1-4-2
2人の姿はもう見えなくなっていたが、その先はほとんど一本道なので構わず走った。
エナメルがバッタバッタと跳ねて走るのを邪魔する。
投げ捨てたい気分になったが、弁当が入っているので我慢した。
しばらく走ると、路地に入った。
建物と建物の隙間で細かい道がいくつか形成されているため、どこに咲がいて、どこにあの男がいるのか、皆目見当がつかない。
慎「くそ…、南さんは何処に?」
と、いきなり後ろから口を手で塞がれ、路地へ引っ張り込まれた。
慎「~~~~~~~!!!」
咲「シッ! 静かに、東さん。」
慎「!?」
ヒソヒソと耳元で囁いたのは咲だった。
慎一が抵抗するのをやめると、咲も手を放した。
咲「東さん、どうしてここに? 早く帰ってください!」
慎「さっきの男は何だよ? 南さんのこと追いかけてたみたいだけど。」
咲「あ…東さんには関係ないです。」
慎「関係ないワケあるか! 危険にさらされてる女の子1人残して帰れねぇよ!」
咲は口ごもった。
慎一の正義感は、強いのだ。
慎「それに、昨日のことも聞きたい。」
咲はそれで観念したように大きく息を吐いた。
咲「…分かりました。ただ、ここじゃアイツに見つかります。もっと奥に行きましょう。」
咲に促され、慎一は路地の奥へと入っていった。