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夕食の時間になって、全員がカブトムシの間に集まった。
勇「何でここ虫の名前なんだろな? 普通竹とかだろ?」
木「隣はクワガタムシの間で、その向こうはカナブンの間って書いてあったわ。」
勇「げぇ…、食欲失せるわ…。」
慎一の右隣に座った2人の会話をよそに、慎一は左に座るはずの咲を探してキョロキョロとしていた。
慎「何処行ったんだ、咲のヤツ?」
木「トイレじゃないの?」
慎「…かな?」
と、入口のところに咲が入ってくるのが見えた。
頭に包帯をしている。
慎一は驚きながら、咲を呼び寄せるために手を振った。
咲がそれに気付いてやってくる。
慎「どうしたの、その包帯?」
咲「あんまり頭が痛むんで保健の先生に診てもらったら、打撲の痕があるとかで、包帯巻いてもらってました。」
勇「打撲!? え、慎一、バスで何したの?」
慎「俺じゃねぇよ! 咲がバスで寝てるとき、揺れるたびに窓に頭ぶつけまくってたんだよ。」
咲「あ、そうだったんですか。道理で…。」
そこで先生が静かにしろと告げたので、咲は慌てて座った。
先生の話の最中、ふと咲が慎一に小さな声で話しかけた。
咲「…あの。」
慎「ん?」
咲「実はここに来る前にトイレ寄ったんですけど、トイレ出てすぐ、また背後にすごい殺気を感じまして…。」
咲は真剣な面持ちでゆっくりと伝える。
慎「また? またってどういうことだ?」
咲「無珠山でもあったんです。」
慎「…あ、だからあの時いきなり振り返ったのか。」
咲「変だと思いませんか? 殺気もそうですけど、その直前には歩いてる最中に後ろから足に小石投げつけられてるような感じがしたし…。」
慎「…え、まさか?」
咲は小さく頷いて言った。
咲「クラスの中……少なくともこの学年に、会員がいるのかもしれません。」
慎一は息を呑んだ。
まさか会員の魔の手が修学旅行にまでついてきているとは夢にも思わなかったのだ。
いただきますの号令がかかり、食事が始まったが、咲と慎一は箸を手に取りすらしない。
慎「……でも、もしそうなら、今までのよりもずっと厄介だな。」
咲「え?」
慎「そいつはかなり慎重に行動してる。現に、俺は言われるまで知らなかった。今までのヤツらはどっちかというと猪突猛進型ですぐ気付けたが、今度のは暗殺が得意なタイプなのかもしれない。」
慎一は自分で話していて鳥肌が立った。
もしこれまでの段階で咲が察知していなかったら、既に殺されていたのかもしれないのである。
咲も事態の重大さを改めて実感し、表情を強ばらせた。
咲「暗殺………え、じゃあちょっと待って…、まさかこの食事にも毒が盛られてたりとか…?」
慎「!?」
勇「どうしたんだよ、食わねぇの?」
2人がいつまでたっても手をつけないので、勇気がしびれを切らして口を出した。
すぐに慎一は勇気にその旨を伝え、勇気はすぐに木葉にその旨を伝えた。
勇気も木葉も手が止まる。
木「…私たちは何ともないわ。」
慎「咲や、下手したら俺のもだが、狙って盛った可能性は無くはない。」
咲「………。」
4人はその後、一口も食べずに周囲を観察し続けた。
不審な動きをしているヤツがいないかを見張り続けている自分たちが一番挙動不審になっていた。




