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アドの冒険  作者: ほまりん
10/18

第8話 治療院にて

 いくつかのブックマーク、本当に嬉しいです。それを心の支えとして励んでいきたいと思います。

 今日中に投稿できるよう急いだので、文章が荒れています。誤字・脱字があれば、報告よろしくお願いします。

 大都市スフィアには数多くの治療院が存在する。治療院で働くのは、確かな教養がある医者か、教会で神聖魔法を賜ったシスター達だ。治療院の種類は様々にあるが主に二つに分かれており、それぞれ病気を患った人達用、もしくは重い怪我を背負った者達の為の治癒用の院がある。後者のタイプの中には冒険者専門の治療院があり、それらの治療院は冒険者組合と提携して経営されている。今回アドが運び込まれ、治療されたのもそういった冒険者専門の治療院だった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 俺が意識を取り戻したのは、白くてふかふかのベッドの上だった。目を開けると、灰色の天井が目に入る。知らない天井だ。

 起きた直後で眠気がとれず、ぼんやりとしたまま顔を横に向ける。そこにはベッドの隣で丸まって寝ている、ワー・ウルフの姿があった。俺が起きた気配を察知したのか、ぱちりと目を開け顔を上げる。鼻に斜めに走っている傷跡と、額に描かれた紋様を確認した。

「おはよう」

「おんっ!」

 挨拶すると、腰を上げ元気に返事を返してくる。言葉は分からなくても思いは伝わる。かなり俺の目覚めを喜んでくれているようで、「嬉しい!」と心の中で連呼していた。尻尾もぶんぶんと振られていて、すごく愛らしい。

「あ、シスターを呼びに行ってくれるの?」

 どうやら、俺が起きたことをここの治療院の人達に伝えてきてくれるらしい。大丈夫かと尋ねると、「わんっ」と元気な答えが返ってくる。胸を張り、「僕にどんと任せて」と心で言ってきた。

 この感覚は新鮮で未だになれない。試しに、こっちから「気を付けて行ってきてね」と口ではなく心で伝えようとしてみる。すると上手くいったようで、「了解!」という溌剌な返事が聞こえた。そしてそのままダダダと走っていってしまう。

 ワー・ウルフの『強化種』がこんな所で走ったら危ない。もう行ってしまったのだから注意しても仕方ない、が、一応「駄目だよ」とワー・ウルフに語り掛けるように心で言ってみると「分かった」と返答があった。どうやら離れていても心は通じ合っているようだ。


「ワー・ウルフの名前、考えなきゃなぁ」

 新しい仲間が戻って来るまでの間、そんなことを考えながら窓の外を眺める。いつもと変わらず青い空を流れる雲が、心を落ち着かせてくれた。寝込んでいたため体はまだ怠いが、心はどこか晴れやかだった。


 スフィアは今日も、快晴だ。






 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 ばたばたと足音が聞こえてくる。廊下で誰かが走っているのだろう。段々と音が近づいてきて、この部屋の前まで達する。ドアは開いていたので、そのままダッと二つの影が中に入ってきた。

 一つは見たこともない少女だった。綺麗な青い髪が特徴的で、瞳が大きく開かれている。とても整った容姿をしていた。格好から察するに彼女はシスターだろう。この治療院で働いているのではないかと思う。

 もう一つはガル――さっき決めたワー・ウルフの名前――の影だ。走ったら駄目だと注意したのだが、どうやら急ぐシスターを、仕方なく後から走って追いかけたらしい。ガルの足音にしてはさっき聞こえていた音は小さかったので、なるべく静かに走ったみたいだ。偉いと褒める。


「はぁ、はぁ……お目覚めになられたんですね」

 彼女はこの部屋に急行してきた直後で、息が整わないままに話しかけてきた。そこまで急がなくても良いのにと思う。一つの建物内なら、歩いても走ってもそこまで時間は変わらない。

「はい、お陰様で元気になりました」

「よかった……」

 俺の返事にほっと一息つくシスター。心から安堵しているようだ。そこまで心配してくれていたというのは、素直に嬉しい。可愛い子に心配してもらって喜ばない男はいないと思う。


「実はあなたが、私が初めて持った患者さんで……。ミスのないよう同僚に付き添ってもらいながら治療に取り組んだのですが、それでもちゃんと出来ているか心配で」

 その後に彼女は「本当に良かった」と、続けた。それであんなにも気にかけてくれていたのかと合点がいく。それにしても、彼女が初めてだということに少し驚いた。

「初めてで、あの傷をここまで治せるなんて凄いですね」

 俺の体にはかなり傷が入っていた。特にお腹の部分の傷はかなり重傷だったはずだ。しかしさっき確認した限りでは、傷跡は完全に消えていた。とても、初仕事だとは思えない。

「がんばって、修行しましたから」

 少し照れた笑顔を浮かべる彼女はとても愛らしかった。俺が暮らしていた村とは違ってスフィアには容姿の整った子が多いなぁ、と、ふとどうでも良いことを考える。するとその時、部屋の入り口に現れたもう一人の女性を見て戦慄が走った。

 身長は180cmは超えているだろうか。女性の体には不釣り合いなほど膨張した筋肉がシスター服を押し上げている。横幅はおそらく俺の2倍近くあり、分厚すぎる唇がその存在を主張していた。

 どうやらスフィアには可愛い子も多いが、その代わりになかなか凄い人物もいるようだ。


「お、目が覚めたのかい」

 ずしりずしりと部屋の中へ入って来る。そして、少女の方へ向いた。

「だから、言ったろう? 大丈夫だって」

「でも、やっぱり心配じゃないですか。いくらマイアおばさんの言葉でも、自分の目で確かめるまでは不安で仕方がなかったんですもん」

 少女はむくれるようにして返事した。どうやらこの大きな女の人の名前はマイアさんというらしい。

「ミルはいつも心配し過ぎなんだよ。治療の許可自体はとっくの前に与えてるってのに、未熟な私ではどうのこうのって、今日まで患者の前に立ちすらしない」

 マイアさんは少女をミルと呼び、呆れたような顔をする。これ以上は仕方がないというように話を切り上げ、今度は俺の方を向きベッドまで近寄ってきた。

 近くで見ると改めてでかい。


「気分はどうだい?」

「体調は大丈夫です。だけどまだ、元気とは言い難いですね」

「そりゃそうだ。神聖魔法でも体力までは回復させてやれない、それどころか急な再生を促す分、無駄に体を疲れさせちまう。あと2日ぐらいは冒険に出ない方が身のためだね」

「分かりました」

 マイアさんの言葉に少し驚く。魔法に知識の浅い俺は、神聖魔法は疲労も取り除いてくれると思っていたからだ。まさかその逆だったとは。

「それにしても……」

 マイアさんは珍しそうなものを見る目を向けてきた。


「敬語を使う男の冒険者なんて珍しいねぇ。敬語を習うには最低限の教養を身に着けられる環境が必要だが……、どこで習ったんだい? 貴族の出って訳じゃないんだろう?」

「それはその、昔村にいる時にお母さんに教えてもらって」

「ふ~ん、そうなのかい。敬語を使う男って女々しく感じてあたしはあんまり好きじゃないね」

 がーんと衝撃を受ける。確かに丁寧な人よりは、少し野蛮な人の方が男らしいかもしれない。それに少なくとも、目前にいるマイアさんよりも俺は女の子っぽい気がする。いや、マイアさんは女性なんだけど。

「マイアおばさん、そういう他人を傷つけることを直球で言うのは駄目だと思います!」

 ミルさんがマイアさんに注意する。

「あら、ミル。じゃああんたはどうなんだい。こいつのことどう思う?」

「じゃあって私の言ったことと何の関係もないじゃないですかっ。そ、それに……」

 ミルさんは恥ずかしそうに頬を染めて、ちらりと横目で俺を見た。

「私は別に、そういう男の人も、嫌いじゃないですよ」

 ばきゅんとハートが撃ち抜かれる。可愛すぎる。だが、男アド・スミス、こんな簡単に女性に惚れるほどちょろくはない……筈だ。


「まあいい。それよりも久しぶりに起きたんだ。庭でも散歩してきたらどうだい?」

 マイアさんは話題を変え、俺にそう促してくる。一つ、気になる単語があった。

「久しぶり……って、俺ってどのくらい寝てたんですか?」

「あんたがここに運ばれてから今日で3日だね」

「3日!?」

 俺は3日も寝ていたのか。確かにあれだけの傷を負ったのだからおかしくはないかもしれない。ガルが申し訳なさそうに俯き、尻尾をしょんぼりと垂らしていた。別にガルには怒っていないのだけど……。

 というかそれなら、ミルさんが心配していたのも当たり前じゃなかろうか。初めて担当した患者が3日も目を覚まさないとかかなり不安だったと思う。

 過ぎた日数に驚いていても仕方がない。マイアさんの提案に従って、庭に出て外の空気を浴びてくることにした。






 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 外は気持ちが良かった。日差しが全身を暖かく包み込み、そよ風がさらりと頬を撫でていく。すうっと深呼吸をすると、美味しい空気が体内に流れ込んだ。そんな俺の隣ではガルが楽しそうにはしゃいでおり、後方には一緒に庭に出たミルさんが、微笑ましそうに俺らを見つめて立っていた。

「良い天気ですね」

 鈴のような声音が耳に届く。

「そうですね」

 ミルさんの声に答える。何となく、今のこの状況は良い雰囲気だと思う。だが、こういう時に何を話せばいいのか分からないのが俺だ。昔から、図書館に閉じこもって本を読むか剣の訓練をするかしかしていなかった俺には圧倒的にコミュニケーション能力が足りていない。女子と話すときには特にだ。

 頭をフル活用して、何とか話題を発案する。

「そういえばミルさんは、どうしてシスターになったんですか?」

「え?」

 突然の質問に、不思議そうな顔を浮かべるミルさん。こくりと首を傾げた。

「いや、その、シスターになるためには大変な修行が必要じゃないですか。他にも色々探せば仕事はあるのに、どうしてシスターの道を進んだのかなと思って……」

 ちらりと顔色を窺う。気を害していないだろうか。もしも話したくもない事情があったらどうしようと、会話が得意でない俺は悪い方向にばかり考えてしまう。

 しかし俺の心配はどこ吹く風、ミルさんは特に嫌がる様子もなく話し始めてくれた。


「私、幼い頃に両親に捨てられて、孤児院で育てられたんです」


 ――いきなり話が重い。

 これは完全に話題の選択ミスではないだろうか。


「その孤児院は珍しいことにとても施設が整っていたので、勉強も運動も読書もなんでも出来て、両親に捨てられたことも気にならないぐらい幸せに暮らしていました。一緒に生活していた『家族』の存在も大きかったと思います。あ、実際には家族じゃなくてただ孤児院で共に暮らしていただけなのですが、両親のいない私たちにとっては孤児院のメンバーは家族も同然でして」

 懐かしむような表情で空を見上げるミルさん。その様子を見るに、本当に両親に捨てられたことを何とも思っていないようだ。彼女の横顔は幸せそうな色を浮かべている。


「その日はいつものように過ごしていました。昼になって、孤児院の皆で仲良く買い物に出かけて行った時、それは起こったんです。突然でした。後から聞けば無差別殺人だったらしいのですが、とにもかくにもそれに巻き込まれて私の『家族』の一人は致命傷を負いました。急いで治療院に連れて行こうとしたのですが、間に合わず、その子は息を引き取りました」

 彼女は少しだけ寂しそうな表情を見せた。だが、すぐに笑みを浮かべこちらを向いてくる。


「それから数日間、何もできなかった自分に悔しがっていました。私がもしも治癒魔法を使えていたらなとそんなことを考えて。ショックから立ち直った時、私は神聖魔法を使えるようになろうと心に誓いました。これ以上大切な人を死なせたくない、その一心で修行に励んで、今に至ります」

 苦笑するように「つまらない話をすみません」と最後に付け足して謝ってくる。慌てて言葉を返した。

「いや、話を振ったのは俺の方なのでミルさんは全然悪くないですよ!」

 彼女の謝罪を否定する。どう考えても辛い過去を話させた俺の方が悪い。


「アドさんの方はどうして、冒険者になったんですか?」

「俺が冒険者になった理由ですか?」

「はい。冒険者になるだけなら確かにシスターよりも楽ですが、その分危険がつきまといますので、どうしてなのかなと思いまして」

 なんとなく答え辛い。彼女がシスターになったのには深い理由があったが、俺の方はそんなに大した理由はない。しかし恥ずかしがる必要はないはずだ。男なら、ロマンを夢見て当たり前。

 そう自分に言い聞かせ、意を決して口を開く。


「俺が冒険者になったのは英雄に憧れたからです」

 ……やっぱり子供みたいでちょっと恥ずかしい。


 幼稚な理由を聞いて、くすりと笑う彼女の顔は、日の光に当てられ輝いて見えた。

「私はけっこう、そういう男の人、好きですよ」

 前書きでも述べましたが、急いでいたので少しキリの悪い所で終わってしまいました。以後はこういうことのないよう気を付けます。

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