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「お目覚めになられたのですね」


 扉を開けて、入ってきたのは、なんだか見覚えのある小悪魔っぽい幼女。

 どこかで会った事がある気はするのだが、それがどこだったのか、なかなか思い出せない。


「本当はお部屋までお運びすることが出来れば良かったのですが……」


 小悪魔っぽい幼女――以下小悪魔ちゃんと呼ぶ――は、申し訳なさげにそう言った。

 確かに、小悪魔ちゃんの身体で身長160cmある女子高生を運ぶのは難しいだろう。


「もしかして、昨夜の事を覚えていらっしゃらないのですか?」


 ジィーっと、私が見ていたことに気付いた小悪魔ちゃんが、不安げにこちらを見る。


 昨夜というと、記憶が曖昧で思い出せないところだ。

 だが、おそらくこの小悪魔ちゃんとは昨夜会ったのだろう。

 それを踏まえて、もう一度、記憶を探る。


 起きたらこの部屋にいて、目の前には小悪魔ちゃんがいて……、あ、そうそう名前はミルカディア? ミルクディア? なんか、そんな名前だった気がする。で、私が魔王さま……って、魔王!?

 思い出した……。私、魔王に転生したんだ……。


「その様子なら、思い出していただけたようですね。ですが、改めて、私はサポート悪魔のミルカディア・クイックシュタインです。お気軽にミルカちゃんとお呼びください」


 小悪魔ちゃんは、そう言うとニコっと微笑んだ。

 何この子、凄く可愛い! 自分でミルカちゃんとか言ってるけど、見た目幼女だし、普通に可愛いらしいようにしか聞こえない!

 

 若干、暴走気味の思考を一旦中断して、私も名乗る。響きは普通なのに、漢字にすると途端にキラキラネームになるこの名前が私はあまり好きじゃない。それでも、名乗らないわけにはいかないので、渋々言う。まあ、響きは普通だし。響きは。


「えっと、私、闇堂(あんどう)魔夜(まや)。よろしくね、ミルカちゃん」

「はい! 何でもお申し付けください、魔王さま」


 魔王さま、か。なんだかむず痒い響きだ。だからと言って、名前で呼ばれるのも好きではないから、そのうち慣れるだろうと、思うことにする。


「早速ですが、この世界について及び、魔王さまにやって頂きたいことを説明させて頂きますが、よろしいですか?」


 私が頷いて話を促すと、ミルカちゃんは「魔王さまの前世がどのような世界なのか、存じ上げませんが」と前置きして。


「まず初めに、この世界は“剣と魔法の世界”です。世界には“迷宮”が溢れています。そして、魔王さまにも迷宮を創って頂き、目指せ世界征服!」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」


 やけに最後の不穏な言葉だけテンション高めに言ったミルカちゃんに、私は慌てる。


「なんですかー?」


 特におかしなところなど何もないと言いたげなミルカちゃんに、早速先行き不安に思いながらたずねる。


「世界征服って……?」

「ただの目標ですよ。嫌なら、人類滅亡でも」

「それ、もっと酷くなってるだけど!」

「目標は大きく、ですよ。魔王さま」


 右手の人差し指を立てて、そう言ったミルカちゃんに、そんな物だろうかと考える。「世界の半分をくれてやる!」と言って、勇者に斬り殺される自分の姿が思い浮かんだが、すぐに思考の端に追いやる。そんなテンプレなことは流石にやらない。……やらないはずである。


「とにかく、魔王さまには迷宮を創っていただきます! 全世界の人々が震え上がるとびっきりのを!」

「わ、分かった」


 ミルカちゃんの気迫に押されて、私は了承してしまった。

 でも、密かにワクワクしている。ダンジョン経営モノ、そう言ったジャンルの小説を読んで、少し憧れていたんだ。

 そして、これは言い訳かもしれないけど、今の私は魔王。必然的にやるしかないのだ。例え、人類と敵対しても。人を殺すことになっても……訂正、それはまだ怖いや。

 とりあえず、せっかく転生したんだから、魔王ライフ楽しまないとね。



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