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 くぁ、とあくびが出かけるのをなんとか噛み殺す。

 予想以上に私のステータスが散々だったのを見て、ミルカちゃんは真剣な表情で何か考えている。それを私は眠たいな、と思いながらぼーっと見つめている。私に関することなのは分かっているのだが、どうにも眠くて仕方がないのだ。気を付けていないと、また玉座で寝てしまいそうだ。

 「仕方ないですね」と、ミルカちゃんは呟くと、私の方を向いた。


「魔王さま、続きは寝室で説明します」


 ミルカちゃんの言葉に、私はぽかーんとする。このただでさえ眠い中、寝室なんて行ったら、そのままばたんきゅーである。それに、順序から行ったら、次は迷宮創造についての筈だ。寝室なんかで、出来るのだろうか。


「ついでに、魔王城の構造も説明しますね。まだ、あまり広くないので迷うこともありませんがね」


 そう言うと、ミルカちゃんは背中の蝙蝠羽根をパタパタと羽ばたかせて、部屋を出て行く。わー飛んでる……なんて思う暇もなく、私も慌ててついていく。


 扉を出ると、無機質な廊下があった。私達が出て来た玉座の間の扉を除くと、廊下に面している扉は3つ。真正面に1つ。左奥に1つ。右奥に1つ。


「正面の部屋が魔王さまの寝室です。左奥が復活室、右奥が宝物庫となっています」


「宝物庫といっても、今はすっからかんですけどね」と、ミルカちゃんは苦笑した。

 まだ何もしてないのに、宝物だけある訳がない。それよりも、私は用途がよく分からない復活室の方が気になった。


「復活室?」

「通常、魔物は死んだらそれまでなのですが、迷宮産の魔物は、迷宮内で死んだ場合のみ、復活室で復活することが出来ます。ダンジョンポイントを払えば、ですけどね」


 なるほど、再ポップするんだな。迷宮外で当てはまらない理由は、迷宮の力が外まで届かないといったところか。


「ちなみに、魔王さまと私は迷宮産まれではないので、死んだらおしまいですよ?」


 そううまい話はない、と。


「ところで、ダンジョンポイントって?」

「その辺は後で。ずっと廊下で立ち話もなんですし」

「分かった」


 私は頷くと、ミルカちゃんが扉を開けてくれたので、寝室に入る。

 寝室は、十四畳程で、中心にダブルベットが1つ、壁際に棚が1つ、小さめのテーブルが1つ、椅子が二脚置いてあった。そして、奥の方に異質な気配を漂わせている扉が1つ。

 思ったよりまともな部屋で安心した。玉座の間が、悪趣味な部屋だっただけに、密かに心配していたのだ。何かひとつだけ浮いている扉があるけれど、そこは目を瞑る。


「魔王さまはベッドにどうぞ」


 私がベッドに腰掛けると、ミルカちゃんは迷宮創造について説明を始めた。



 迷宮は、下級、中級、上級、最上級の4段階でランクが付けられており、自然発生型と迷宮創造型の2種類が存在する。

 自然発生型は、迷宮石と呼ばれる魔法石を核として、自然発生的に出来た迷宮。迷宮石を壊す事で消滅する。数が多く、一部の例外を除けば、殆どが下級迷宮である。

 迷宮創造型は、【創造】スキルを持った迷宮主もしくは魔王が作り上げた迷宮。迷宮主もしくは魔王を殺す事によって、迷宮石が壊れ、消滅する。難易度が高い迷宮が多いが、その分ドロップ品も良い物が多いため、日々死に急ぎ野郎が後を絶えない。


 【創造】スキル。このスキルを使って、私は迷宮石に干渉し、自由に迷宮を作ることが出来る。このスキルを使うには、私自身のMP、もしくは迷宮石に溜め込まれるDP(ダンジョンポイント)が必要だ。DPは、MPによって行われた迷宮拡張や魔物創造、侵入者撃退、退治、生け捕り、迷宮レベルアップ時に増える。DPは【創造】スキルに使用する以外には、復活室で魔物を復活させる時に使用する。【創造】スキルは迷宮レベルが上がるごとに、出来る事が増える。


 少々、長かったので、途中意識が飛んだが、大体こんな感じだ。


「魔王さま。【創造】スキルを使ってみてください。くれぐれも無理はされないように」


 私は、“ステータス”を出した時のように【創造】と念じてみる。すると、空中に画面が出て来た。迷宮の地図らしきものと、迷宮レベル、“迷宮拡張”“魔物創造”の文字がある。

 想像していたものと違う展開に、私は戸惑う。


「ねえ、これどうすればいいの?」

「私には見えないので、先に可視化をお願いします」

「あ、これも私にしか見えてないんだ……。ちょっと、待ってね」


 “ステータス”の時と同じように、ミルカちゃんにも見せるぞ、と意識する。


「ありがとうございます。“魔物創造”から、やってみましょうか。魔王さま、“魔物創造”をタッチしてみてください」


 指示通り、“魔物創造”を指で触れてみる。すると、画面が切り替わり、新しく“魔獣系”の文字が出た。


「現在、迷宮レベルは1です。レベル1で創造出来る魔物は一種類だけです。“魔獣系”をタッチ後、切り替わった画面に出た魔物を創造してみてください」


 “魔獣系”をタッチして切り替わった画面に表示された“魔羊”という文字をタッチする。羊? と思いながらも、その後に表示された“創造”の文字をタッチ。すぅーと何かが身体を抜ける感覚がし、少し目眩がした。これが、MPを使用する感覚なのだろう。中々、これはきつい。寝室に移動した理由が分かった。ミルカちゃんの配慮に感謝である。

 目の前に、黒い霧が集まり、魔物を形作っていく。そして、霧が完全になくなった時、そこにいたのは――


「羊だ」

「羊ですね」

「メェ~」


 ――一匹の羊だった。


 どこから、どう見ても羊である。時折、「メェ~」と気が抜けた鳴き声をあげるソレは、とてもではないが魔物に見えなかった。


「これ、魔物なの?」

「いえ、通常の羊よりに魔力が少し高いだけの羊です。羊毛を刈れば良い値段で商人に売れますよ?」

「“魔物創造”だよね?」

「そうですね」

「これ、ただの羊なんだよね?」

「そうですね」

「魔物以外生み出してどうすんの?」

「……羊毛売ります?」

「…………」

「メェ~」


 何も分かってなさげな魔羊と苦笑気味のミルカちゃんを、半眼で見る。

 はぁ、と溜め息を吐いて、私はベッドに倒れこんだ。MPを使ったせいか、だるい頭で考える。初期モンスターの定番といえば、スライムやらゴブリンだが、そういったものではなく魔羊だったのも、私の種族の眠り羊に関係があるのだろう。おそらく、魔羊は眠り羊の下位種だかの位置付けなのであろう。まあ、これは迷宮レベルさえ上げれば、解決する問題だろうと、頭の隅に追いやる。


 それよりもこのだるさだ。ステータスを見た時から分かっていたことだが、私のMPは10とかなり少ない。魔羊一匹に消費したMPが5。もう一匹創造しただけで、ぶっ倒れてしまう。これは死活問題だ。早急に私のレベルを上げなくてはならない。しかしレベルを上げるにも、外の魔物や人を殺すにはステータスが低すぎる。自分で創造した魔物を殺しても経験値は入らない。つまり、レベルを上げるには、ぶっ倒れながらも創造しまくるしかないということだ。


 気が付いたときには、魔羊の鳴き声も聞こえなくなっており、私は眠りにおちていた。

DP獲得法に生け捕りを追加。

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