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1-2

衝撃の自己紹介から、咲は次々に伝説を創り出していった。



1時間目、現代文。


授業初めの漢字の書き取り小テストでのこと。


慎『今日は簡単だったな、勉強してこなくてよかった。』


答え合わせは隣の人と用紙を交換し、採点し合うという方式のため、慎一と咲は用紙を交換した。


範囲になっている漢字問題集を出し、早速採点を始める。


慎「……え?」


うっかり口をついて出た「え?」にさえ、慎一は気づいていなかった。



咲の解答は、1問も合っていなかった。


慎『"時間を……津癒す"……何この誤変換みたいな間違い。それに、"泡立てて事を進めても良い結果は得られない"って、"あわてて"を読み間違えたにしても気付くだろうに…。』


ピッピッと全てに赤ペケをつけ、咲と再び用紙を交換した。


受け取るなり、咲は驚いたように落胆していた。


慎『自信あったのか!?』




その時間は慎一が呆れるだけで終わったが、2時間目の数学で、不運にも咲は当てられてしまった。


先「南、この恒等式を解くために、まずすることは何だ?」


慎一が恐る恐る咲の様子を見ると、咲の顔には「えらいこっちゃ」と書かれていた。


慎『冷や汗って目に見えるんだな……。』


結局咲は何も答えず、先生に「これぐらい分かれよ」と怒られ、謝りながら座った。


慎一の中で、咲に対する疑心がますます膨れ上がっていく。



3時間目の英語で、ようやくクラス一同が「こいつおかしい」と思い始めた。


咲はアルファベットを知らなかったのだ。


1人1文ずつ読むとき、咲の番になって咲が読めなかったのは会話文中の応答文句、「Sure.」であった。


そこで先生が冗談交じりに、黒板にA、B、Cの3文字を書いて読めと言い、咲が無言で泣きそうになったことで、咲の無知が露呈した。


全員が心の声で「嘘だろ……。」をハモった。



4時間目の現代社会でも、咲は次々に自らの常識知らずを見せつけていった。


GNPやGDPが何を表すかを知らず、金融という言葉を知らず、銀行の存在を知らなかった。


教室中に嫌な空気が漂う。


慎一はもう疑心も忘れ、ひたすらいたたまれなくなっていた。


4時間目終了のチャイムと同時に、咲だけでなく、クラス中―――先生までも―――安堵の表情を浮かべた。


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