表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/144

1-5

慎一は思わず咲をかばうような体勢をとり、咲もその後ろに隠れた。


男はそれを見て一瞬眉を動かし、慎一に向かって言った。


?「……君は?」


慎「お…俺は、南さんのクラスメイトだ。」


?「なら、早くその女から離れた方がいい。そいつは危ない。」



拳銃を向けている割には親切な口調に不自然さを感じたが、ともかく咲の敵なら気は許せない。


慎「断る…!」


男は怪訝そうな顔になった。


?「おいおい、そいつはホントに……」


慎「話は全部聞いた! 実際、俺は1回咬まれた! その上での答えだ!!」


慎一の膝の震えが止まらない。



男はますます意味が分からないといった顔をした。


?「それで尚、そいつの味方をするのか?」


慎「逆に聞いてやる。お前は南さんに何の用だ!?」


男はいきなり噴き出した。


?「何の用って…、全部聞いたんなら分かるだろ? そいつら鬼灯族は人類の敵だ。人間を喰う上に、知的生命体だぞ。力が弱ってる今はいいが、いずれ必ず人間にとって大きな脅威になる。」


途中から徐々に表情が険しくなっていく。



怒った大人の男の迫力は凄まじいが、だからといって咲の身柄を引き渡すほど、慎一も良い子じゃない。


慎「…だから、殺すのか?」


?「そうだ。」


男の返答に間髪はなかった。


慎一はとにかく負けちゃダメだと自分を奮い立たせ、虚勢を維持した。


時間を稼いで誰か他の人に見つけてもらえば、銃を持っているこいつは確実に不利になる。


分の悪い賭けだった。


慎「でも、ホントにそんな風になるかは分からな…」


?「分かるさ! 現にこれまで、世界中至るところでこいつらは暴走し、かなり大きな被害を出してるんだ! 部族丸ごと喰い尽くされた例もある!」


慎「なッ…!!??」


いきなり慎一にぶつけられた怒号は、あまりに衝撃的な事実だった。


咲「そんな…そんなのウソです! 私たちはいつも人間と共存したくて、バレないようにしてきたんです!」


?「でも何処でもバレてきたのは、誰かが人を襲ったからだろ? お前みたいに。」


咲「っ……。」


咲の必死の応戦も、むなしく受け流されてしまった。





2つの立場の間に立たされた慎一は、だんだん訳が分からなくなってきた。


自分たちは人間と仲良くしていきたいと思っていると主張する咲。


その意思に気を許せば、将来必ず人間に害を成すから、今滅ぼす必要があると主張する男。



確かに、自分は1回咬まれた。


そんな風に暴走する危険があるなら、やはり咲は人間にとっては敵になるんじゃないか?


いくら共存したいと悲願されても、じゃあその共存の完了は何を意味する?





誰が人間で、誰が人喰いか分からない社会の完成―――






男と咲の主張の応酬はまだ続いていた。


?「お前たちも過去に人間の部族を滅ぼしてるんだよ! これはその代償だ!! 今回だって、どうせ家畜用の人間を調達するために街に降りてきたんだろ?」


咲「人間を家畜になんかしてません! 最初は素性を隠して、徐々に人間社会になじんでいく計画の第一歩なんです!」


?「見ろ、それがお前たちの恐ろしさだ。頭を使って、上手い具合に人間社会を侵略しようとしてやがる。」


咲「し、侵略なんて……そんなんじゃないって言ってるじゃないですか!!!」



慎一の肩を掴む咲の手に力が入った。


「どうだか」と余裕の表情が絶えない男とは対照的に、咲は慎一の背後で鼻をすすって泣いている。



男は余裕を表情に湛えたまま、慎一に言った。


?「…さて、時間が経ちすぎたな。早く仕事終わらせてえんだ。そこをどいてくれ。」


慎「どかねえよ。」


?「…あ?」


慎一は、咲をかばう姿勢を立て直した。



?「話聞いてなかったのか? そいつらは…」


慎「南さんはお前が言うような奴じゃない。俺は信じる。」


咲「あ…東さん……。」



咲の嗚咽が響く中、男がとびきり不機嫌な顔をした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ