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4-3

その後、勇気の大活躍、慎一の好プレイ、木葉の堅実な投球の中、ひたすらガターにならないよう真っ直ぐに投げるという咲の試みはことごとく失敗した。


よくて端っこのピンが1、2本倒れる程度で、途中ヤケになってボールを上投げしそうになったのを慎一が頑張って止めた。




カラオケに向かう咲の足取りはもちろん重かった。


咲「うぅ…、にんげ……都会の娯楽って難しすぎる…。」


木「大丈夫よ! 私だって他のスポーツはダメダメなんだもん!」


勇「そうそう。キャッチボールすら危なくてできやしないんだから。」


慎『マジで?』


木「そうよ!」


慎『そうなんだ!』


木「私ができるんだから、咲ちゃんも頑張れば絶対できるよ!」



励まされまくっても情けなくなるだけだった。


そしてボウリングで見た悪夢が、未だ謎を秘めたカラオケでも続くのかと思うと、どうしても真っ直ぐ前を向いて歩けなかった。







――――――――――――







そんなこんなで、同じ建物別フロアのカラオケに着いた。


咲はまず、ドリンクバーに人知れず度肝を抜かれていた。


咲『何この夢の箱…!? 飲み物が際限なく出てくるの!!?』


その驚きは何となく他の3人に知られたくなくて、多少の勘違いと共に心の中にしまい、とりあえずお茶をついだ。




部屋では、大音量の伴奏に合わせて、声を大きくする謎の棒(microphone)を使用して堂々と歌う勇気にまた度肝を抜かれた。


咲『画面に歌詞まで表示してくれる心配り…。はぁ~、人間社会って色々スゴいなぁ…。』



しかし困ったことに、咲は人間の歌を1曲も知らない。


テレビを観ていて流れてくる曲なら分かるが、しかしいずれもフルコーラスを聴いたことがない。



勇気の熱唱後、慎一も負けじと歌い出した。




ボウリングと同じ順番で咲の番が迫ってくる。



木「咲ちゃん、曲の入れ方教えてあげるね。まずこれで…」


咲「あ、すいません、私歌える曲なんて無くて…。」


木「え? あ、村にいた時はこっちの音楽なんか聴かなかったんだ。」


咲「はい、すいません。」


勇「じゃあ童謡とかどう? 「かえるのうた」とか。」


咲「かえるの…??」


勇「あぁ、知んないかぁ。」


咲「すいません、知ってるのは村の民謡くらいで…。」



咲は、別に歌えなくてもカラオケは楽しめる気がしていた。


誰しも普段と歌っている時とでは全然様子が違う。


それに、人間社会の歌というのは新鮮で、いちいち刺激になる。




それでよかったのに。




木「一応探してみるよ。何て曲?」


咲「えと、「八つ裂き節」です。」


勇・木「八つ…………!?」


横での会話が耳に入って来て、慎一は歌いながら冷汗が噴き出てくるのを感じた。


木「八つ…裂き………あ、あった。」


慎・勇「マジで!!!???」


慎一は思わずマイクを通してビックリしたので、一瞬スピーカーが激しくハウり、その現象がまたも咲を驚かせた。



咲「…えと、え? ホントにあったんですか?」


木「これ?」


咲「………あ、これですね。歌い出し知ってるし。」


勇「……これ民謡??」


咲「はい、いちお……」


慎「何でやねん!!!」



慎一がロックボーカルのシャウトのように反り返りながら、マイクに渾身のツッコみを叩き込んだ。



慎「子どもから大人まで親しみやすいのが民謡なんだよ! 何だよ「八つ裂き節」って! エグいエグい! 曲名エグすぎ!!!」


咲は最初怒られているのかと思ったが、勉強会でのことを思い出し、必死で対応した。



咲「あば…ば…ば…バレたか!」


勇・木「何が!?」


咲「あや…実は…ボケのつもりで、…そう、あらかじめ調べておいた明らかに違うだろって曲を、民謡ですよ~っていう……。」



そこでようやくドン引きかけていた勇気と木葉の表情が柔らかくなった。


勇「な、何だ~、ボケだったのかぁ。」


木「いきなりナチュラルに入ってくるモンだから、てっきりガチなんかと思っちゃった。」


咲「ままままままままままままままままっさか~~~!」


咲はキョドリながら必死でその場を取り繕ったが、反面自分が人間でないとバレないために、故郷の民謡すら否定しなければならないのがつらかった。




咲『私は小さい頃から親しんでたんだけどな…。』「……ちょっとトイレ行ってきます。」



咲は暗くなった表情がバレないうちに避難しようと、部屋を出た。



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