、全能力値が倍化。
……普通に俺よりも強い。魔力と魔防が俺と同じ値なのは、俺と魔力を共有しているからだ。また、魔力の少ない俺と共有しておきながら、この2つの値が高いのは流石はモンスターといったとこだろう。その魔力の高さから魔物と称されることもある。
種族補正とはモンスターカードにのみ記載される項目で、それぞれの種族によって補正のかかる能力値があるらしい。例えばガルの属するウルフ族ならば、敏捷が高くなり、技術が低くなるといった具合だ。
種族補正の項目があり、職業の項目が無いこと以外は、これといって冒険者カードとの違いはない。ガルが手にした新しいスキルに目を向ける。
「この場合の主君って俺のこと?」
ぶんぶんと尻尾を振り、心の中で肯定してくる。俺は仲間だと思っていたのだけれど、ガルの中では主従の関係だったらしい。テイムする側とされる側なら、むしろガルの認識があっているのだろう。
……それにしても、ステータスの倍増とは凄くないだろうか。今はまだ効果は薄いが、ステータスが上昇するにつれ、とんでもない威力を発揮すると思う。
ガルの登録が終わり、最後に借金の額や返金の仕方の相談を行った。ここでは結果だけを伝えようと思う。
まず、治療額は47000ペリーだった。利子も含め、キリがいいので50000ペリーで返すことにした。期限は1年だ。5日で1%ずつ(単利での計算)利子がついていく、という方式もあったが、合計金額が50000ぺリーを超す前に返せる気がしないので止めておいた。
返金が間に合わないまま1年を過ぎれば、俺は問答無用で奴隷の身に落とされてしまうらしい。奴隷になっても、最低限の生活は保障されているが、それでもやっぱり嫌だ。俺は『冒険者』として生きていくと決めているのだ。
冒険者組合でやることを全て終えた俺は、建物の外へと出る。ガルの背に乗り、次の目的地を目指して出発した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おばさん、ただいまっ!」
宿屋のドアを開け、中へと駆け込む。おばさんの姿を捉えてすぐ、開口一番に挨拶をした。いきなりの出来事におばさんは目を丸くしている。俺に続き、ガルが建物内に入ってきた時は更にその目を大きく開いた。
だがすぐに平静を取り戻し、前と変わらない笑顔で「おかえり」と優しい言葉をくれた。妙に懐かしく感じる。
「心配したよ、全然帰ってこないから。冒険者組合まであんたの安否を確認しに行ったほどだ」
「えへへ、ごめんね」
俺を気遣ってくれるおばさんの優しさが胸に沁みる。思わず笑みが零れてしまった。
「後ろのはなんだい」
「ガルだよ。俺がテイムしたんだ!」
「がおんっ!」
おばさんの質問に返答する。ガルは「初めましてっ」と元気に咆えていたが、多分意味が伝わっているのは俺だけで、周りの人にはワー・ウルフの強化種が咆えているようにしか見えていないだろう。最も、今のガルからは、ただのモンスターだった頃の垢は抜けており、恐怖を与えることはないはずだ。
「あんたの部屋は空けておいたよ。うちはそこまで繁盛してるって訳でもないしね。それと、あんたが丸々いなかった2日間の代金はいらないが、今日からはまたしっかり払ってもらうよ」
「分かった!」
おばさんの言葉に頷く。だが、今の俺は一つ問題を抱えていた。
「……けど、その、今日の分のお金はなくて」
そうだ金がない。手元にあるのは1000ペリー。一泊代は確か、2000ペリーはかかるはずだ。
「飯抜きの泊まりだけなら800で済むが、それでも足りないかい?」
「それなら何とか……」
今日の夕食と明日の朝食は諦めなければならないが仕方ない。そもそも、この宿屋では800ペリーで宿泊だけなんてこと出来なかったはずだ。
「他の客もいる。あんたにばかり贔屓は出来ないが、今回はそれで認めるよ」
「ありがとうございます!」
融通を利かせてくれるおばさんに頭が下がる。この人にはお世話になってもらってる記憶しかない。いつかこの恩を返そうと、心に誓った。
「とにかく、今日はゆっくり休みな。うちの部屋はまあまあでかいから、詰めればその子も入れるだろう」
「はい」
ガルを連れ、2階にある俺が借りている部屋へと向かう。マイアおばさんには明日も休めと言われたが、金銭の都合上そういう訳にもいかないようだ。
明日からはまた冒険者稼業に戻ろう、そう考えながら、俺はギシギシと音を立てる階段を上った。
先日、初めてポイント評価をいただき、感激のあまりスクショしてしまいました。
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今週はリアルが忙しいため、少し投稿が少なくなるかもしれません。申し訳ないです。




